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[コラム]「憎悪の政治」乗り越えた候補が勝つ

登録:2021-11-18 02:49 修正:2021-11-18 08:09
イメージ=ハンギョレ21//ハンギョレ新聞社

 先月、米国のピュー・リサーチ・センターは、世界の主要国を対象とした注目すべき世論調査リポートを発表した。「先進国の多様性と分裂」と題するこのリポートは、世界の主要国の国民の政治・社会対立についての認識を示してくれる。韓国は欧州や米国に比べ人種、宗教、都市と農村の対立が比較的少ないと一般には考えられている。調査結果はそうではない。このリポートを見れば、政治的には少々争うことがあっても、社会・文化的にはどの国よりも同質性が強いと韓国のことを考えていた信念は完全に崩れる。

 この世論調査によると、「互いに異なる政治勢力を支持するグループの間に、非常に強い、もしくは強い(政治的)対立があると思うか」という質問に対し、韓国と米国の回答者の90%が「そう思う」と答えた。この数値は17カ国の調査対象国の中で最も高い。そして大きく差を開いて台湾(69%)、フランス(65%)、イタリア(64%)と続く。さらに驚くべきことは、宗教・人種対立に対する見方だ。「異なる宗教を信じるグループの間には、非常に強い、または強い対立があると思うか」という項目に、韓国は61%が「そう思う」と答え、これも17カ国の中で最も高かった。キリスト教とイスラム教の対立がしばしば外国メディアによって伝えられるフランス(56%)や米国(49%)よりも高い数値だ。「異なる人種や民族的背景を持つグループの間には、非常に強い、または強い対立がある」という項目における1位は米国であった。昨年の黒人のジョージ・フロイドさん死亡事件で「黒人の生命は大切だ(Black lives matter)」という運動が野火のように広がった国だけに、米国民の71%が「人種対立は深刻だ」と答えた。イスラム移民問題で困難を抱えている欧州諸国でも、対立は深刻だとする回答は多かった。フランス64%、イタリア57%、ドイツ55%などだ。しかし韓国も「人種または民族の対立は深刻だ」という回答は57%で、欧州諸国に劣らない。一部の若者や保守グループで、外国人労働者や難民、中国同胞を嫌悪する雰囲気が強まっていることと関連があるものとみられる。

 ピュー・リサーチ・センターの調査のみを見ると、韓国はもはや「韓民族/一つの民族」ではない。世界のどこにも見られない団結力を持ち、金(きん)集め運動や自主的マスク着用で国家的危機を乗り越える姿は、この調査では存在しないかのように見える。

資料:ピュー・リサーチ・センター//ハンギョレ新聞社

 人種・宗教・地域などのあらゆる分野の対立を引っ張るのは、圧倒的に高い数値の表れている政治的対立だ。日増しに深刻化する政治対立と政治的両極化を緩和しなければ、韓国社会は一歩も前に進めない状況に至っているということを、この世論調査は明らかにしている。リポートに付けられた小見出しの一つは、「米国と韓国の政治対立が最も深刻だ」というものだ。大統領制を採っている両国の政治対立が先進国の中で最も激しいという調査結果は意味深長だ。全世界で大統領制をとっている国は多くない。その中でも米国と韓国は、大統領制が安定的に根づいている代表的な民主主義国家にあげられている。しかし、両国いずれも政治対立が非常に深刻化しているというのは、大統領制そのものが危機に直面しているというシグナルなのかも知れない。米国のジョー・バイデン大統領が就任して1年も経っていないのに、共和党はすでに2回も議会に大統領弾劾訴追案を提出している。ドナルド・トランプ前大統領時代の民主党による弾劾の推進に対する「政治的報復」だ。韓国も同じだ。党内予備選挙でユン・ソクヨル、ホン・ジュンピョ両候補は、公然と共に民主党のイ・ジェミョン候補の拘束に言及し、イ・ジェミョン候補は「拘束されるべきは私ではなく、ユン・ソクヨル候補」と真っ向から反論した。文在寅(ムン・ジェイン)政権の検察総長として「積弊清算」を指揮したユン・ソクヨル氏が、逆に野党の大統領候補に選出され、鋭い刃を政府与党に突き付けているという現実そのものが、「憎悪の政治」がどのような水準に達しているのかを示す端的な兆候だ。

 非好感大統領選挙、不安な選挙という言葉がよく聞かれる。しかし、対立と分裂に頼った得票戦が国民の支持を得ることは難しく、たとえ勝利したとしても非常に不安定にならざるを得ない。2007年に「ニューヨーク・タイムズ」のビル・ケラー編集長が、過酷な白人政権を許した南アフリカのネルソン・マンデラ元大統領に、次のような質問をぶつけた。「あなたを27年間も投獄し、数多くの黒人を迫害した白人政権を憎まないということが、どうやったらできるのですか」。マンデラ氏の答えはこうだった。「憎悪は心を曇らせます。憎悪は戦略を実行するうえで妨げになります。指導者は誰かを憎む余裕はありません」。2022年春の韓国大統領選挙の結果を予測してくれと言えば、「憎悪の政治」を乗り越えた方が勝利するとマンデラ氏は答えるのではなかろうか。

//ハンギョレ新聞社

パク・チャンス|大記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )

https://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/1019679.html韓国語原文入力:2021-11-17 15:12
訳D.K

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