2003年、韓国航空宇宙産業(KAI)が作った高等練習機T-50が初の試験飛行に成功した。KAIが自力で開発した最初の飛行機だった。外国為替危機で経営難に瀕したサムスン・大宇・現代の航空事業を合併し起死回生して以来、4年ぶりの快挙であった。滑走路を力強く飛び上がるT-50を眺める役員、職員たちの目からは大粒の涙が流れた。
それから18年。KAIは4月9日に初の国産戦闘機KF-21(ポラメ=鷹)をリリースした。開発・生産に18兆ウォン(約1.8兆円)が必要とされるKF-21は、自主国防の核心事業だ。戦闘機の量産まで成功すれば、米国、ロシア、中国などに続き世界8番目となる。文在寅(ムン・ジェイン)大統領が参加した試作1号機の出庫式は国民の熱い関心を集めた。
4日、慶尚南道泗川(サチョン)のKAI本社で開発現場を見学した。試作1号機がエンジンを外され、機体に付属する多くの点検孔を開けて地上試験をしていた。後続試作機も組み立ての真っ最中だった。
KF-21は、韓国空軍とインドネシアに合計170機余りを供給する。だが、それ以前に苛酷な試験プロセスを経なければならない。来年7月の初飛行までにエンジン稼動、航空電子、航空機滑走など各種の地上試験を通過しなければならない。その後も2026年6月の量産突入までに合計2341回の飛行試験を実施する。
ところが現場の雰囲気は2日前のある新聞報道のために重かった。この新聞は「試作1号機は出庫式後に再び解体作業に入り、各種の点検・評価が不可能な状態」だとして「大統領が参加する出庫式の日程に合わせて急いで組み立てたようだ」と疑惑を提起した。
その記事は、英語や日本語でも報道され、海外でも大きな波紋を投げかけた。日本語版の記事には「4月に完成されたものは模型」のように日本のネチズンによる嘲弄性コメントが多数ついた。事業のパートナーであるインドネシアとの事業費分担比率の調整交渉に影響を及ぼすこともありうる。
防衛事業庁の韓国型戦闘機事業団は「計画された日程に則り点検と試験を進行中であり、一部の装備および部品を脱去したり分解するのは試験過程では常に起きること」として正面から反論した。法的対応も準備中だ。KAIのある役員は、T-50の初飛行の時に流した涙を思い起こしながら残念がった。
共に民主党は、懲罰的損害賠償制の導入を含む言論改革法を推進中だ。マスコミの社会的責任とフェイクニュースによる被害者の救済が目的だ。だが、ほとんどのマスコミは、表現の自由の萎縮と過剰規制を理由に反対している。KF-21記事の真偽はまだ明らかでない。「KAIの涙」が、言論改革法の議論にどのような影響を与えるか、注目される。