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韓国大使が見た最後のアフガニスタン「群衆が飛行機にしがみ付いた」

登録:2021-08-19 06:13 修正:2021-08-23 12:51
チェ・テホ駐アフガニスタン韓国大使が今月18日、カタールのドーハで行われたオンライン・インタビューで、ソウルにいる取材陣に大使館撤退当時の状況を説明している/聯合ニュース

 「本当に緊急事態だ。早くここを離れなければならない」

  チェ・テホ駐アフガニスタン韓国大使が、警備会社からタリバン部隊が首都カブールから20分ほど離れた所まで進撃してきたという連絡を受けたのは、15日午前11時30分ごろだった。チェ大使は、アフガニスタン政府軍が防衛作戦を展開するため、まだ少し時間的余裕があると判断していたが、友好国の分析はそれとは異なっていた。彼らは「即時撤退」を勧告した。チェ大使がチョン・ウィヨン外相に緊迫した現地状況について報告すると、直ちに「撤退指示」が出された。撤退のマニュアルに添って、大使館の重要文書に対する迅速な破棄が行なわれた。

 18日午前10時(現地時間)、カタールのドーハで半袖のシャツ姿で外交部記者団とオンライン・インタビューに応じたチェ大使は、緊迫していた大使館の撤収当時の状況を説明し、「きちんとした服を持ってくることができなかった」とし、取材陣に了解を求めた。ヘリコプターに乗り込むために所持できるカバンの大きさ(30×30×20センチ)が決まっているため、「必需品」ではない背広は諦めたのだ。

 米国のジョー・バイデン大統領が今年4月、米同時多発テロから20年を迎えるまでに「米国史上最も長い戦争を終わらせる」方針を発表してから、友好国の間ではアフガン政府が長く続かないという陰うつな見通しが示された。先月から「8月末」を目標にした米軍の本格撤収が始まると、タリバンの軍事的動きが本格的に始まった。それでも8月第2週に招集された友好国会議の多数意見は「9月以降陥落」だった。アフガン政府軍がわずか数日で崩壊するとは誰も予想できなかった。

 避難準備を終えた大使館職員は、急いで近くの友好国の大使館に移動した。カブールには「グリーンゾーン」と呼ばれる大使館密集地域が形成されており、移動は5分で終わった。そこから友好国のヘリコプターに乗り込み、軍空港に向かった。

今月16日(現地時間)、アフガニスタンの首都カブールのハミド・カルザイ国際空港で、米軍のC17輸送機が離陸のため滑走路に沿って移動すると、アフガン市民数百人が輸送機と共に走っている=カブール/AP・聯合ニュース

 空港は撤退を急ぐ各国大使館職員と国外退避を図るアフガン人が押し寄せ、阿鼻叫喚を彷彿させた。チェ大使は職員の友好国軍用機搭乗手続きを進め、現地の韓国人に対する安全対策に乗り出した。その中の一人が「状況を見守りたい」と現地残留の意思を示したため、チェ大使と職員2人は、韓国人保護などのため現場に残ることにした。しかし、緊迫した事態の変化に気付いた彼も午後にアフガニスタンを離れる決心をしたという。

 16日に出発する軍用機に彼の席を確保したが、15日夕方から民間空港を占拠していたアフガニスタン群衆が軍空港にまで押し寄せ、滑走路を占拠した。チェ大使は「群衆が軍滑走路に向かって飛行機にしがみつく状況が続いた」と述べた。群衆の中には銃を持った者たちがいて、時折銃声が聞こえた。そのため、空港は一時、航空機の離着陸が不可能なマヒ状態に陥った。

 翌日の17日午前1時頃、米軍が軍の滑走路まで入ってきた群衆を追い出し、滑走路を確保した。チェ大使ら残りの大使館職員と現地在住の韓国人一人は同日午前3時、軍用機に乗ってアフガニスタンを後にした。チェ大使は「昔の船に乗るように輸送機の床に座った。搭乗者のほとんどは米国人で、私のような第3国の者やアフガン人もいた」と語った。彼は「現在アフガン国民の約60%はタリバンの統治を経験したことがない若者たちで、西欧文明を経験したインターネット世代なので、人権意識が高い」とし、タリバンが以前のように硬直したイスラム原理主義に基づいた国政運営をしないことを望んでいることを示唆した。チェ大使はこれから駐カタール大使館で駐アフガニスタン大使館の業務を続けることになる。

キル・ユンヒョン記者(お問い合わせ japan@hani.co.kr)
https://www.hani.co.kr/arti/politics/diplomacy/1008208.html韓国語原文入力:2021-08-19 02:42
訳H.J

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