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ロシア「戦犯を調査」…マリウポリの製鉄所から降伏した兵士の処理、新たな火種

登録:2022-05-19 09:38 修正:2022-05-19 10:01
ロシア、アゾフ大隊に向けて「ナチスは捕虜交換できない」 
ウクライナでは「英雄たちを故郷に戻す」 
「ブチャ虐殺」などにより感情悪化の状態で 
ロシアが捕虜を過酷に処罰すれば対立が増幅
ウクライナ東南部のマリウポリの製鉄所でロシア軍に対抗していたウクライナ兵士たちが17日、製鉄所から出てロシア軍の統制地域に移動するバスに乗っている=オレニウカ/AP・聯合ニュース

 ウクライナ東南部のマリウポリの製鉄所で、80日以上ロシア軍の攻撃に立ち向かった末に降伏したウクライナ兵たちの処理問題が、両国間の新たな争点として浮上している。ロシアはこの戦闘を主導した「アゾフ特殊作戦分遣隊」(通称「アゾフ大隊」)に対する「処罰」を推進中だが、ウクライナは捕虜交換による「返還」を主張しており、これをめぐる衝突は避けられないものとみられる。

 ロシア政府は18日、マリウポリのアゾフスタリ製鉄所に立てこもっていたウクライナ兵士959人が「武器を捨てて降伏した」と明らかにした。これに先立ち、ウクライナ国防部は17日未明、ソーシャルメディアを通じて「負傷兵53人を含む264人の兵士が製鉄所を離れた」と明らかにした。ハンナ・マリャル国防次官は、製鉄所内の兵士の安全が確保されるまでは何人が残っているのか公開しないと述べた。現在、捕まった兵士たちはロシア軍が統制している近隣地域のオレニウカとノボアゾフスクに分散して収容されている。

 ウクライナのイリーナ・ベレシチュク副首相は、負傷者の状態が安定すれば捕虜交換を試みるとし「彼らを取り戻す」との意志を示した。しかしクレムリン(ロシア大統領宮)の報道官は、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領が捕虜を国際基準に則って処理することを約束したと言及するにとどまった。

 ロシア官営「タス」通信はさらに一歩進み、「ロシア連邦捜査委員会」が製鉄所から出てきた兵士を対象に戦争犯罪疑惑などを調査する計画だと報じた。捜査委員会もソーシャルメディアを通じて「(ウクライナ東部の)ドンバス地域でウクライナ政権が犯した犯罪に対する調査の一部として、アゾフスタリ製鉄所で降伏した兵士を調査する」と明らかにした。委員会は兵士らの国籍、民間人を対象とした犯罪介入の有無などを調査し、この過程で確保された情報をロシアが自ら入手した犯罪事件の情報と照らし合わせることになる。

 ロシアのこのような動きは、ウクライナ内務省所属の軍事警察であるアゾフ大隊を狙ったものと推定される。彼らは2014年、ドンバス内戦で親ロシア勢力に対抗するために「ネオナチ」の極右勢力が結成した民兵隊から出発した。彼らは当時、マリウポリを親ロシア勢力から奪還するのに大きく貢献し、同年11月に内務省所属の正式な軍事警察組織として編成された。

 だが、正式組織になった後も民間人を虐待したという批判が続き、米国は2015年、彼らの極右性向を問題視して制裁を断行したが、翌年解除している。 国連人権高等弁務官事務所も2016年の報告書で、彼らが拷問や民間人略奪などの犯罪を犯したと指摘した。

 彼らを眺めるロシアの視線は非常に冷たい。ロシアのヴャチェスラフ・ヴォロージン下院議長は、製鉄所にいた兵士らの中には戦争犯罪者がいるとし、「ナチス犯罪者は捕虜交換の対象になってはならない」と主張した。レオニード・スルツキー下院外交委員長は、アゾフ大隊の隊員を「人間の仮面をかぶった獣」と呼び、処刑も主張したとロイター通信が伝えた。これに対抗して、ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は、アゾフスタリ製鉄所で戦った兵士たちを英雄と呼び、彼らが故郷に戻れるようにすると強調した。

 しかし、現在休戦交渉が中断された状況であるうえ、アゾフ大隊に対する評価があまりにも異なり、捕虜交換交渉の見通しは明るくない。ウクライナが「英雄」と呼ぶ人々をロシアが過酷に処罰すれば、「ブチャ虐殺」などで悪化した両者の感情の溝はますます深まる。ウクライナのメディア「ウクラインスカ・プラウダ」は、ロシア下院がいわゆる「ナチス犯罪者」を捕虜交換の対象から除外する決議案を18日に議論すると報じた。ロシア最高裁も26日、アゾフ大隊をテロ組織と規定するかに対する審理を始める。

シン・ギソプ先任記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr)
https://www.hani.co.kr/arti/international/europe/1043430.html韓国語原文入力:2022-05-19 02:39
訳C.M

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