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韓中日ネット世代はなぜ憎み合うのか

登録:2021-10-29 10:23 修正:2021-10-30 07:57
『韓中日ネット世代が憎みあう本当の理由』(原題:不安型ナショナリズムの時代) 高原基彰著、チョン・ホソク訳、サミン刊行(2007)//ハンギョレ新聞社

 韓国の20~30代が特に中国に対して否定的だという世論調査の結果があった。近い国同士が仲良くするのは難しいという点を除いても様々な分析が可能だが、一次的には2012年に習近平主席が最高権力者になった後に推進した一連の政策、「チャニーズ・ドリーム」や「戦狼外交」が中国の外交的孤立を招いたためだ。覇権国家になるためには軍事力、経済力といったハードパワーだけでなく、新たな社会規範になるビジョンと魅力を提示しなければならないが、中国は中華民族の偉大な復興という一国的な議題のほかに新たな代案を提示できずにいる。かえって香港の民主化運動、新疆ウイグルやチベットをはじめ、ミャンマー事態などに対する強圧的な対応と選択的沈黙を繰り返しているのは、中国の限界に思える。

 韓国・中国・日本の20~30代は、以前に比べてはるかに多様な経路で出会っている。地方大学を財政的に維持させるのは中国留学生という話もあるが、このような対面接触だけでなく、ユーチューブをはじめソーシャルメディアやインターネットのグローバルゲームを通じても毎日のように会っている。韓中日の20~30代は、祖国を愛し誇りを感じるだけの理由がある。日本はアジア諸国の中で最初にオリンピックを開催し、依然としてアジアをリードする経済大国だ。中国は改革開放後、米国とともに世界覇権を争う国家に浮上した。韓国も権威主義独裁を倒し、経済成長と民主化を成し遂げ、映画『パラサイト』やドラマ『イカゲーム』、防弾少年団(BTS)に象徴される文化韓流の強国として自負を感じている。

 韓国の愛国主義ネットユーザーが「クッポン」(「国」と「ヒロポン(覚せい剤)」の合成語で、国家に対する自負心に陶酔している人のこと)だとすれば、中国には「小粉紅」(1990年代以降生まれの若い愛国主義者)がいて、日本には「ネット右翼」がいる。韓中日の若者世代が、自国を自慢するバラエティ番組程度の楽しい愛国心を享受したのが「プチナショナリズム」であったとすれば、「東北工程」問題からはじまり、韓服、キムチ、江陵端午祭などを中国のものと主張するといった中国のいわゆる「万物中国起源説」に憤慨したネットユーザーの間で、様々なナショナリズムのキーボードバトルを通じて積み重なった感情が、THAAD配備以降の中国の「限韓令」やコロナパンデミックの状況で爆発したというのが、現在の反中感情だ。問題は、プチナショナリズムで始まった小さな自国優越主義が、他人の注目を集めて収益を上げる注目経済時代において最もよく売れる「クッポンと嫌悪」のアイテムとして繰り返され、確証バイアスとして定着し、次第に過剰にイデオロギー化しているという点だ。

 彼らが自国優越主義を広める間、実際の韓中日の若者世代が置かれている現実は憂うつなばかりだ。韓国のMZ世代(1980年~1990年代前半生まれのミレニアル世代と、1995年~2000年代初め生まれのZ世代)、中国の「80后」と「90后」(それぞれ80年代、90年代生まれ)、日本のロスジェネと氷河期世代は、共通して前例のない豊かさと高度な消費社会の中で成長したが、彼らが直面している現実は未来の展望が見えず楽観できない流動的な不安にさらされている。自国優越主義が一種の躁状態だとしたら、政治的無力感と不安定な未来に対する悩みは鬱病を招く。1914年夏のヨーロッパは平和と豊かさを享受し、共通の文化と国際交流、経済協力に大きく依存していたため、破局は訪れないと信じていた。しかし、長い間累積されてきた国家(国民)間の排他的優越意識と複雑な同盟体制は、ヨーロッパ全体を戦争の渦中に巻き込んだ。豊かな社会を経験したが、その豊かさと安定から自分だけが疎外されているという喪失感と排他的ナショナリズムが、何を生み出すのか。韓中日の政治とメディア、市民社会は、東アジアの平和と安定のために膝を突き合わせて考える必要がある。

チョン・ソンウォン|「黄海文化」編集長 (お問い合わせ japan@hani.co.kr)
https://www.hani.co.kr/arti/culture/book/1017143.html韓国語原文入力:2021-10-29 04:59
訳C.M

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