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「韓米同盟の現代化」…ワシントンの戦略を読み解く必要がある【寄稿】

登録:2025-10-01 08:22 修正:2025-10-01 09:13
李在明大統領が8月25日(現地時間)、米国ワシントンのホワイトハウスで芳名録に記帳している=大統領室提供//ハンギョレ新聞社

 関税交渉とともに「韓米同盟の現代化」は、李在明(イ・ジェミョン)政権の対米関係における最大の挑戦課題のひとつだ。最近の韓米首脳会談以降、関税と対米投資方式をめぐるその後の交渉が激しく続く一方で、同盟の現代化の問題は比較的静かな状況にある。しかし、韓国の安全保障に重大な影響を及ぼす同盟の変化を看過することはできない。これまで、同盟の変化の様相と幅をめぐり、さまざまな展望とシナリオが提示されてきた。在韓米軍の縮小だけでも、数千人から多い場合は撤収に準ずる数万人まで、多種多様な規模のシナリオが論じられている。ただし残念な点は、このような仮想シナリオが単に列挙されるだけにとどまり、肝心のワシントンが韓米同盟をどのような戦略的見解でみているのかについては、十分に照明が当てられていないことだ。米国は中国けん制を政策目標にしているが、その具体的な方法としては、大きく3つの戦略的観点が競合していることを理解する必要がある。

 一つ目は「中国けん制最優先陣営」の同盟調整論だ。エルブリッジ・コルビー国防次官補を中心とする人たちは、同盟国の責任分担と費用転嫁を強調し、米国の資源と軍事態勢は中国けん制に集中すべきだと考える。この立場の人たちは、特に台湾海峡を東アジアと西太平洋における米中の地域ヘゲモニーの勢力図を決定づける戦略的な要衝として位置づけ、域内の同盟ネットワークを徹底的にこの米国のインド太平洋戦略の枠組みのなかで扱おうとする。このような文脈から、在韓米軍の一部縮小、朝鮮半島外での作戦を想定した兵力構成の変更、戦略的柔軟性の確保などが強調される。

 二つ目は「孤立的現実主義陣営」の同盟縮小論だ。最近、ワシントンのあるシンクタンクが、在韓米軍を事実上の軍の撤収に近い水準にまで縮小すべきだと提案したのが代表的なものだ。これを主張する人たちは、在韓米軍だけでなく、インド太平洋地域全体の米軍をグアムやサイパンなどの第2列島線付近まで後退させるべきだとする全面的再調整を主張する。現在のような前方配備では米軍の生存性が確保されないという理由によるものだ。何より、これらの人たちは、台湾を米国の死活的利益とはみなさず、インド太平洋地域において米国は、ヘゲモニーの維持ではなく、中国との一定の勢力バランスを追求すべきだと助言する。

 三つ目は「朝鮮半島の戦略的価値論」に基づく同盟拡大論だ。これを主張する人たちは、台湾海峡で紛争が発生した場合、朝鮮半島は米軍の作戦上・兵站支援のハブの役割を担うことができ、したがって、在韓米軍は縮小ではなく、むしろ規模と能力を強化するべきだと考える。北朝鮮の脅威と台湾海峡での紛争の関連性を強調する同盟拡大論は、在韓米軍の戦略的柔軟性を超え、韓米同盟の名実をともなう地域同盟化のビジョンを追求する。

 問題は、同盟の現代化が実際に朝鮮半島でどのようにして具体化するのか予測が難しい点にある。当初は米国防総省の中国けん制論が主流のようにみえたが、最近は別の流れもうかがえる。近く発表される国家防衛戦略(NDS)は、中国けん制よりも、米国本土と西半球の防衛により重点を置いているという観測が代表的だ。さらに、トランプ政権の対中国戦略は、貿易を重視するトランプ大統領の志向と、抑止を重視する国防総省の基本方針の間で不協和音が存在する。

 このような不確実性のもとでも、現時点では、同盟調整論を基準に韓国の対応を整えることが適切だと思われる。すなわち、朝鮮半島防衛の韓国化が今後も続く流れだと考え、韓国軍の自強努力を強化し、中国けん制のための同盟の役割変化には慎重に均衡点を見いださなければならない。同盟拡大論は、同盟の結束の面では肯定的だが、米中紛争に巻き込まれる「関与の危険」を警戒すべき主張だ。台湾有事の際に韓国の安全保障を危険にさらす可能性はもちろん、平時から韓中関係に緊張と対立を招く負担として作用する可能性が高い。同盟縮小論は、短期間に現実化することは難しいとみられる。インド太平洋地域における米軍の態勢の全般的な再調整に込められた軍事的合理性とは別に、中国の勢力圏拡大を認め、米国が後退するという政治的意味合いを内包しているためだ。

 結局のところ、韓米同盟の現代化は、米国の対中国戦略の観点で提起された問題だ。トランプ政権の予測不可能性にもかかわらず、変化する国際秩序のもとでは、韓米同盟は進化せざるを得ない。したがって、韓国は同盟の変化を受動的に受け入れるのにとどまらず、その背後にあるワシントンの戦略的思考を理解し、能動的に対応する戦略を準備しなければならない。

//ハンギョレ新聞社

キム・ジョンソプ|世宗研究所首席研究委員 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )

https://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/1221447.html韓国語原文入力:2025-09-30 18:48
訳M.S

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