国防部が陸軍士官学校内にある洪範図(ホン・ボムド)将軍の胸像を移転することを決めたことについて、オスロ大学の朴露子(パク・ノジャ、ロシア名:ヴラジーミル・ティホノフ)教授が「失政を繰り返している政権が、イデオロギー問題へと関心をそらすために独立運動家を攻撃している」と強く批判した。
朴教授は2日、自身のSNSで「陸軍士官学校で繰り広げられている『洪範図将軍胸像撤去』の茶番劇は、一面ではそれこそ『煙幕工作』ぐらいに見える」と述べつつ、上のように指摘した。
朴教授はこの文章で「いま輸出が不振に陥っているため今年の経済成長率見通しも世界平均の半分で、日本の汚染水放出など韓国政府がほう助犯となった大規模な環境犯罪も周辺で強行されているが、この総体的難局から大衆の関心をそらすための一つの『材料』が必要だったというのがこの分析の骨子」だと述べた。「洪将軍の胸像撤去とその撤去が招いた「イデオロギー攻撃」が「大衆の目をそらすための素材」だったということだ。
前日の文章でも、「深刻化しつつある経済危機、汚染水放出と漁業の長期的荒廃など、大きな懸案における政府の無能さと失政を覆い隠すために、いまは故人となっている独立運動の英雄にイデオロギー攻撃を仕掛けている格好だ」とし、「本当に恥知らずな連中であり、『政府』と呼ぶのもはばかられる」と強く批判した。
朴教授は「洪将軍は単なる独立運動の英雄ではない。50万人の高麗人(コリョイン、朝鮮半島からロシアに移住し、ソ連時代に中央アジアに強制移住させられた人々)の集団的アイデンティティーの象徴でもある」とし「この50万人の高麗人の5分の1はいま韓国に居住しており、韓国という国家は彼らを社会的に統合するという課題を背負っている。果たしてその集団アイデンティティーの象徴である洪将軍をこのように冒とくすることが、彼らの社会統合、ひいては旧ソ連の高麗人ディアスポラとの良好な関係の構築に役立つのか」と問うた。
国防部は先月28日、「共産主義の履歴がある洪将軍の胸像を陸軍士官学校に設置して記念することは、同校のアイデンティティーを考慮すると適切ではない」と主張した。このような理由をあげて同校は31日、洪将軍の胸像を校外に移転することを決めた。独立軍の指導者だった洪将軍は、1890年代末から1920年代初頭まで祖国と民族の独立と解放のために戦い、鳳梧洞戦闘と青山里戦闘を勝利に導いた。スターリン政権による韓人強制移住政策で沿海州からカザフスタンのクズロルダに移住させられ、1943年に75歳で死去した。