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【韓国豪雨】「家の前で山が崩れ、妻の手を取って逃げた」

登録:2025-07-21 02:29 修正:2025-07-22 09:05
3人の住民が死亡し、1人が負傷した慶尚南道山清郡山清邑釜里内釜村の土石流の現場。家屋など3棟が土砂に流され、跡形もない=チェ・サンウォン記者//ハンギョレ新聞社

 「昨日の午前9時半ごろだったと思います。外で雷のようなごう音がしたかと思ったら、電気がパッと消えてしまったんですよ。驚いて外を見ると、家の前の山がずるずると崩れてきてる。驚いて妻の手を取って逃げた。夢中だったので、どうぬけ出してきたのか覚えていません」

 ノ・ミョンスさん(70)は20日午前、家の前の土石流の現場を見つめながら、「今生きているだけでもとても幸せだと思う」と語った。

 ノさんが指差す方を見ると、上の方の土を深く掘り返して下に持ってきたかのように、山からノさんの家の前の道路までの100メートルあまりの下り坂が深くえぐられて流されきていた。直径1メートルを超える数十個の岩も流されてきて、道路に転がっていた。道路の両側に並ぶ電柱も折れて倒れていた。

慶尚南道山清郡の土砂崩れの主な被害地域//ハンギョレ新聞社

 16日からの4日間で降水量が793ミリに達した慶尚南道山清郡(サンチョングン)では19日、各地で土砂崩れや洪水が発生した。山清郡は19日、全郡民に非常避難令を下して災害に備えたが、20日午後3時現在で死者10人、重傷2人、行方不明4人という大規模な人命被害は防げなかった。

 ノ・ミョンスさん夫妻の住む山清郡山清邑釜里(サンチョンウプ・プリ)の内釜村(ネブマウル)でも、19日午前9時30分ごろに土石流が発生。土石流が起きた山の麓には家屋3軒、食堂、畜舎の5棟の建物があったが、家屋1軒、食堂、畜舎の3棟が土石流に流され跡形もなく消えた。この現場だけで70代の夫婦と20代の女性の3人が死亡し、1人が大けがをした。

 内釜村のキム・グァンマン里長(61)は「19日朝8時ごろから村のお年寄りを背負ったり抱きかかえたりして高台にある家に移した。無我夢中で1時間ほどそうしていたら、突然村の山のあちこちがほとんど同時に崩れはじめた。同時に電気、通信、水道がすべて断たれた」として、「うちの村は非常に多くの人が被害にあった。どうすればよいか分からない」と述べた。村に住むキム・ソンムンさん(73)は「1981年に村で土砂崩れが発生し、私の従兄が亡くなった。村全体の地盤が弱いので常に不安だったが、44年ぶりにまた土砂崩れが起きた」と言って嘆いた。

内釜村のキム・グァンマン里長が、道端に垂れ下がった電線を避けながら村を見回っている=チェ・サンウォン記者//ハンギョレ新聞社

 山清郡は今年春、山火事で大きな被害を受け、復興の途上で今度は洪水の被害を受けた。

 3月21日から30日にかけて10日間続いた山清の山火事は、智異山(チリサン)国立公園の132ヘクタールの区域を含む1858ヘクタールの森を灰にした。この山火事で公務員1人と鎮火隊員3人の4人が命を落とし、5人が負傷した。また被災者は2158人にのぼり、住宅28棟を含む84棟の建物が被害を受けた。1986年の山林庁による統計開始以降で、2022年3月に発生した慶尚北道蔚珍(ウルチン)の山火事に続き、2番目の「長期にわたる山火事」となった。被災者の一部は今も帰宅できていない。山火事と洪水はいずれも山清郡で発生したが、3月の山火事の被害地域と今回の洪水被害地域は重なっていない。

 山清郡災害現場統合支援本部長を務める山清郡のチョン・ヨンチョル副郡守は、「山火事被害の復旧に集中していた中で、洪水の被害にまであってとても残念。2つの災害の復旧に最善を尽くす」として、「特別災害地域宣言、災害特別交付税による支援など、政府レベルの格別な支援を切に求める」と語った。

チェ・サンウォン記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/area/yeongnam/1208938.html韓国語原文入力:2025-07-20 16:36
訳D.K

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