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4月の韓国総選挙の天気図…未来権力の浮上と医療大乱の長期化が野党の二重苦に(1)

登録:2024-03-11 01:55 修正:2024-05-20 11:29
共に民主党のイ・ジェミョン代表が3月6日、国会で開かれた最高委員会議で発言している/聯合ニュース

 6日夜、野党「共に民主党」の選挙管理委員会のパク・ボムゲ委員長が4次、5次、6次(公認候補選出のための)予備選挙の結果を発表しました。民主党担当記者の一人が記者団のグループチャットで、「振り落とされたレベルを超え、全滅というべきかもしれない」とし、「ドゥームズデー」「ジェノサイド」という表現を使いました。カン・ビョンウォン議員、チョン・ヘスク議員、パク・グァンオン議員、ユン・ヨンチャン議員、チョン・チュンスク議員、キム・ハンジョン議員など、(イ・ジェミョン代表を支持しない)非イ・ジェミョン派の現役議員たちが大勢脱落したことを「集団虐殺」に喩えたのです。

 同日の予備選挙の結果は、公認候補選びを巡る「イ・ジェミョン発公認波紋」の第三波に当たります。第一波は、パク・ヨンジン議員が(公認候補を選ぶための評価で)下位10%を記録したという通知によるものでした。報復評価との批判の声が上がりました。パク議員は先の大統領選候補予備選挙と代表選出の党大会でイ代表のライバルでした。第二波は、イム・ジョンソク元大統領府秘書室長とホン・ヨンピョ議員が公認候補から排除されたことで起きました。ライバルの芽を摘んだのではという疑念が広がりました。二人は総選挙後、8月の民主党代表選出の党大会に出馬できる潜在的なライバルでした。「非イ・ジェミョン派現役議員の集団虐殺」という第三波は、おそらく最後の波ではないでしょう。予備選挙がまだ残っているからです。パク・ヨンジン-チョン・ボンジュ候補の決選結果は11日夜に出る予定です。

ソン・ハニョン先任記者の政治舞台裏//ハンギョレ新聞社

民主党の「熱血党員の力」を確認

 今回の予備選挙の結果で、民主党内の古い疑問の一つが解けました。(イ・ジェミョン代表を支持する)親イ・ジェミョン派の党員たちの実際の影響力です。これまで民主党では、いわゆる「改娘(ケタル:改革の娘)」と呼ばれる親イ・ジェミョン派の熱血党員や支持者の影響力が「過大代表」されているという批判がありました。数がそれほど多くないのに、声だけが大きくて党内の雰囲気に悪影響を及ぼしているという主張でした。しかし、今や誰も「改娘過大代表論」を口にすることができなくなりました。親イ・ジェミョン派の党員と支持者の力が実際にかなり強いことが明らかになったためです。民主党が「ファンダム政党」にまた一歩近づいたのです。

 イ・ジェミョン代表の言うように、今回の予備選挙の結果は「1年前から準備したシステムによる公認」の結果である可能性があります。形式論理の上では一理あります。しかし、結果的には「イ・ジェミョンの民主党」、「改娘が掌握した民主党」という否定的なイメージがさらに強まるものとみられます。こうしたイメージは民主党と民主党候補の総選挙での競争力を落としかねません。イ・ジェミョン代表が意図したかどうかにかかわらず、総選挙で民主党にとっては悪材料です。「党の主人は党員であることを確認した」と歓迎する場合ではありません。

 公認候補選びをめぐる民主党の乱脈ぶりは、4年前のイ・ヘチャン代表体制で行われた公認候補選びとは、様々な面で対照を成しています。当時も現役議員を対象にした評価で下位グループに入ったことによる減点制度がありましたが、公正性が問題になったことはありませんでした。秘密が守られました。当事者たちが概ね納得したからです。低い評価を受けた議員たちは減点を抱えたうえで予備選挙を行いました。勝った人もいれば、負けた人もいました。しかし、誰が減点されたのか、これまで明らかになったことがありません。当時のイ・ヘチャン代表は、党内選挙で側近や知人にいかなる特恵も与えませんでした。側近たちに「薄情すぎる」と恨まれるほどでした。だからといって、機械的に予備選挙管理だけに力を入れたわけではありません。精巧で政務的な判断を下しました。

 文在寅(ムン・ジェイン)大統領と党指導部に苦言を呈しすぎて「チョ・クム・パク・ヘ」と呼ばれた人たちがいました。チョ・ウンチョン(京畿南楊州甲)議員、クム・テソプ(ソウル江西甲)議員、パク・ヨンジン(ソウル江北乙)議員、キム・ヘヨン(釜山蓮堤)議員です。文在寅大統領を支持する党員たちは彼らを予備選挙で落としてやると意気込んでいました。ところが、イ・ヘチャン代表は考えが違いました。非主流議員も民主党の公認を受けて出馬できるようにすべきだと判断したのです。クム・テソプ議員にチョン・ボンジュ元議員とキム・ナムグク弁護士が挑戦状を出しました。イ・ヘチャン代表はチョン元委員とキム弁護士を次々と「片付け」ました。その代わり、クム議員が無名に近かったカン・ソンウ候補と予備選挙を戦うようにしました。にもかかわらず、クム議員は予備選挙で負けました。そして、結果をそのまま受け入れました。もともと潔い性格の持ち主でもありますが、イ・ヘチャン代表の配慮に気づいていたからです。

 結果的にクム・テソプ議員を除く3人は民主党の公認候補に選ばれました。総選挙で、チョ・ウンチョン議員とパク・ウンチョン議員は当選し、キム・ヘヨン議員は落選しました。2020年の総選挙で民主党公認をめぐり不協和音がほとんど聞こえなかったのは、このようにイ・ヘチャン代表のリーダーシップと政務的判断、管理能力のおかげでした。このような不協和音のない公認候補選びは、ファン・ギョアン代表が率いた未来統合党と未来韓国党の公認をめぐる乱脈ぶり、コロナ禍と相まって、民主党の類例のない総選挙圧勝につながりました。

 今回のイ・ジェミョン発公認波紋による損失が最終的にどの程度なのかは、まだ見当がつきません。現在進行形だからです。今よりもっと大きくなるかもしれないし、小さくなるかもしれません。イ・ジェミョン代表は「今回の民主党の公認は革新公認、そして公認革命だ。民主党は党員の政党であり、国民が党の主人であるという事実を、党内選挙を通じて証明した。国民主権の原理をしっかりと具現化している」として批判を跳ねのけようとしています。

 しかし、公認制度は実際に公正であることより「公正に見えること」の方がより重要かもしれません。今後の世論調査で民主党の支持率が回復しない場合はどうすればよいでしょうか。「世論調査の数値は信じられない」と叫びながら「精神勝利」に陥るのは危険です。何か特段の対策が必要でしょう。21日と22日の候補登録前まではまだ時間が少し残っています。イ・ジェミョン代表がどう対応するのかを見守る必要があると思います。

(2に続く)

ソン・ハニョン政治部先任記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/politics/politics_general/1131576.html韓国語原文入力:2024-03-10 20:32
訳H.J

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