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[コラム]「あり得ない、韓国が本当にそうなのか?」

登録:2022-03-29 05:59 修正:2022-04-06 10:44
尹錫悦次期大統領の配偶者、キム・ゴンヒ氏=共同取材写真//ハンギョレ新聞社

 保守政府が発足したからといって、女性の暮らしが突然墜落するわけではない。与党候補が当選したとしても、違法中絶薬を飲んで早産した赤ちゃんが放置され、消える事件は発生しただろう。堕胎罪に憲法不合致の判断が下されたにもかかわらず、3年間後続立法が行われず、中絶薬の流通すら許されないこの国で、赤ちゃんを殺した20代女性一人が矢面に立たされている。

 韓国社会は、いずれにせよ全般的に発展してきた。ここ2~3年で高まった国の地位は、以前に海外に行ったことのある人にとってはまるで他国の話のように聞こえるかもしれない。建築家のマレーシアの知人と近況を聞き合った際、韓国では5人に1人が新型コロナに感染しているという状況を伝えたところ、彼が驚いて聞き返した。「まさか、あり得ない。韓国が本当にそうなのか?」

 韓国が国際社会から受ける無残な成績は別にある。女性家族部が「女性家族部廃止」の公約よりも恐れる、そのために朴槿恵(パク・クネ)政権が作業部会を作って目標スコアまで立てた、とにかく多数の男性は信じようとしない珍しい数値。世界経済フォーラム(WEF)が毎年発表する「ジェンダーギャップ指数」(Gender Gap Index)だ。経済、政治、教育、健康部門別の男性の機会や地位を1とし、女性の相対的なレベルを計量して、国家内のジェンダー差別を示すものだ。豊かな国でも、あらゆる部門を男性が独占しているなら0点、貧しい国でも男女の働きが均等なら、1点満点だ。だからこそ、点数には表情がある。男女が共に幸せなら嬉しい1点、共に不幸ならば悲しい1点というか。

 コロナ禍の1年を送った2021年3月に発表された韓国の「ジェンダーギャップ指数」は0.687で、156カ国中102位だった。男性が享受する機会—先進国になったのだから幸せとしようーの68.7%だけが女性に与えられているという話だ。スコア事態はこれまで上がり続けてきた。ただし、最初に発表された2006年が92位、李明博(イ・ミョンバク)政権後の2012年は109位、朴槿恵政権後の2017年は118位にとどまったのだから、他の国々のジェンダー格差が韓国よりもう少し解消されたというべきかもしれない。

 韓国が最も脆弱な「科目」は経済部門だ。男女の労働参加や賃金格差、高級公務員や大企業役員の実態などが合算される。特に高級公務員や大企業の役員に関するスコアは十数年、変わらず下位グループ(2021年値134位)だ。

 韓国はこれ程まで遅れた国なのか。いいえと答えるデータは多い。米国研究機関「ソーシャル・プログレス・インペラティブ(SPI)」が毎年発表する社会進歩指数もその一つだ。基本的な欲求やウェルビーイング、機会の部門の50余りの指標値を総合する。昨年、韓国は世界17位だった。168カ国で韓国を上回ったのは、欧州の一部と日本、オーストラリア、ニュージーランドだけだ。英国、フランス、スペイン、イタリア、米国、経済強小国シンガポールより韓国が優れていると、「ソーシャル・プログレス・インペラティブ」は言う。

 17位の韓国が、80位以下にまで下がった指標は3つだ。(悪名高い)粒子状物質(=大気汚染、96位)のほか、政治権力におけるジェンダー平等(102位)、高等教育修了におけるジェンダー平等(106位)。

 17位の韓国の若者発展指数(15~24歳対象、SPIの別途報告書)によると、22位(163カ国中)に下がる。英国、フランス、スペイン、シンガポールとは上下が変わり、その間に東欧国家も含まれる。80位外の指標も6種類に増え、格差はさらに広がる。政治権力におけるジェンダー平等(96位)、議会における若者の比率(104位)、自由な人生決定(113位)、空気質への満足度(115位)、高等教育修了におけるジェンダー平等(117位)、交友関係の機会(138位)。

 これらの3つの指数が意味するものを要約するとこうなる。韓国人の平均的な生活の水準、それに反映されるいわゆる先進国としての地位は、女性、特に未来の女性世代の機会を犠牲にして構築されている。

 統計には個人のあり方や事情が現れない。大統領選挙が終わった後、午前3時半に「あまりにおぞましい」というショートメールを送ってきた20代女性の気持ちも反映されない。尹錫悦(ユン・ソクヨル)次期大統領のジェンダー公約が、もしも何らかの平均値に基づくものなら、ジェンダー平等特化省庁や政策の必要性もその平均値から求められるし、もっと多くの必要なものがその隠されたディテール、それぞれの事情ごとにあるだろう。

 何が何でも女性家族部を、女性割り当て制を廃止するという政権でも、やがて国民によって成績がつけられる。直接選挙制以来、陰で夫を支えるという役割ばかりだった50~60代大統領の妻たちと違って、初めて40代のキャリアウーマンをファーストレディーとして迎える2022年が、あまり話題にならない春を迎えている。

//ハンギョレ新聞社
イム・インテク|スペシャルコンテンツ部長(お問い合わせ japan@hani.co.kr)
https://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/1036557.html韓国語原文入力:2022-03-28 21:13
訳H.J

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