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韓国でミツバチ141億匹が大量死…蜜が底をついた4月

登録:2023-04-25 04:38 修正:2023-04-25 13:47
巣枠の巣房の中で白いミツバチの幼虫が育てられている。女王蜂が卵を産むと、幼虫を経て21日で成虫になる=チェ・サンウォン記者//ハンギョレ新聞社

 「冬の間に飼っていたミツバチの半分を失いました。去年の越冬に入る時期には巣箱が500個を超えていたのに、今は不完全なものまで合わせても300個もあるかな。私は肩書上は養蜂を教える立場なんですが、恥ずかしくて言えません」

 23日に慶尚南道昌原市(チャンウォンシ)の大岩山(テアムサン)麓で会った韓国養蜂振興院のスン・ジャングォン院長は深いため息をついた。同氏の養蜂場の片隅には空の巣箱が積んであった。60個は超えているように見えた。

 ミツバチは春の花が咲く4月初めから5月中旬にかけて、1年になすべきことをすべてする。この時期は休むことなくこちらの花、あちらの花と飛び回って蜜を集め、巣箱の中の巣枠を隙間なく埋める。養蜂業者たちは蜜が巣枠の中にいっぱいになるのを待ち、4月末から蜜の採取を始める。ミツバチが巣枠に蜜を満たす時期に空の巣箱が積んであるということは、何かがおかしいということを意味する。

 ミツバチが棲んでいる巣箱の状態も深刻だった。1つの巣箱には8枚の巣枠が入るが、巣枠が2~3枚だけの巣箱が多く見られた。ミツバチの数が少ないため、それ以上巣枠を入れることができなかったのだ。

 スン院長は「今年はどうも蜜を搾るのをあきらめなければならないと思う」と話した。今のように巣箱がいっぱいになっていない状態では、蜜を搾るよりミツバチの数を増やすことが先決だというわけだ。スン院長は「暖かくなるにつれてミツバチは増えてはいるが、個体数が少なすぎてスピードが上がらない。ミツバチが買えるなら追加料金を払ってでも買いたいが、すべての養蜂農家が被害を受けているので今はミツバチを得ること自体が大変だ」と話した。

韓国養蜂振興院のスン・ジャングォン院長が23日、巣箱の蓋を開けてミツバチの成長状態を点検している。ミツバチの数は例年の半分にも満たない=チェ・サンウォン記者//ハンギョレ新聞社

 ミツバチの不足は、2年連続で発生した大量死のせいだ。韓国養蜂協会は、4月現在で協会所属農家の巣箱153万7270個のうち61.4%に当たる94万4000個でミツバチが死んだと集計している。巣箱1つに1万5000~2万匹のミツバチが棲んでいることから、少なくとも141億6000万匹を超えるミツバチが消えてしまったわけだ。農林畜産食品部の関係者は「全国の被害状況を調査中だが、昨年より被害規模は大きいようだ」と述べた。

 ミツバチの集団死の主犯として関係当局が指摘するのは、ダニの一種だ。このダニは巣箱に寄生し、幼虫の体液を吸って病原性のウイルスをうつす。そのため養蜂農家は毎年、ダニの防除に多大な努力を傾けている。

 問題は、次第に防除の効果が落ちてきているということ。一方で養蜂農家は、ミツバチの死は気候危機と関係していると主張する。ダニの異常繁殖も気候変動でなければ説明できないというのが養蜂農家の考えだ。

 各自治体は困難に直面している養蜂農家を支えるために、ミツバチを買った際に購入代金の50%を補助する「ミツバチ入植資金支援策」を打ち出した。ミツバチが70.6%も減少した慶尚南道は2月15日、養蜂農家がミツバチを購入すれば巣箱1個当たり12万5千ウォン(約1万2600円)を補助すると発表している

 ミツバチが60%減った全羅南道も先月28日、巣箱1個当たり20万ウォン(約12万1000円)の入植資金を補助すると発表した。資金の補助は、各養蜂農家が個別にミツバチを購入し、その後、確認手続きを取れば購入代金の50%が支給されるという方式。しかし養蜂農家は「ミツバチがいてこそミツバチが買える。いないミツバチをどこで買えというのか」と不満を漏らす。

巣箱の中のミツバチの状態。羽が短く胴体が長いハチが女王蜂=チェ・サンウォン記者//ハンギョレ新聞社

 このような状況は自治体も分かっている。慶尚南道畜産行政係のパク・トンソ係長は「現在、養蜂農家は地域を問わずミツバチを得るために努力しているが、採蜜期前に欲しいだけミツバチを得るのは事実上不可能だ。やむを得ない状況だ。道が補助する入植資金は今年の採蜜のためのものというより、長期的観点から養蜂飼育基盤を回復するためのものと理解してほしい」と話した。

韓国養蜂振興院のスン・ジャングォン院長が24日、積み上げた空の巣箱を手入れしながらため息をついている。通常は、採蜜を控えたこの時期に空の巣箱はありえない=チェ・サンウォン記者//ハンギョレ新聞社

 養蜂農家は、入植資金の補助ではなく被害補償が必要だと口をそろえる。韓国養蜂協会は「ミツバチの大量死は気候変動にともなう自然災害」だとし、「自然災害で果樹農家や養殖漁民が被害にあった時に政府が補償するように、養蜂農家にも補償が伴うべきだ」と主張する。一部からは、生態系に占めるミツバチの重要性を考えれば、ミツバチ飼育を奨励するための養蜂直払金制の導入も必要だとする声が強くあがっている。

 スン・ジャングォン院長は「ミツバチは地球の生態系にとって非常に重要な生物だ。イチゴ、マクワウリ、スイカ、唐辛子などをミツバチで受精させる施設栽培農家は、追加料金を払ってもミツバチが手に入らず、すでに困難に直面している」と話した。養蜂産業は単にミツバチを生産する産業ではなく、農業生態系の循環のためにミツバチを飼育する産業だと認識したうえで、政府のアプローチも変わらなければならないということだ。

チェ・サンウォン記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/area/area_general/1089079.html韓国語原文入力:2023-04-24 06:00
訳D.K

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