8日午後8時ごろから仁川(インチョン)南部~ソウル南部~京畿道~江原道を横切る狭い降水帯が記録的豪雨を降らせ、各所で浸水と停電、漏水などの被害が発生した。特に、ソウルの江南(カンナム)地域などの低地帯では道路や地下鉄駅のいたるところが大人の腰の高さまで雨水が溜まり、帰宅路の大問題につながった。ソウル25自治区のうち、一時は最大11区で土砂崩れ警報・注意報が発令されるなど、緊迫した状況が明け方まで続いた。
気象庁はこの日のソウルの1時間あたりの降水量は119ミリ(午後11時現在)だったと発表した。気象庁のある銅雀区(トンジャクク)には380ミリの雨が降った。これはソウル(松月洞の観測所基準)の一日降水量の史上最高値である1920年8月2日の354.7ミリよりも多い数値だ。銅雀区では午後8~9時の1時間あたりの降水量が136.5ミリにのぼった。一日の降水量は、京畿道光明市(クァンミョンシ)で316.5ミリ、仁川市富平区(プピョング)で242.5ミリ、京畿道富川市(プチョンシ)で242ミリ、江原道鉄原市東松(チョルウォンシ・トンソン)で158ミリを記録した。気象庁は「停滞前線が中部地方を中心に南北に行き来し、南北の幅が狭く東西に長い雨雲が流入する地域で雷や稲妻を伴う時間当り50~80ミリ以上の非常に強い雨が降った」と述べた。
特にソウル南部と江南地域では、夜中の都市麻痺状態に準ずる状況が随所で起こった。ソウル市は夜10時12分から潜水橋の両方向車両と歩行者の通行を規制した。集中豪雨で上流の八堂(パルタン)ダムの放流量が増え、水位が規制基準の6.2メートルに達したためだ。ソウル市交通情報課は午後9時29分、江南区テヘラン路(三成(サムソン)駅-ポスコ交差点)の両方面の下位4車道が浸水し、全面規制されたと明らかにした。この日の午後8時ごろ、ソウル江南駅一帯では下水の逆流現象が発生し、道路と車道が浸水した。京釜高速道路ソウル方向の瑞草(ソチョ)~盤浦(パンポ)区間も午後9時ごろから下位3~4車道が浸水し、1車道だけ通行が行われた。午後6時30分からは東部幹線道路の全区間(水落地下車道~聖水JC)も規制された。ソウルと京畿北部地域の集中豪雨で中浪川(チュンナンチョン)の水位が上昇したためだ。その他にも南部循環路、良才大路(ヤンジェデロ)、汝矣大方路(ヨイデバンノ)の一部区間も全面規制された。午後9時ごろ、江南高速バスターミナル内の商店が浸水し、三成洞のCOEXでも漏水が発生した。江南・瑞草一帯の建物では突然停電が起きたりもした。
地下鉄の運行もいたるところで止まった。地下鉄1号線の永登浦(ヨンドゥンポ)駅が浸水し、1号線の下りの運行が全面見合わせ。京仁線の梧柳洞(オリュドン)駅、1号線の衿川区庁(クムチョングチョン)駅などでも信号障害や列車の遅延が発生した。地下鉄7号線の梨水(イス)駅でも汚水が流入して水浸しになり、無停車通過措置が下された。ホームの天井パネルの一部が雨水の重さに耐えきれず落ちるという危険な状況も起きた。地下鉄9号線の銅雀(トンジャク)駅も閉鎖された。
SNSにはこの日夜遅くまで、ソウルの三成、瑞草、舎堂(サダン)、梨水などの道路と裏道、地下鉄駅の浸水情報を知らせる動画と写真などが「#地下鉄浸水」などのハッシュタグとともに集中的に上がった。帰宅できず浸水した道路で足止めされたケースが多かった。瑞草洞に職場があるチョン・ソンホさん(45)は、午後10時頃、脛まで上がってきた雨水のため退社できず、事務所にとどまった。チョンさんは知人たちと浸水の様子を撮った写真と動画をシェアした。チョンさんは「まるで災害映画のようだ」と話した。城北区(ソンブクク)に住むKさん(55)は、高速ターミナル駅近くの道路が急に浸水し、身動きが取れない状況になった。Kさんは「明日出社しなきゃならないのに家にも帰れずにいる」と語った。結局帰宅方法が見つからず、急いで宿泊施設を探すケースもあった。Lさん(34)は「江南駅近くで動けず、アプリで近くの宿を予約した」と話した。車に閉じ込められた市民もいた。銅雀から舎堂に帰宅中だった20代の運転者は、車が浸水し、道路にそのまま停車していなければならなかった。この運転者は「反対車線には持ち主が置いていった乗用車が浮いている」と語った。
河川の氾濫・土砂崩れの警報が発令され、住民たちが避難する所もあった。ソウル市の冠岳区(クァナクク)は、夜まで続いた豪雨で道林川(トリムチョン)が氾濫しているとして避難勧告を出した。冠岳区災害安全対策本部は同日午後9時26分、「低地帯の住民は迅速に安全な場所に避難してほしい」と呼びかけた。冠岳区は午後11時ごろ、「土砂崩れの危険がある」として一部地域に避難命令を下した。ソウル地域に集中豪雨が続き被害が相次ぐと、帰宅していたオ・セフン市長は午後9時55分ごろにソウル市庁に復帰し、被害状況を調べた。
仁川市では昼間に1時時間あたり80ミリを越える大雨が降り、道路と在来市場が浸水し、国鉄京仁線の列車の運行が一部遅延した。桂陽区鵲田洞(ケヤング・チャクチョンドン)のトンネルと弥鄒忽区(ミチュホルグ)の京仁高速道路の終点の地下車道は、この日午後12時30分ごろからしばらく車の通行が規制された。弥鄒忽区道禾洞(トファドン)の第一市場には泥水が流れ込んで店が浸水し、中区中山洞(チュング・チュンサンドン)では一部の住宅と道路が雨水に浸かった。
人命被害も相次いだ。中央災害安全対策本部は同日午後6時50分、ソウル銅雀区で倒れた街路樹を片付けていた作業員が感電死(推定)したと発表した。午後12時ごろ、京畿道始興市新川洞(シフンシ・シンチョンドン)のオフィステル新築工事現場でも野外で電気作業をしていた50代の中国人作業員が感電して死亡する事故が発生した。午後5時56分、ソウル中区の薬水(ヤクス)駅近くの工事現場では鉄製のフェンスが倒れ、通行人1人が負傷した。