半導体は「経済-技術同盟」を強化するという韓米首脳会談の主要議題のキーワードと言える。米中競争で覇権を守るためにグローバル・サプライチェーンを再編しようとする米国が最も力を注ぐ重要な分野でもある。両国の首脳が最初の日程でサムスン電子の半導体工場を一緒に訪れるのもそのためだ。
尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領とジョー・バイデン米大統領は、サムスン電子のイ・ジェヨン副会長の案内で、次世代の超微細工程や試作品などを視察した。バイデン大統領の立場としては、サムスン電子がテキサスに追加で建設することにした半導体工場をあらかじめ視察したということだ。 尹大統領は工場視察後の共同演説で「半導体は未来に責任を負う国家安保資産」だとし「韓米関係が先端技術とサプライチェーン協力に基づいた経済安保同盟に生まれ変わることを希望する」と述べた。これに対しバイデン大統領は「半導体のサプライチェーンの安全性と信頼性、敏しょう性が必要な時」だとして「我々と価値を共有しない国々に依存しない韓米間技術同盟を発展させよう」と肯定的に答えた。
米国中心の半導体サプライチェーン再編は避けられない選択であり、積極的な機会にしなければならないというのが、半導体業界と専門家たちの大方の見解だ。サムスン電子とSKハイニックスは、メモリー半導体で世界市場の70%を占めるが、核心チップである非メモリー半導体では後発走者だ。非メモリー半導体の設計(ファブレス)はインテル、アップル、クアルコム、NVIDIAなどが主導し、生産(ファウンドリ)は台湾のTSMCが絶対強者だ。市場調査機関のトレンドポスによれば、ファウンドリ市場のシェアはTSMCが53%、サムスン電子が18%。付加価値の高い10ナノメートル(nm)以下の超微細工程(1ナノメートルは10億分の1メートル)ではシェアの差がさらに広がる。
サムスン電子は、2030年に非メモリー半導体シェア1位を目標に、3年前から171兆ウォン(約17兆円)にのぼる大規模な投資に出ているが、差を縮められずにいる。アップルやインテルなど米国企業の90%は、純粋に設計どおり半導体を生産し納品するTSMCに発注する。超微細工程の技術と生産性(収率)水準も重要だが、スマートフォンや通信機器などの競争製品を生産するサムスン電子との取引を敬遠されていることが、サムスンのファウンドリ事業の構造的な限界だ。韓国半導体産業協会の関係者は、「米国は半導体顧客会社をはじめ、基礎固有技術と主要な素材・装備などすべてのインフラを備えた世界最大の市場。半導体の協力で米国政府のインセンティブと支援がなされるならば、ファウンドリ競争で力になるだろう」と話した。
米国は、新型コロナウイルス感染症の大流行で昨年から車向け半導体の需給に支障が出ており、半導体サプライチェーンの再編に積極的に乗り出している。バイデン大統領は「半導体が米国の労働者の雇用を脅かしている」とし、今後5年間で半導体分野に520億ドルを支援する予算案を出した。米国政府は「戦略物資」である半導体の生産を地政学的リスクが大きい台湾企業に依存している現在のサプライチェーンは、経済と安保に相当なリスク要因だとみている。米国内により多くの生産基地を作り、リスクを分散して対応力を強化しようというのが、サプライチェーン再編の主な目標だ。さらに、人工知能(AI)、航空宇宙、電気自動車、次世代通信など未来産業の主導権を左右する先端半導体を、中国が狙うことのできない最終兵器にし、覇権競争の絶対優位を維持するという戦略だ。
米国政府の強力な「半導体ドライブ」以降、インテルはファウンドリに再進出しオハイオなどに生産ラインを作ることにしており、サムスン電子はテキサスに第2工場を、TSMCはアリゾナなど6カ所にファウンドリ工場をそれぞれ作る予定だ。