本文に移動

病院襲撃したイスラエル軍の「失敗」…ハマス指揮部の痕跡すら見つからず

登録:2023-11-17 06:40 修正:2023-11-17 07:02
ガザ地区最大の医療施設アル・シファ病院の医療スタッフが15日(現地時間)、イスラエル軍の急襲後、煙に満ちた廊下で患者を運んでいる/ロイター・聯合ニュース

 イスラエル軍はパレスチナのイスラム武装勢力ハマスの軍事指揮本部を見つけ出すとして、数千人の患者と避難民が集まっていたガザ地区最大の医療機関アル・シファ病院への襲撃に乗り出したが、指揮本部の存在の立証に事実上失敗した。イスラエル軍が国際法における保護の対象である病院内に地上軍を投入したことが、果たして適切だったのかをめぐり、議論が巻き起こっている。

 イスラエル軍は16日、ソーシャルメディアX(旧ツイッター)に掲載した映像で、「(前日のアル・シファ病院襲撃の過程で)数え切れないほど多くのハマスの武器を確保した」とし、ハマスの軍事指揮本部として使われたという同病院の磁気共鳴画像(MRI)装備が設置された病棟内部などを公開した。これに先立ち、イスラエル軍は15日午前2時頃、特殊部隊員100人余りと戦車を動員して病院内に進入した後、「軍事情報と作戦上の必要に応じて、アル・シファ病院の特定地域でハマスに対する『精密かつ標的化された』作戦を遂行している」と明らかにした。

 イスラエル軍のヨナタン・コンリクス報道官(中佐)は公開された映像で、MRIの裏にある小銃1丁と弾倉、服、ノートパソコンが入っているカバンを見せながら、「先ほどイスラエル軍が見つけたもので、非常に隠密かつ便利に(小銃などを)利用できるように置かれている」と主張した。イスラエル軍は、他の部屋でも小銃数丁と弾倉、拳銃、防弾チョッキ数着、手榴弾3個、ナイフ、リュックサック、戦闘靴などを発見したと発表した。

 しかし、イスラエル軍がアル・シファ病院で見つけたという品物は、小規模戦闘に使える装備に過ぎない。特に、トンネルにつながった通路や大規模な軍事および指揮施設はその痕跡すら見つからなかった。

 イスラエル軍は最近、アル・シファ病院周辺で戦闘を行っており、病院への燃料供給が途絶え、保育器も作動できず、未熟児など新生児が死亡する事態まで起きた。イスラエル軍が国際的な批判世論にもかかわらず、病院内部への侵入まで強行して見つけ出した装備は、ハマス軍事指揮本部が病院内にあったという証拠として微々たる水準だ。

 イスラエル軍は15日、大きな収穫を得られないまま主力兵力を撤退させた。ニューヨーク・タイムズ紙は、「イスラエルは今回の戦争の象徴となったアル・シファ病院を掌握した」としながらも、「(病院攻撃で)すでに国際社会の懸念を呼んでいる状況で、今回の攻撃の必要性を立証できなければ、イスラエル側に立っていた国々の支持を失いかねない」と指摘した。

 ハマスは同日の声明で、イスラエルの説明を「誰も信じない捏造された話」だと一蹴した。イスラエル軍がアル・シファ病院に進入する前はイスラエルを側面支援していた米国も手を引く様子だ。米ホワイトハウス国家安保会議(NSC)のジョン・カービー戦略広報調整官は、イスラエル軍がアル・シファ病院に進入した後に開いたブリーフィングで、「私たちは病院進入作戦を承認したことがない」とし、「イスラエル軍の作戦であり、米国はこの過程に介入したことがない」と一線を引いた。

 一方、イスラエルとハマスが進める50人規模の人質交換交渉案が急流に乗っていると、ニューヨーク・タイムズ紙が15日付で報じた。同紙はイスラエル政府の交渉家3人以上の話として、「先月7日のハマスによるテロ攻撃当時、拉致されたイスラエル人の女性・子ども50人と、現在イスラエルの刑務所に収監されているパレスチナ人の女性・子どもをほぼ同数で交換する交渉が進められている」と報道した。カタールとエジプト、米国が仲裁した今回の交渉は、人質解放対象のうち家族は一緒に開放するという原則を立てるなど、かなり具体的なレベルまで進んでいるものとみられる。

 同紙は名前を明かさないイスラエル当局者の話として、今回の交渉案にはイスラエルとハマスが数日間敵対行為を中断する「人道主義に基づく一時戦闘休止」の内容も含まれたと報じた。また、ハマスも交渉の大枠について認めたと確認し、交渉を遅らせているとしてベンヤミン・ネタニヤフ政権を非難したと報道した。

ホン・ソクチェ記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/international/international_general/1116567.html韓国語原文入力:2023-11-1700:20
訳H.J

関連記事