軍事専門家のキム・ジョンデ前正義党議員は、尹錫悦(ユン・ソクヨル)次期大統領の執務室がソウル龍山区(ヨンサング)の国防部庁舎に移転する可能性が取りざたされていることについて、「国防部は軍事基地」だとし「とうてい理解できない無知蒙昧な行い」と語った。
キム前議員はこの日午前、交通放送(TBS)ラジオの番組のインタビューで「国防部のあちこちに当たってみると、(移転は)ほぼ確定の通知を受けたような雰囲気だった」とし「尹錫悦陣営で安保政策を総括していたキム・ヨンヒョン元合同参謀本部作戦本部長(大統領府警護処長として名があがっている)が、3月に準備を開始し、4月までには建物を空けるよう指示したという」と語った。また同氏は、国防部内は「『青天の霹靂』でも、こんな青天の霹靂は初めてということだ。北朝鮮軍にやられたのではなく、味方にやられたという雰囲気だ」と述べた。
キム前議員は、大統領府の執務室を国防部庁舎に移す構想は「国防部庁舎の建物は空けて、(国防部は)その隣の合同参謀本部庁舎に行けということ」、「長官は合同参謀本部に移れるだろうが、国防部という大きな組織の諸政策部署は昔の防衛事業庁の建物や果川に移すという。このように全部ばらばらに分散させておくということ」と説明した。
同氏は、「国防部や合同参謀本部は有事に備え、国の安全の最後の砦、中枢として最適化されている」とし「例えば、北朝鮮が核兵器をソウルの上空60キロで爆発させれば、それが電磁波爆弾(EMP弾)になるが、それに対する防御施設の構築だけでほぼ1000億ウォン(約97億8000万円)かかっている。これをすべて空けろということ」と説明した。同氏はまた、「大統領府の危機管理センターにもテロ、自然災害、国家安保状況などを管理できるよう、多額の資金を投じてシステムが構築されているのに、すべてが無用の長物になる」とも指摘した。
キム前議員は「尹氏側は『合同参謀本部には地下バンカー、指揮統制本部があるが、そこが戦争を指揮する場所だ。より高度な危機管理ができる』と話しているが、そこは軍の指揮官たちが指揮する場所」とし「大統領が参謀や国の要人を引き連れて行っても、座る場所がない。狭い」とも批判した。さらに「国民の中に入っていくために国防部に移るというのは納得できない。これは安保非常事態だ」とし「国防部と合同参謀本部は軍事基地だ。大統領府より警備が厳しい場所なのに、そこに市民がどうして入れるのか。『市民の中の大統領』という趣旨にも合わない」と批判した。