2つの政府に分裂している中東のリビアで、周辺国の兵士やロシア人傭兵が横行し、強姦や拷問が行われ、移住民を奴隷にする事態まで発生しているとする国連の報告書が発表された。
AP通信は28日(現地時間)、専門家が作成して国連安全保障理事会(安保理)に提出したリビア状況報告書を入手したとし、これによると外国の兵士によってリビアの安全が深刻に脅かされていると報じた。専門家は報告書で、7つの武装集団が国際法とリビアの国内法を無視しており、敵対勢力に対して体系的な違法拘禁も行っていると指摘した。
同報告書は「特に移住民が深刻な人権抑圧を受けており、周期的に奴隷化、強姦、拷問の対象になっている」と指摘した。報告書は、南東部の砂漠地域タジルブと北西部の地中海に近いバニワリードにある秘密人身売買施設で、4人の移住民が極度の人権抑圧にさらされた例を具体的に公開したとAP通信は報じた。報告書によると、彼らは奴隷として捕らえられ、食事も提供されず殴られ、治療も受けられていない。報告書はまた、政府が運営するシャラアルジャウィヤの難民センターの警備隊員たちが、昨年1月から6月にかけて、抑留されていた女性や少女たちに対する強姦などに直接加担したり性搾取に目をつぶったりしたと指摘した。
リビアは2011年にカダフィ政権が崩壊して以降、国が2つに分裂している。首都トリポリを中心とした西部は国連の支援を受ける政府が支配しており、東部はハリファ・ハフタル将軍率いる「リビア国民軍」勢力が掌握している。両者は2020年10月に休戦協定を結び、選挙によって暫定政府を樹立することで合意したが、この合意が崩れたことで再び対立している。国連の専門家たちは、休戦協定にはすべての外国兵を迅速に撤退させるとする内容もあるが、「大規模な撤退が行われたという証拠は見出せない」と指摘した。
報告書は、チャドの反政府勢力がリビアで活動しており、ハフタル陣営が募集したスーダン出身の戦士、ハフタルと連携したシリアの兵士とロシアの傭兵企業ワグナーグループも活動していると明らかにした。またトリポリの政府所属の軍部隊でも、トルコに支援されたシリア兵が目撃されたと付け加えた。
報告書は、中北部の地中海沿岸の戦略の要衝であるスルトで活動しているワグナーグループの傭兵の動きと、彼らの作戦に使われる兵器の流入状況を追跡し続けていると述べた。ロシア政府はワグナーグループとの関係を否定しているが、国連は同グループの実質的な所有者をプーチン大統領の側近であるエフゲニー・プリゴジン氏であるとみている。
報告書は、ワグナーグループが掌握しているトリポリ南部地域には警告表示もなしに対戦車地雷が再び埋設されているため、住民の安全が脅かされており、これは国際法違反だと指摘した。