尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領の支持率が30%前半まで落ち込んだことを受け、大統領室と与党内外が支持率回復の切り札探しに腐心している。発足70日を過ぎたばかりの新政権の支持率が「30%初・中盤」まで下がったのは、保守支持層の離脱が始まったことを意味するためだ。
22日に発表された韓国ギャラップの世論調査結果(全国成人1000人対象、信頼水準95%、標本誤差±3.1ポイント)によれば、尹大統領の職務遂行を「評価する」という回答は32%に止まった。一方「評価しない」という回答は7ポイントも上がり60%を記録した。
特に、先週まで全国で唯一支持が優勢(支持53%・不支持31%)だった大邱(テグ)・慶尚北道地域でも不支持(50%)が大きく増え、支持(45%)を上回った。与党ではこのような数値を、保守派の票田でも国民感情が離れ始めていることを示す深刻なシグナルだと判断している。
国政遂行の動力が落ちた危機的な状況の中で、来月17日に就任100日を迎えるのは、尹錫悦大統領にとってかなりの負担になる。与党内部では9月の通常国会と秋夕(チュソク、陰暦8月15日の節句)、10月の国政監査シーズンを控え、できるだけ支持率を引き上げておくべきという声が上がっている。大統領室関係者は本紙に「『このまま行けば支持率が20%台に下がりかねない』という懸念が強まっている。大統領は『一生懸命やるしかない』と言うが、参謀たちは支持率持ち直しのためなら何でもしなければならない状況だ」と述べた。大統領室首席と長官が慌ててマスコミとの接触を増やしているのは、このような危機感と無関係ではない。
これまでの政権は人事と外交カードで局面の転換を図ってきた。
2012年8月、任期末の李明博(イ・ミョンバク)元大統領の国政支持率は「貯蓄銀行ゲート」で17%(韓国ギャラップ基準)まで下がり、底を打った。李元大統領は同年8月10日、予告なく独島(ドクト)を訪問した。即興的な独島訪問で日本と対立することで、支持層の結集を図ったのだ。韓日関係が急速に悪化する状況の中で、李大統領の支持率は訪問4週間後に28%に上昇した。しかし、李元大統領の独島訪問は、外交を局面の転換のテコに活用したと批判された。
文在寅(ムン・ジェイン)大統領府は、大統領府参謀陣の改編を通じて局面の転換を図ろうとした。2020年12月、不動産の失政のせいで支持率が急落したことを受け、文前大統領はノ・ヨンミン秘書室長とキム・ジョンホ民情首席などの辞意を一日で受理した。
しかし、尹大統領には切り札があまり見当たらない。大統領府参謀や長官は任命から3カ月も経っていない。外交的にも韓米同盟強化という従来の基調のほかには動きの幅が狭い。韓日関係は安倍晋三元首相の銃撃死亡後、日本の強硬保守ムードが強まり、解決がさらに難しくなった。北朝鮮問題も政府と与党が北朝鮮漁師送還事件を争点化しており、硬直が続く可能性が高い。
一部では光復節特別赦免を切り札に挙げている。しかし、李明博元大統領やサムスン電子のイ・ジェヨン副会長らの赦免が行われた場合、支持率に悪影響を及ぼすだろうというのが大方の見通しだ。
このため、支持率回復に向けた切り札よりも、国政運営に対する尹大統領の態度が根本的に変わらなければならないという指摘もある。政治評論家のパク・サンビョン氏は「支持率下落の原因としては、大統領の『メッセージリスク』や新政権に対する信頼不足などが挙げられる」とし、「まずその原因をなくさなければならない。メッセージを変え、政府の信頼を高める方向に転換してこそ、比較的弱い支持層である合理的保守層や中道層、若い支持層などが戻ってくるだろう」と指摘した。