尹錫悦(ユン・ソクヨル)前大統領は16日、内乱特別検察官(特検)チームの3度目の強制拘引にもかかわらず頑として出頭を拒む一方、裁判所に拘束適否審を請求した。そして、拘置所で不正選挙陰謀論者に接見しようとした。国民を愚弄し、法を愚弄する行為が度を越している。
尹前大統領弁護団はこの日、ソウル中央地裁に拘束適否審査請求書を提出したとし、「拘束が実体的、手続き的に違法・不当だという点を争う予定」だと述べた。10日に再拘束された尹前大統領がこの一週間におこなったことといえば、特検チームの取り調べに応じず、裁判所の裁判にも出席しなかったことだけだ。自分に不利な法手続きはこのように全て無視する一方、拘束適否審のような制度は利用しようとしているのだ。法を単なるおもちゃのように考える反法治主義の極端な形を見せている。「第2のチ・グィヨン判事」が現れ、法を歪曲してでも釈放することを期待しているのか。だが、刑事司法秩序を露骨に無視する被疑者に寛容を施す裁判所はないだろう。
特検の取り調べを拒否した尹前大統領が、荒唐無稽な不正選挙論を主張する米リバティ大学のモース・タン教授に接見しようとしたのは、さらにあきれたことだ。韓国系米国人のタン教授は、韓国で不正選挙が行われ、その背後に中国があるなど、妄想的な陰謀論を展開する人物だ。尹前大統領は同日午後、ソウル拘置所でユン・ガプクン弁護士とともにタン教授に接見しようとしたが、特検が接見禁止措置を下したため、実現しなかった。不正選挙論を掲げて非常戒厳を宣布し、結局弾劾され、内乱罪で裁判を受けていながら、いまだに妄想から目を覚ましていないのだ。
尹前大統領が現実とかけ離れた異常行動を見せるのは、依然として「尹アゲイン」から抜け出せない野党第1党「国民の力」と無関係ではない。同党のユン・サンヒョン議員とチャン・ドンヒョク議員が14〜15日に開催した討論会には、極右色のチョン・ハンギル元韓国史講師が2日連続で出席し、不正選挙論を展開した。14日の行事には、ソン・オンソク非常対策委員長ら党指導部も出席した。ソン非常対策委員長は後になって「党とは関係ない」と述べたが、この言葉を信じる人がどれほどいるだろうか。同党のユン・ヒスク革新委員長はこの日「党を弾劾の海に押し込んでいるナ・ギョンウォン、ユン・サンヒョン、チャン・ドンヒョク議員、ソン・オンソク非常対策委員長は、自ら進退を明らかにせよ」と要求した。極右と断絶し、「親尹」勢力を排除しない限り、国民の力は刷新どころか尹前大統領と共に没落の時間を操り上げることになるだろう。