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二年越しの日本の対韓国輸出規制の課題…最後の主要材料は「開発中」

登録:2022-01-03 06:11 修正:2022-01-03 06:50
極端紫外線(EUV)用フォトレジストは、日本の輸出規制の主要3大品目のうち、唯一国産化がまだ実現していない品目だ。これを開発する会社である東進セミケムのある社員が実験材料を確認している=ハンギョレ資料写真//ハンギョレ新聞社

 東進セミケムという会社の発安(パラン、京畿道華城市)工場を訪問したのは、去年の6月22日だった。日本が2019年7月に韓国に対する輸出規制強化の措置を取ってから2年を迎えようとする時だった。東進セミケムは、フォトレジストメーカーとしては国内の代表格といわれている。

 フォトレジスト(感光液)の中で最高級段階の「極端紫外線(EUV)用フォトレジスト」は日本の輸出規制の主要3大品目の中で唯一国産化に至っていない状態だった。今も状況は変わっていない。残り2品目の「高純度フッ化水素」(半導体とディスプレーのエッチング工程に欠かせないエッチングガス)と「フッ化ポリイミド」(折り畳みスマートフォンのモニターフィルム素材)は、輸出規制から2年に至る前に早くも国産化段階に入り、輸出規制の影響に対する懸念を吹き飛ばしたのとは全く違っていた。それだけ高難度の課題であることを反映し、日本の輸出規制による強固な壁の象徴として残っている。

3大輸出規制品目のうち、国産化されていない唯一の材料 
EUV用フォトレジスト開発、最終段階へ 
政治外交と関係なく起きた「尿素水事件」 
材料・部品・装備問題でサプライチェーンの緊張感高まる

半導体の主要材料は「まだ開発中」

 工場を訪問した当時、東進セミケムのキム・ジェヒョン副社長は「(EUV用フォトレジストの分野でも)材料の性能向上にかなりの進展があり、安定した品質確保のための準備も共に進めている」としながらも、「(完全な意味での国産化と考えられる)製品化と商業化の段階に至る時期は未定」と慎重な姿勢を見せた。性能改善に向けた努力とともに「昨日作ったものと今日作ったものが同じ性能と品質を持つか」などを繰り返しテストして決めると話した。

 その後6カ月ほど経った今、どれくらい進展しているのだろうか。

 キム副社長は本紙の電話取材に対し、「まだ『クオル』(品質認証)を受ける段階に至っておらず、(品質)評価中だ」と答えた。キム副社長は「サムスン電子だけでなく、SKハイニックスにもサンプル(見本)を送り、品質監査を受けており、拍車をかけている」と付け加えた。最終的な製品化、商業化の時期については、依然として「断言できない」段階だと語った。

 韓国のあるメディアが昨年12月に業界消息筋の話として「東進セミケムがEUVフォトレジストの信頼性試験でクオルを受けた」と報道したことについて、キム副社長は「本社の購入パートや研究所の方からも聞いたことのない話だ」とし、「事実ではない」と確認した。

 「クオル」は英単語(qualification)の略語で、量産工程に使用するのに適した品質、性能を備えたと認められたことを意味する。通常、半導体会社では新設備や部品、素材を使用する前に数段階の品質検査、製造工程の実査、試験適用および評価を行うが、これらの手続きを通過すれば「クオルを受けた」という。

 クオルを受けるまでの過程では、需要先である半導体会社側でも相当な費用と時間をかけなければならない。このため、量産への適用を目的としており、単純な評価のためのものではないと、キム副社長は説明した。「製品がこの段階に入ったということ(つまりクオルを受けたということ)は、目標どおり開発を完了し、量産工程に適用できるか検討する最終段階に来ているという意味」と話した。クオルを受けたことが商業化、製品化に至ったのと同じではなくても、国産化に到達したという意味であり、「事実上の量産段階」に入ったといえるという説明だった。

 日本の輸出規制後、よく取り上げられ、一般人にもよく知られているように、フォトレジストは半導体基板(シリコンウェハー)に回路の下絵を描くのに使われる物質だ。半導体の初工程の主要材料に挙げられる。光を浴びると反応する性質を帯びており、版画の陰刻、陽刻のように区分される模様を形成することができる。

 フォトレジストは使用する光の波長によってフッ化クリプトン(KrF-248ナノメートル)、フッ化アルゴン(ArF-193ナノメートル)、EUV(13.5ナノメートル)用に分けられる。広く知られている通り、回路線幅を意味する数字が小さいほど微細工程に有利だ。ナノメートルは10億分の1メートル。日本で規制対象に含めた戦略物資がまさにこのEUV用フォトレジストだった。

 東進セミケムは日本の輸出規制後、政府予算の支援を受ける国策事業で、従来の材料より性能を大幅に高めた「フッ化アルゴン用フォトレジスト」の開発までは成功したが、EUV用フォトレジストの開発には至っておらず、まだ進行形だ。

 東進セミケムによると、韓国国内のフォトレジスト市場は1兆4千億~1兆5千億ウォン規模。シェアは品目ごとに異なり、相対的に低いレベルのフッ化クリプトン用フォトレジスト市場では国産化率が30~40%に達する。そのほとんどを東進セミケムが占めている。フッ化アルゴン用以上の高いレベルのフォトレジスト市場では、東進セミケムのシェアが10%前後と把握されている。 日本のメーカーが80%ほど、米国のデュポンが残り10%の市場を分けている。

 半導体市場の巨大規模に比べ、フォトレジスト市場はそれほど大きくないといえるが、それでも半導体産業では欠かせない主要材料といわれている領域だ。市場が拡大を続けていることも重要だ。サムスン電子とSKハイニックスが進めている半導体設備の増設は、すなわちフォトレジスト市場の拡大を意味する。

「供給先を探し、国内生産基盤を整えるべき」

 日本の輸出規制の強化から2年間、韓国側の被害は当初の懸念とは裏腹にあまり大きくなかった。今や同事案をめぐる関心度や緊張感が低いと言っていいほどだ。韓国政府と企業の共同対応、大企業と中堅・中小企業間の連合戦線展開で、輸入先の多角化と国産化で一定の成果を収めた結果だ。

 ならば、多角化または内在化に向けた努力の意味は半減したのだろうか。

 忘れられたかのようだった材料・部品・装備問題に対する警戒心を再び呼び起こしたのは、中国に端を発した尿素水の品薄現象だった。日本の輸出規制よりも広く、根本的な課題を抱かせた事案だ。政治・外交的な問題がない状況でも、意外な領域で経済的な理由で地雷が爆発する可能性があることを示したからだ。「尿素水問題」で実感した通り、国民生活に及ぼす影響も大きい。

 産業通商資源部のチョン・ソクチン材料・部品・装備総括課長は「日本への輸出規制後、2~3年は大きな問題もなく乗り切ってきたが、国産化率の向上と輸入先の多角化は引き続き進めなければならない」とし、「(輸出規制3大品目を含む)主要品目を対象に、引き続き改善案を模索している」と述べた。チョン課長は「材料・部品・装備だけでなくサプライチェーン全般にわたって代替供給先を探し、やむを得ない場合は企業と協議して、国内に生産基盤を備える案も考えなければならない」と述べた。新年に入り、東進セミケムから朗報が聞こえてくれば、この努力の少なからぬ成果になるだろう。

キム・ヨンベ先任記者(お問い合わせ japan@hani.co.kr)
https://www.hani.co.kr/arti/economy/economy_general/1025584.html韓国語原文入力:2022-01-01 11:33
訳H.J

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