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[コラム]尹錫悦の「メソッド演技法」、イ・ジェミョンの自傷劇

登録:2024-02-28 09:22 修正:2024-02-28 10:03
尹錫悦大統領と国民の力のハン・ドンフン非常対策委員長が先月23日、忠清南道舒川の火災現場で対面し、握手している/聯合ニュース

 大きな選挙には何度かの転換点が必ずある。先月21日もそのような日となる可能性が高い。

 その休日の午後は「尹錫悦-ハン・ドンフン対立」報道一色だった。キム・ゴンヒ女史のブランドバッグ授受をめぐるハンの一言に怒った尹が、イ・グァンソプ秘書室長を通じて辞任を要求したというのだ。直ちに「約束組手のようだ」と評された。2人の行動パターンは、政界より検察時代の同僚たちの方がよく知っている。要約すると次のようになる。

 2人の間にはイ・グァンソプが挟まっている。常識はずれだ。尹がハンに電話できない理由があろうか。辞めさせるつもりなら直に伝えた方がましだ。ハンが「ノー」と言う? ありえない。辞任の口実と形は作れば済む。そうしないと静かに終わらず、ダメージも大きい。だが、満天下に騒々しく追放劇をさらす? キム・ギヒョンを追い出して間もないのに、公開自傷するだろうか。あの2人は見た目よりずる賢い。

 何人かはもう少し踏み込んだ。「数日以内に2人は握手して和解するだろう。長引けば本当の自傷ともなりうるから」。当時はイ・ジュンソクも似たような話をしていた。

 しかし、政界とメディアの多くは真逆の予測をした。「辞任要求を拒否した」というハンの発言を有力な根拠として。ハンの辞任で終わるだろうという見方は強かった。政界の長年の文法に従えば、それは正しい。しかし2日後、尹とハンは舒川(ソチョン)の火災現場で握手した。いつそんなことがあったのかとでも言うように、共に列車に乗り込んで元の席に戻った。その日のハンの帰京の辞は、改めて読み返してみても意味深長だ。「そのような話(大統領との対立説)は、すべてマスコミで報道されたものだ」

 約束組手の可能性もあるし、そうでない可能性もある。明らかなのは、あの日以降、尹夫妻を一つの軸、ハンと国民の力をもう一つの軸とする「デカップリング(脱同調化)」が本格化したということだ。尹の否定的なイメージはさらに強固になったが、与党とは分離しはじめた。一方、「尹のアバター」と呼ばれていたハンのイメージは変わった。大統領の権力にあえて抗い、辛うじて生き残ったナンバー2へとイメージチェンジした。当時のギャラップ(1月26日)の「党代表の役割遂行に対する評価」にも表れている。ハンは52%の肯定的な評価(否定40%)を得てイ・ジェミョン(肯定35%、否定59%)を上回った。

 旧正月連休の直前の7日、尹はまたしても「悪役」として立ち現れた。韓国放送の新年対談でだ。「ブランドバッグ」についての謝罪や遺憾表明はついになかった。実情は100%自身の問題として持ち去った。同時に与党はさらに遠くへ追いやった。「選挙指揮、公認には関与しない」。総選挙はもはやハンのものとなった。旧正月連休が終わるとデカップリング効果はより明確になった。意図した通りた。国民の力(42%)は「総選挙時の支持意向」調査で民主党(36%)を上回った。「多数候補の当選を希望する政党」でも民主党を抜いた(ギャラップ、今月16日)。旧正月の連休を起点として「反尹=反与党」感情に火がつくという民主党の期待は外れた。「政権審判論」はかえって曖昧になった。その後、様々な世論調査の傾向も変化はない。民主党は23日、ギャラップの「側面ごとの政党イメージ」調査でも4対1で与党に完敗した。

 尹とハンを侮っていた。大統領選挙に負けても「ユンナテン」(尹錫悦が出てくればサンキュー)、「ハンナテン」が口癖だった。汝矣島(ヨイド)の政治と選挙には素人だと、だから何をしても負けるはずだと決めつけていた。しかし、2人をよく知る者たちはまったく異なる話をする。

 総選挙での敗北は地獄だということを尹もハンもよく分かっている。だが、1月中旬まで状況はこの上なく不利だった。共倒れの切迫した危機感が役割分担へとつながった。リスクはすべて尹が抱え込み、総選挙はハンが顔となって行うという苦肉の策だ。総選挙は短期決戦だ。2人はかつての特検、積弊捜査からも分かるように、目標を決めたら手段を選ばず、押し通す。臨機応変、メディアプレーにも長けている。検事時代、ハンはもともと企画・人事が主専攻だった。実際に与党の運営はもちろん、公認過程が特に雑音なく管理されているのはハンの手腕だ。

 民主党は依然として相手の戦略の変化を気にとめていない。客観的な民意の移動にも関心がない。寝ても覚めても尹をたたきさえすれば総選挙で勝てると固く信じている。そんな中、自陣営は四分五裂の状態に陥っている。生存の欲望に捕らわれたイ・ジェミョンの自身の党作りが、危機を取り返しのつかないほど大きくしている。一部は「アゲイン2012」に言及しはじめている。圧勝を大言壮語し、痛恨の敗北に終わった12年前の総選挙のことだ。早くからイ・ジェミョンの代表辞任を勧告していたチョン・セギュンの先見の明は誤りではなかった。

//ハンギョレ新聞社

カン・ヒチョル|論説委員 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )

https://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/1130052.html韓国語原文入力:2024-02-27 15:35
訳D.K

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