(1からの続き)
2つ目は、支持層の緩みです。
解冤という言葉があります。恨みを晴らすという意味です。全羅道が受けた地域差別の恨みは、1997年の金大中(キム・デジュン)大統領の当選である程度解消されました。2009年の盧武鉉(ノ・ムヒョン)大統領死去の恨みは、2017年の文在寅(ムン・ジェイン)大統領の当選、そして積弊清算捜査による李明博(イ・ミョンバク)、朴槿恵(パク・クネ)両大統領の拘束によってある程度解消されました。
一方、李明博・朴槿恵両大統領の熱心な支持層と保守既得権勢力の恨みは、これまで着実に溜まってきています。李明博・朴槿恵両大統領を刑務所に送った文在寅政権の検察総長を自分たちの大統領選候補に選ぶとは、どれほど復讐に目がくらんでいるかということです。
歴史は繰り返されるのでしょうか。2007年の大統領選挙では李明博候補とチョン・ドンヨン候補が競いました。10年間の政権担当で腹のふくれた民主党の支持層は、投票所に出向きませんでした。投票率は史上最低の63.0%にまで落ち込みました。両候補の得票率の差は実に22.53ポイントでした。
2009年の盧武鉉大統領死去の悲劇は、実はここから始まったのです。10年あまりが過ぎました。民主党の支持層は、あの時のことを再び忘れていっているようです。
3つ目は、文在寅政権の失敗です。
選挙とは、政治家と政党に権力を委任する手続きであると同時に、責任を問う手続きでもあります。政治で失敗すれば審判を受けるのは当然のことです。
2018年の地方選挙での圧勝後、文在寅大統領は大統領府の首席・補佐官会議で参謀たちに向かって「私たちが受けた高い支持は、一方では背筋がぞっとするほど恐ろしいもの」と述べ、「有能」、「道徳性」、「謙虚な態度」の3つを訴えました。
不動産政策の失敗で有能が崩れ落ちました。チョ・グク法務部長官事態などで道徳性が崩れ落ちました。釜を支えていた3つの石のうち2つが崩れれば、その釜で飯を炊くのは難しくなります。
イ・ジェミョン候補と民主党の直面する3つの難題は、政治工学や選挙技術では突破できないほど本質的なものです。今の危機は、だからこそ重症だということです。
揺れる地域連合と世代同盟
いずれにせよ、民主党の本質的な限界、支持層の弛み、文在寅政権の失政で、金大中-盧武鉉-文在寅政権が何とか積みあげてきた地域連合、世代同盟は動揺しています。忠清圏と釜山・蔚山・慶尚南道は、イ・ジェミョン候補よりもユン・ソクヨル候補に好意的です。20~30代の有権者は、イ・ジェミョン候補と民主党に心を許していません。
イ・ジェミョン候補と民主党の直面する危機の原因を指摘することと、来年の大統領選挙でユン・ソクヨル候補と国民の力が勝利すると予測することは、まったく別の次元の問題です。
選挙は最後の瞬間の熱情(passion)と流行(fashion)が勝敗を左右します。力量(ビルトゥ)と幸運(フォルトゥナ)が交差し、あらゆる調和を引き起こすところは、まさに政治の領域です。
1997年、2002年、2012年の大統領選挙は、投票前日まで勝敗が分かりませんでした。1996年、2000年、2012年、2016年、2020年の総選挙も同様でした。ここは「ダイナミックコリア」です。イ・ジェミョン候補と民主党は、この危機をどのように突破するのでしょうか。