内乱首魁の容疑者である尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領が、逮捕後も変わることなく、捜査の正当性を否定する法の無視の態度を続けている。さらに、12・3非常戒厳布告令については「キム・ヨンヒョン国防部長官(当時)が間違って書き写した」という荒唐無稽な主張を展開している。民主・法治国家の市民とは言えない非常識さと強引さの連続だ。このような人物に大統領という国政の最高責任を任せていたことに、恐ろしさしか感じない。
尹大統領は15日の逮捕後、高位公職者犯罪捜査処(公捜処)で8時間20分間にわたり調査を受けたが、「非常戒厳は大統領の固有権限」という一方的な主張以外には、始終一貫して返答を拒否したという。16日には公捜処の調査自体を拒否して欠席した。憲法裁判所の弾劾審判の裁判にも出廷しなかった。一方、尹大統領は、逮捕は不当だとしてソウル中央地裁に逮捕適否審を申請した。逮捕された被疑者が陳述を拒否し、逮捕適否審を申請することは、法が保障した権利であり責めるべきものではない。しかし尹大統領は、公捜処の捜査や裁判所の令状発付など、捜査そのものの正当性を根本から否定している点が問題だ。憲法と法律を守護する最大の責任を持つ大統領が、自身の身の安全のために司法体系を全面否定し、国家全体に悪影響を及ぼしている。
さらに、憲政を破壊した内乱罪を犯したことについて一抹の反省もないことには、あきれるしかない。尹大統領は14日に憲法裁判所に提出した答弁書で、12・3非常戒厳布告令1号について、「キム・ヨンヒョン前長官が、軍事政権時代の例文をそのまま書き写したものを見落とした」とする趣旨で弁明したという。布告令1号は、非常戒厳時でも国会活動を侵害できなくした憲法を正面から破るものだ。違憲判定を避けられないことをよく知っている尹大統領は、キム前長官に責任を転嫁する卑怯な策略を使っている。しかし、キム前長官の弁護人は16日、「キム前長官が草案を書き、大統領が検討した」と明らかにした。キム前長官が尹大統領の嘘に反論したわけだ。さらに、尹大統領は憲法裁判所への答弁書で、非常戒厳の際に戒厳軍が国会のガラス窓を破壊したのは、「興奮した群衆を防ぐためのもの」だとする主張までした。まったくもって解読不可能な詭弁だ。
尹大統領はいまでも法と常識をもてあそぶことができるという妄想に陥っているようだ。しかし、憲政史上初の現職大統領の逮捕で立証されたように、韓国の法治は堅固たるものだ。民主主義と法治を破壊した内乱犯は、法により断罪されるのが当然だ。