与党「国民の力」のハン・ドンフン非常対策委員長が1日、釜山市海雲台区(ヘウンデグ)支援遊説で、「皆さんから見て、政府は至らないところがあるかもしれないが、その責任は私にはないのではないか」と語った。ハン委員長は、尹錫悦(ユン・ソクヨル)政権で「小統領」と呼ばれた実力者中の実力者だった。法務部長官から与党の非常対策委員長へと、事実上尹大統領が指定した腹心でもあった。そのような人物が、現政権の失政について自分に何の非があるのかと責任逃れをしたのだ。これほどの図々しさと無責任さがほかにあるだろうか。
今、尹錫悦政権の無能さと横暴さに審判を下すべきだという世論が高まっていることは、全国民が肌で感じている。「釜山の江南(カンナム)」と呼ばれる海雲台区も、過去には与党の公認候補になれば、誰でも当選すると言われるところだったが、今や尹大統領の最側近であるチュ・ジヌ前大統領室法律秘書官が海雲台甲の与党候補に選ばれたにもかかわらず、野党候補と誤差範囲内で接戦を繰り広げているという世論調査結果が出るほど、世論が悪化した。「政府の至らないところ」に触れたハン委員長の発言も、このような世論を意識したためだろう。
だとしても、他でもないハン委員長が政府の過ちは自分の責任ではないと否定するのを、誰が納得できるだろうか。ハン委員長は、検察に対する捜査指揮権を握る法務部長官として、尹大統領の夫人、キム・ゴンヒ女史の様々な疑惑を一貫してかばってきた。一方、野党と前政権に対しては、違法な被疑事実の公表に近い内容を公の場で口外し、政治攻撃の先頭に立った。人事検証権も振りかざしたが、数えきれないほど噴出した人事問題を防ぐことはできなかった。現政権が公正さと常識を崩した末に審判の対象に転落するまでの中で、ハン委員長の責任は決して軽くない。与党からも「法務部長官を務めたのだから、責任重大だ」(ホン・ジュンピョ大邱市長)という批判が出るほどだ。
与党の非常対策委員長になった後もそうだ。一度でも尹大統領の独善と聞く耳を持たない態度をきちんとけん制し、変えようとしたことがあるのか、まず振り返ってみる必要がある。「キム・ゴンヒ特検法」からブランドバッグ授受疑惑、「被疑者」イ・ジョンソプ前国防部長官をオーストラリア大使に任命し(最近辞任)、逃走劇を繰り広げたことまで、常に大統領の顔色をうかがいながら曖昧な言葉で綱渡りをした末に、大統領に激怒されたら頭を下げることの繰り返しだったのではないか。
今回も「政府の至らなさ」を言及した日の翌日である2日、「最近選挙と関連して、誰が離党しなければならないとか、乱暴な言葉を口にする人がいる」(前日の尹大統領の国民向け談話に対する与党内の意見分裂についての批判)として、再び大統領を擁護した。また顔色をうかがっているのだ。責任論に対しても「至らないことがあるのなら、それは全て私の責任」だと言い、一日で前言を撤回したが、何が至らないのか、何に責任を負うのかについては全く触れず、空虚な言葉を並べるだけだ。責任逃れと前言撤回は、もう見たくない。