ロシア軍の集中攻撃を受けているウクライナ東部のルハンシク州セベロドネツクの化学工場に民間人800人余りが閉じ込められており、マリウポリの製鉄所封鎖事態と似たような惨事が再燃するのではという懸念が高まっている。
ロイター通信などの報道によると、ルハンシク州のセルヒ・ガイダイ知事は11日(現地時間)、ロシア軍がセベロドネツク市内の工業地域にあるアゾト化学工場を攻撃し、工場が大火事が起きたと明らかにした。ガイダイ知事は工場から大量の油が流出し、火災が発生したと説明した。同知事は「ロシア軍の砲撃が続き、避難所として使われている建物が一つずつ破壊されている」と述べた。同通信はウクライナ当局の発表を引用し、工場には従業員約200人と住民約600人など計800人余りの民間人が避難していると報じた。
このため、東南部の港町マリウポリのアゾフスタリ製鉄所で民間人と兵士が長期間閉じ込められ、集中攻撃を受けたことと似たような事態が懸念されている。同製鉄所に閉じ込められていた民間人数百人は、5月初めに国連などのサポートを受けて脱出し、5月中旬には抵抗していた兵士も全員降伏した。
分離主義独立勢力の「ルガンスク人民共和国」は、セベロドネツクの都市のほぼ全体を掌握し、化学工場を包囲したと主張した。ルガンスク人民共和国のミロスニク代表は同日夜、ソーシャルメディアを通じて、一部の住民が化学工場を抜け出し、ウクライナ軍が民間人を人質に取っていると主張した。さらに、工場内には300~400人のウクライナ兵士がいると推定し、兵士たちが武器を捨てて降伏すれば出てくることを認める方針を示した。だが、ガイダイ知事はソーシャルメディアを通じて「アゾト化学工場が封鎖されたという主張は嘘」だとし、「我が兵士は依然として都市内の工業地域を守っている」と主張した。
ウクライナ軍が統制しているドネツク州のアウディーイウカでも、ロシア軍の攻撃で化学工場で大きな爆発が起きたと、ロシアの「RIAノーボスチ通信」が同日付で報道した。この都市はドネツク州ロシア系分離主義勢力が掌握しているドネツク市の北側の近隣都市だ。
ロシア軍は東部の戦闘地域で精度の低い対艦ミサイルを利用して攻撃を繰り広げており、大きな被害が懸念されると、AP通信が同日報じた。英国防省は、ロシアの爆撃機が1960年代に開発された対艦ミサイル「Kh-p22」を使用しているものとみられると指摘した。このミサイルは核弾頭を搭載し、空母などを攻撃するために開発された。英国防省はこのミサイルを地上攻撃に使用した場合「精度が非常に低く、深刻な付随的被害をもたらす恐れがある」と指摘した。ロシア軍がこのミサイルを使用するのは、もっと精密なミサイルの不足のためだと英国防省は分析した。
ガイダイ知事は、ロシア軍がルハンシクへの攻撃に火炎放射器も動員していると主張した。同知事はソーシャルメディアへの書き込みで「夜になるとロシア軍が火炎放射ロケットを使用し、多くの家が燃えている」とし、ルハンシク州東端のロシアとの国境にある町ビリヒウカで特に大きな被害が発生したと伝えた。
「インテルファクス通信」の同日付の報道によると、ウクライナ南部のザポリージャを掌握したロシアは、この地域の穀物を確保して販売する会社を設立したという。現地臨時政府代表のエフゲニー・バリツキー氏は、新しく設立した国営会社がいくつかの穀物施設を統制しているとし、「この穀物はロシアの所有であり、誰がこの穀物を購入するかは気を払わない」と述べた。バリツキー代表は穀物生産者から穀物を強制的に徴発したり、穀物販売を強要したりはしないと明らかにしたが、農民が穀物の価格を受け取っているかは不確実だとAPが伝えた。
「RIAノーボスチ通信」は、ロシア軍が占領した南部ヘルソン州で、当局が住民にロシアのパスポート発給を始め、州知事など23人の住民がパスポートを受け取ったと伝えた。ヘルソン州はロシアが2014年に強制併合したクリミア半島に近い黒海沿岸に位置し、ロシア軍は住民投票などを通じてこの地域もロシアに併合する動きをみせている。