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[寄稿]慰安婦問題は被害女性の人権問題

登録:2022-05-02 02:32 修正:2022-05-02 08:17
尹錫悦次期大統領の派遣した「韓日政策協議代表団」は、先月26日午前に日本の首相官邸で岸田文雄首相と会い、尹次期大統領の親書を手渡した=韓日政策協議代表団提供//ハンギョレ新聞社

 私は、尹錫悦(ユン・ソクヨル)候補が大統領に当選したら、日本との外交において、慰安婦制度は性奴隷制度ではないと主張してきた日本政府の主張を受け入れるのではないかと懸念してきた。果たして、尹政権はまだ発足してもいないのに、パク・チン外交部長官候補が記者団に対して2015年の「韓日慰安婦合意案」を認めたという報道に接し、(「毎日新聞」2022年4月20日)、懸念が現実のものになったようで心配が先に立つ。

 2015年末に朴槿恵(パク・クネ)政権と安倍晋三政権が共同でまとめた「慰安婦合意」には、日本政府が「慰安婦の方々の名誉と尊厳の回復および心の傷の治癒のための事業を行う」ために10億円を提供すれば、韓国政府が和解・癒やし財団を設立して慰安婦被害者に支援金を支給するとの内容がある。韓国政府が日本大使館前の少女像問題を適切に解決し、両国政府が国際舞台でこの問題に関してこれ以上の相互非難や批判を控えるとも約束された。朴槿恵と安倍は、この合意で慰安婦問題は「最終的かつ不可逆的に解決された」と宣言した。

 朴槿恵政権のこのような合意は、韓国挺身隊問題対策協議会(挺対協、現正義記憶連帯)が25年間、国際舞台で闘って得た「日本軍慰安婦制度は性奴隷制度だった」という広範な認識を政府が破壊するものだった。また、問題解決に向けて日本政府に7つの事項を満たすよう求めた国際人権機関の決議にも反する決定だった。

 国連人権委員会と「日本軍性奴隷戦犯女性国際法廷」などの国際人権機関は、日本政府に次のような事項を求める決議を発表している。第1に慰安婦問題の真相を究明すること。第2に慰安婦制度は性奴隷制度であったということを認めること。第3に慰安婦被害者を苦しめたことを心から謝罪すること。第4に被害者たちに賠償すること。第5に慰安婦制度の責任者を処罰すること。第6に日本軍性奴隷制度を日本の歴史教科書に記載し、日本の学生たちに教えること。第7に慰安婦追悼碑を日本に建てること。これらによって二度とこのような罪を犯さないようにしなければならないとする内容だ。

 2015年の慰安婦合意は、7つの要求事項をひとつも満たしていない。日本政府の形式上の謝罪は含まれているが、軍慰安婦制度が性奴隷制度だったことを認めていないため、真の謝罪とは言えない。当時、かなりの数の生存被害者が10万ドル近い補償金を受け取ったが、これは日本政府が慰安婦被害女性たちに直に提供したものではなかった。公式な賠償金ではなく、人道的な支援金だというのだ。

 朴槿恵政権が慰安婦被害者、被害支援団体に何の相談もなく、一方的に日本政府と話し合い、合意したという手続き的な問題も深刻だった。

 幸い、文在寅政権は発足当初から2015年合意の問題点を指摘し、日本政府に対して受け入れられないと表明した。そのため韓日関係は冷え込んだが、慰安婦制度は性奴隷制度ではなかったと歪曲してきた日本政府は、歴史的なくびきを負い続けなければならなかった。

 しかし尹錫悦政権が2015年の合意を改めて認めたら、慰安婦制度は性奴隷制度だったとの広範な認識を再び無効にすることになる。それはまた、韓国の慰安婦被害者は金儲けのために志願した売春婦だという日本の右翼の主張を認めることになり、政府が韓国の慰安婦被害者を侮辱するかたちになる。

 個人同士であれ国家同士であれ、不幸な歴史があれば、そのもつれは解いて和解することが重要だ。特に韓国と日本は歴史的にも、地理的にも互いに切り放すことのできない近い隣人だ。しかし和解のためには、加害者が過去の過ちを認めて心を込めて謝罪することを優先しなければならない。韓日関係の改善も、日本政府が過去の歴史的過ちを認めて謝罪することが前提条件とならなければならない。国際法も、加害者が過ちを認めることと真の謝罪を和解の最も重要な前提条件としている。しかし不幸にも日本政府は、これまで過去の歴史的犯罪を無視したまま、外交的手段と経済的圧力によってこの問題を解決しようとしてきた。

 慰安婦問題は韓日の外交問題ではなく、アジアの被害女性の人権問題だ。尹錫悦政権はこのことを肝に銘じ、慰安婦問題に慎重にアプローチしてほしい。

//ハンギョレ新聞社

ミン・ビョンガプ|ニューヨーク市立大学クイーンズカレッジ社会学科碩座教授 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )

https://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/1041097.html韓国語原文入力:2022-05-01 16:14
訳D.K

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