本文に移動

尹大統領、状況室ではなく自宅で電話指示…「通勤大統領」への懸念が現実に

登録:2022-08-10 05:54 修正:2022-09-02 09:56
尹錫悦大統領が今月9日、大雨で一家3人が死亡したソウル冠岳区新林洞の多世帯住宅を訪れ、パク・ジュンヒ冠岳区庁長と話し合っている=大統領室写真記者団//ハンギョレ新聞社

 尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領が首都圏一帯の記録的な集中豪雨の中、ソウル瑞草洞(ソチョドン)の自宅から電話で対応を指示したことで物議を醸している。大統領室側は「大統領の現場・状況室の訪問が現場の対処能力を低下させる恐れがあるという判断によるもの」だとし、尹大統領が一晩中豪雨被害状況をリアルタイムで報告を受けて、対応策を指示しており、問題にならないと主張しているが、野党は「大統領室」の移転が引き起こす国政空白のリスクが今回の豪雨で現実化したと批判した。

 大統領室は9日午前、尹大統領が前日夜から同日未明にかけて、瑞草洞の自宅で、ハン・ドクス首相やイ・サンミン行政安全部長官、ソウル市のオ・セフン市長らからリアルタイムで被害状況に関する電話報告を受け、対策作りを指示したことを明らかにした。尹大統領の自宅近くの道路が浸水し、移動が自由でない状況を考慮し、自宅に留まったが、リアルタイムで必要な措置はすべて講じたという説明だ。

 野党では「何が何でも大統領室と官邸を移すという大統領の頑固さが招いた惨事」(共に民主党のチョ・オソプ報道官)という批判が相次いだ。新しい大統領官邸として使われるソウル漢南洞(ハンナムドン)の外交部長官公館は大統領室から5分の距離だが、梅雨などで改装工事が遅れている。新しい官邸が完成する前に、全国各市郡区とリアルタイムでつながる危機管理センターのある青瓦台を捨てて龍山(ヨンサン)に大統領室を移したため、尹大統領が直ちに危機管理センターに駆けつけず、適時に必要な対処が行われなかったという指摘だ。文在寅(ムン・ジェイン)政権で国政状況室長を務めたユン・ゴニョン議員は同日、フェイスブックに載せた文で「ちゃんとした危機管理センターがあるのになぜマンションで状況管理をするのか」として、「龍山に大統領室を移転しても国政には空白がないと断言したが、これでも空白がないといえるのか。深刻な国家危機状況が起きていたらどうなっていたか、考えるだけでぞっとする」と批判した。正義党のイェ・ユンヘ副報道担当も会見で「コントロールタワーの機能が完備されていた青瓦台を離れる時、龍山に行っても国家安全保障には何の問題もなく対処できると言っていたが、いざ災害級の豪雨が降ると、自宅の電話で業務指示をする大統領を、どの国民が信頼できるだろうか」と指摘した。

 与党の国民の力は民主党のこのような批判を「政治攻勢」だと反発したが、危機対応のスピードと内容の面で「国民を不安にさせたのは残念だ」(指導部関係者)という指摘も少なくなかった。首都圏集中豪雨状況と関連して、尹大統領の直接指示事項が初めて伝えられたのが前日午後11時54分頃だったが、内容の面でも、危機に対処しなければならない「行政機関および公共機関は状況に合わせて出勤時間の調整を積極的に施行せよ」と言った点が適切ではなかったというものだ。

 大統領室側では、尹大統領の「自宅の電話で指示」が行われたのは「大統領が現場や状況室に移動すれば、対処スタッフが報告や儀典に気を使わなければならず、対処能力を低下させる恐れがあると判断」したことによるものだとし、積極的に釈明に乗り出した。大統領室の高官は同日、記者団に5月20日に作成された内部マニュアルを公開し、「大統領室国政状況室や行政安全部、消防庁、山林庁などの関係者会議で、災害発生時に大統領室が直接初期から指揮を執った場合、現場でかなりの混乱が発生しかねないため、関係機関が積極的に対処、対応できるよう指示し、現場はある程度状況が落ち着いてから行く方が良いという原則を定めている」と説明した。

 特に大統領執務室の移転にともなう予見された惨事という野党の批判に対しては「災難状況まで政争の道具化しようとしている」と反論した。カン・インソン大統領室報道官は同日の書面ブリーフィングで、「大統領執務室の移転を政治的に攻撃するために虚偽の事実を主張するのは、野党第1党として国民の苦しみに背を向けた無責任な態度だ」と非難した。

キム・ミナ、チョ・ユニョン、オ・ヨンソ記者(お問い合わせ japan@hani.co.kr)
https://www.hani.co.kr/arti/politics/politics_general/1054128.html韓国語原文入力: 2022-08-10 02:42
訳H.J

関連記事