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「大統領の友人の友人」韓国最高裁長官候補、資質と道徳性疑われた末に退場

登録:2023-10-07 06:41 修正:2023-10-21 10:46
イ・ギュニョン最高裁長官候補が9月20日、国会で開かれた人事聴聞会で議員の質疑に答えている/聯合ニュース

 尹錫悦(ユン・ソクヨル) 大統領が国会に提出した最高裁長官候補のイ・ギュニョン氏の任命同意案が、6日に否決された。これによりイ候補は指名から45日でソウル高裁部長判事に戻ることになった。1988年以来初めての最高裁長官候補の任命同意案否決により、最高裁は空白の長期化を迎えることになった。国会で任命同意案が否決された後、イ候補は「早く立派な方がいらして最高裁長官の空白を埋めるとともに、司法府が安定を取り戻すことを願う」と述べた。

 イ・ギュニョン候補の名前は、尹錫悦大統領の初の最高裁判事任命である2022年7月に登場した。最高裁判事候補推薦委員会は、当時大田(テジョン)高等裁判所長だったイ候補と共に、オ・ソクチュン済州地方裁判所長、オ・ヨンジュ・ソウル高等裁判所部長判事など3人をキム・ミョンス最高裁長官に最高裁判事候補として推薦した。イ候補はこれに先立ち、最高裁判事候補に数回推薦されたが、「最終3人」に入ったのは初めてだった。最高裁判事にはオ裁判所長が選ばれた。しかし、オ最高裁判事をはじめイ候補も尹大統領と近い間柄であることが知られ、法曹界には次期最高裁判事候補の可能性を占う際、尹大統領との「親交」を重要視する雰囲気が広がった。

 イ候補は大田高等裁判所長だった昨年10月、国政監査で「尹錫悦大統領をよくご存知ですよね」という野党「共に民主党」のパク・ボムゲ議員の質問に、「親友の親友」だと答えたこともあった。7月にも最高裁判事2人が任命されたが、イ候補は「最終8人」に入らなかった。

 その後8月22日、尹大統領はイ候補を最高裁長官候補に指名した。その背景をめぐり様々な憶測が飛び交った。尹大統領の義母の法廷拘束、パク・ビョンゴン判事によるチョン・ジンソク議員(国民の力)への実刑判決などがその背景になったとか、イ候補が当時のキム・ミョンス最高裁長官に反対する立場を明確にしたためだという分析が出た。指名当時、母親の喪中だったイ候補は、23日にキム最高裁長官を表敬訪問し、マスコミの前に姿を現した。「崩れ落ちた司法への信頼と裁判の権威を回復する」というのが候補としての第一声だった。キム最高裁長官体制を真っ向から批判した発言として受け止められた。

 しかし、マスコミと国会が人事検証に入ると、イ候補の道徳性と資質が議論の的になった。尹大統領が国会に最高裁長官候補者任命同意案を提出した29日、イ候補は裁判官として在職している間、妻の実家が運営する会社の非上場株式を保有していることを申告しなかった事実があったと明らかにした。評価額だけでも9億9千万ウォン(約1億900万円)にのぼるが、イ候補は「妻の実家の財産問題だったので忘れていたし、法令上財産登録対象へと(公職者倫理法施行令の評価方式が)変更された事実を知らなかった」と釈明した。しかし、毎年数千万ウォンの配当金を家族が受け取ってきた事実などが明らかになり、厳しい批判にさらされた。その他、農地関連法令違反▽息子のキム&チャン(韓国最大手の法律事務所)インターン採用▽子どもの国外財産登録漏れ▽贈与税脱税関連疑惑が次々と持ち上がったが、イ候補は9月19~20日の人事聴聞会で明快に説明することができなかった。また、性犯罪・家庭内暴力事件の減刑から始まったジェンダーへの理解問題や歴史観に対する批判も出てきた。ソウルのある部長判事は「なぜ『イ・ギュニョン最高裁長官』が今裁判所に必要な人物なのかに対する共感が得られなかった」と指摘した。

 加えて、イ候補の人事聴聞会翌日の9月21日、野党「共に民主党」のイ・ジェミョン代表の逮捕同意案が国会で可決され、与野党の対立が極限まで深まった。国会は9月25日に予定されていた表決を先送りしたが、野党の反対ムードは衰えなかった。表決を控え、裁判所事務総局は国会を訪問して野党議員の説得に乗り出し、イ候補者も5日、再度立場を発表し「最高裁長官職位の空白を埋め、国家と社会、そして裁判所のために奉職する機会を与えて下さるよう切に願う」と訴えた。しかし、流れを変えることはできなかった。

 6日午後、国会は本会議を開き、総投票数295票のうち賛成118票、反対175票、棄権2票でイ候補の任命同意案を否決した。最高裁長官候補者の国会任命同意案が否決されたのは、1988年のチョン・ギスン最高裁長官候補以来35年ぶり。

チョン・ヘミン記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/society/society_general/1111144.html韓国語原文入力:2023-10-07 02:30
訳H.J

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