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韓国で失業率2%台が20カ月…不況なのに雇用堅調のミステリー

登録:2023-11-14 01:38 修正:2023-11-14 08:59
一つの「すう勢」としてとらえられる2%台の失業率は、少子高齢社会や家族形態の変容などの、韓国の社会経済部門の構造的変化が総体的に凝縮されている。釜山海雲台区のBEXCOで開催された「60+シニア雇用ハンマダン」で職を探している高齢者が履歴書を作成している/聯合ニュース

 経済活動の究極の目的は消費であり、消費に使われる所得の源泉は雇用である。物価、金利、成長率より失業率の方が重要な理由の一つはこれだ。2023年9月時点で韓国の経済活動人口(2935万9千人)のうち2869万8千人が職に就いており、失業者は66万1千人(失業率2.3%)だ。2021年までは「月平均の失業者数が100万人前後」の経済だった。8、9月は失業率が最も低くなる季節ではあるが、2023年8月の失業率は2.0%(失業者57万3千人)にまで下がった。季節的要因を除去した指標を見ると、2022年2月から「月間失業率2%台の雇用体制」がほぼ20カ月連続している。2021年から月間、四半期、年間いずれも一度も例外なく失業率指標はマイナスが、就業者はプラスが続いている。

 2%台の失業率は、完全雇用水準(自然失業率3%台前半)を超える想像しがたい数値だ。労働市場の研究者にとっては驚くべき、正確な説明と要因分解による識別が難しい、一種の「雇用パズル」だ。雇用の変動は様々な要因(景気の変動、人口・産業構造、政策・制度およびグローバル化、ITなどの技術的衝撃)が複合的に相互補完と相殺作用をしつつ起こるため、明快な説明が難しい領域ではある。ただし雇用指標は、製造業では景気より遅れ(6~12カ月の時差)、サービス業では比較的リアルタイムで連動するが、2023年は輸出・製造業の景気不振で上半期の実質成長率が0.9%(対前年同期比)にとどまったにもかかわらず、「雇用サプライズ」は続いている。景気と就業者の増減との相関関係が弱まるのには、いくつかの理由がある。

 第1に、雇用の増加を引っ張っているのは女性と高齢層だ。高齢者の就業は、60代を中心として女性・男性ともに増加している。引退した高学歴のベビーブーマー(60代)は平均寿命が延び、健康状態も良いため、仕事に対する欲求が依然としてある。女性は「子のいない30代」で就業が大幅に増えている。2%台の失業率は、ある意味で韓国の社会経済の少子化の傷を反映してるわけだ。

 第2に、女性・高齢層の労働市場への参加の増加は「供給側」のすう勢だが、彼らを受け入れる事業体(個人・法人)側の需要も高まっている。その理由としては「労働生産性の低さ」が指摘されている。おおよそ2010年代初めから韓国の製造業の労働生産性は下落がはじまっている。サービス業の生産性は依然として低い水準にとどまっているうえ、コンピュータ・IT部門にも生産性の向上が意外にもそれほど観察されない、いわゆる「生産性の逆説」が存在する。週40時間と週52時間の勤労上限制の制約の中で、以前と同じ製品数量を生産するのに投入すべき労働量が徐々に増えてるわけだ。

 第3に、雇用が大幅に増加している領域は高齢社会の需要を反映した保健福祉、女性壮年層中心のケア部門、対面活動の制約がなくなった宿泊・飲食、青年層が好む情報通信・放送映像コンテンツ制作、専門科学技術(研究開発、法務・会計・広告・世論調査・教育、エンジニアリング設計など)などだ。コロナ禍以降も依然として膨張中のプラットフォーム経済(配達・宅配など)は、労働市場への参加機会が少なかった女性や高齢層に、フルタイムの正社員ではないとしても、仕事を「小さく分けて」提供する役割を果たしている。最近では、40~50代の女性たちは清掃(家・事務所)プラットフォーム・ウェブサイトを通じて希望する時間帯の仕事を非常に簡単に探せるようになっている。コロナ禍以降、対面と非対面が互いにとって代わるのではなく、並んで維持・拡大する様相を呈している。今や一つの「すう勢」としてとらえられる2%台の失業率には、少子高齢社会や家族形態の変容などの、韓国の社会経済各部門の構造的変化が総体的に集約・凝縮されている。

チョ・ゲワン先任記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/1115876.html韓国語原文入力:2023-11-11 09:00
訳D.K

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