9月27日、「ガザに向かう千隻のマドリーン号(TMTG)」船団はイタリアの小さな港を出港し、パレスチナのガザ地区の封鎖の解体を目指す人道支援の航海を開始した。20あまりの国からやって来た70人の市民は、9隻の船に乗り込んだ。私は船員として参加した。毎晩、東の空に浮かぶ最も光り輝く星に向かって航海し、私たちは光に向かっていると感じた。
航海開始から12日目の10月8日午前2時ごろ、ガザ地区から約120海里の公海上で、イスラエル軍によって船と航海者たちは違法にだ捕された。国連海洋法会議によると、公海とは領有権や排他権が特定の国に属さない海のことだ。一国の主権が及ぶ海である領海は、陸から12海里までだ。イスラエルはその10倍もの距離のある海で、国際支援団体の船をだ捕して船と物品を奪い、航海に参加した世界の市民、政治家、医療陣、記者をテロリストであるとしてイスラエルの監獄に収監した。私もまた、飲み水さえない汚い監獄に収監され、手首が縛られて目隠しをされたまま、ひどい寒さに震えなければならなかった。彼らは私たちを銃とガス銃で脅しながら嘲笑し、弁護士にも会わせなかった。これは明白な違法行為だ。
イスラエルはパレスチナの土地を占領しているだけでなく、パレスチナの海も占領している。パレスチナだけでなくシリア、レバノンなどを含む地中海東岸のレバント一帯の領有権を主張している。戦争と虐殺は、単に嫌い合っているという単純な理由で起きるわけではない。虐殺と侵略は巨大な利益を稼ぐ「資本」とつながっており、21世紀の戦争と虐殺のほとんどは「エネルギー」を侵奪するためのものだ。イスラエル、そしてイスラエルに同調する米国と欧州の国々は、今回の戦争でどのような野心を持っているのだろうか。
第一に、パレスチナ沖は莫大な経済的利益をもたらす。1998年、ガザ地区沿岸でガザマリンガス田が発見された。最近も、ガザ全域、レバノン、シリア沖にガス田が存在することが確認されている。2019年の国連貿易開発会議(UNCTAD)の報告書によると、「純価値4530億ドルにのぼる天然ガスと純価値約710億ドルにのぼる17億バレルの石油」がレバント沖に埋蔵されている。イスラエルはすでにリバイアサンガス田で62万立方キロ、タマルガス田で31万立方キロのガスを生産し、エジプト、ヨルダン、欧州にまで輸出している。
第二に、ロシアを通らないガスパイプラインを探していた欧州諸国にとって、パレスチナ沖からつながる新たなエネルギー供給路は巨大なチャンスだ。2022年2月にロシアがウクライナに侵攻した時、ロシアからエネルギーの供給を受けていた欧州は、エネルギー供給路を失った。欧州はロシアの機嫌をうかがう必要のないエネルギー供給路を作るため、パレスチナのガザ地区の海岸付近で天然ガスを採掘するイスラエルと契約した。2023年10月にパレスチナ近隣の海域のガス田探査ライセンスを発行したイスラエルは、ガザ沖で発見された石油とガス資源を独占的に探査しており、パレスチナは何ら分け前を得ていない。すべての利益はガス田探査を主導するイスラエルと、それにかかわる米国企業「ノーブル・エナジー」、英国最大の石油企業「ブリティッシュ・ペトロリアム(BP)」、イタリアのENI、韓国石油公社などが分け合っている。ガス探査権の発行で、イスラエル政府は1500万ドルの利益を得た。
そんな遠い国の話を韓国でなぜするのかと人々は言う。ところが、その遠い国の虐殺と侵奪に韓国が関与しているのだ。パレスチナの海の略奪には韓国石油公社もかかわっている。韓国石油公社は以前から「シロナガスクジラ・プロジェクト」の探査などで数十兆ウォンの経済的損失を出すとともに、原油流出事故などの様々な環境問題を招いてきた。韓国石油公社の100%子会社「ダナ・ペトロリアム」は英国とイスラエルのエネルギー大企業と緊密に協力し、ガス田収奪に関与している。
イスラエルはパレスチナの地からすべてのパレスチナ人を追放、または殺害するまで止まらないだろう。私たちはかの地で韓国が加担している虐殺への共謀を断ち切ろう。今月26日、蔚山(ウルサン)の韓国石油公社本社前で糾弾集会が開催される。共に連帯の声をあげよう。
キム・アヒョン(ヘチョ)|自由船団連合(FFC)支援船団乗船者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )