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「米中半導体競争の間、韓国には危機よりもチャンス」韓国半導体神話の主役が語る

登録:2021-06-07 06:37 修正:2021-06-07 09:12
スカイレイク・インベストメントのチン・デジェ会長が今月4日午後、ソウル瑞草区のオフィスで本紙とのインタビューに応じている=キム・ギョンホ先任記者//ハンギョレ新聞社

 半導体をめぐる国際的緊張感が依然として高い。車向け半導体の供給難が続き、半導体サプライチェーンを自国に有利に変えるための国家間競争が激化している。米国と中国の競争は覇権争いであり、韓国は両国の板挟みになって窮地に立たされているというのが大方の分析だ。

 「ミスター半導体」の目にはこうした状況がどのように映っているのだろうか。世界初となるメモリー半導体16メガDRAMの開発をはじめ、サムスン電子の「半導体神話」を率いた主役とされるスカイレイク・インベストメントのチン・デジェ会長は4日、本紙とのインタビューで、「危険要素を抱えているのは事実だが、危機というよりはむしろチャンスだと思う」と述べた。

 「企業にとって危機というのは成長が止まったり、急に赤字が出たり、投資するお金がないといった状況のことだ。半導体分野が今そのような状況にあるのか?供給過剰で価格が落ちているのか?むしろ供給不足の状態だ。車向け半導体が足りないといって大騒ぎになっているではないか。中国が5~6年前(2015年)に『半導体屈起』を掲げ、約300兆ウォン(約29兆6千億円)を投入して、一気にサムスンに追いつくと豪語したが、今はどうか。全く目標に達していない」

 チン会長は「しかし、危機に陥る可能性もあり、危険要素をはらんでいるのは確か」だと述べた。「韓国は半導体産業で世界的に重要な国に属する。米中覇権競争の中で半導体が戦略産業とされ、綱引きが始まっており、どちらか一方に引っ張られることによる若干のリスク、危険の素地はある。しかし、だからといって危機とは限らない。むしろ“引っ張りだこ”になる可能性が高い。米国も投資してほしいと言っているではないか」

 チン会長は「中国が『2025年までに製造業大国になる』と宣言し、その一環として半導体の70%ほどの中国内在化を目指したことが、米国の本格的なけん制を招いた」とし、「振り返ってみると、やや性急だった」と述べた。

 「それは、他国の製造業はすべてストップさせ、米国を抜いてトップに立つということだ。『一帯一路』も同様の概念だ。(中国は)そのまま突き進めば良いと思ったかもしれないが、半導体だけは思う通りにならなかった。韓国から多くの半導体メモリー関連技術者を引き抜いたが、うまくいかなかった。サムスンが独占・寡占的技術を持っており、技術の流出に細心の注意を払っているため、時間がかかるだろう。さらに、バイデン政権発足後、米国のけん制がさらに激しくなった。トランプ大統領時代(の中国けん制)は関税を課する単純な戦略だったが、バイデン政権は半導体の供給を減らし、人権問題で圧力をかけている。それほど派手ではないが、かなり効果的なやり方だ」

-比重の大きい需要者として中国の持つ力というものがあり、米国に近づくことに対する反発、けん制のようなものがあるのではないか。

 「様々な形で現れる可能性がある。半導体は必ず必要だが、半導体メモリーは韓国が主流のため、(供給が円滑でない時は)ほかのものをテコに使うかもしれない。サムスンに半導体メモリーの工場やファウンドリ(半導体委託生産の)工場の建設を求めることも考えられる。直ちにではなくても、米国投資の半分だけでも(中国に)投資してほしいと数年以内に要請された場合、それにノーと言うのは難しいだろう。危機はそのようなところにあるかもしれない。企業よりも国家の地位上の問題であり、重要な意思決定だ」

スカイレイク・インベストメントのチン・デジェ会長が今月4日午後、ソウル瑞草区のオフィスで本紙とのインタビューに応じている=キム・ギョンホ先任記者//ハンギョレ新聞社

-サムスン電子がファウンドリ分野で台湾のTSMCに大きく引き離されており、差が広がっているという危機論に対する見解は。

 「半導体メモリー分野で、サムスン電子やSKハイニックスを合わせて(世界シェアが)70%を超える。半導体メモリー分野が半導体全体の3分の1だ。半導体市場で韓国がそれほどの位置を占めているということだ。

 TSMCは委託生産のみ行い、自社ブランドを持っていない。ファウンドリ市場で60%ほどを占めている。それを韓国が持ってくる、例えば、そのうち韓国が半分ぐらいを奪うとしよう。なんの問題もないだろうか。米国や中国が放っておくわけがない。現在の構図も悪くないと思う。ファウンドリ分野でもサムスン電子だけで10~20%を占めている。メモリー分野では誰も真似できないほどの位置にある。

 TSMCは、アップルやエヌビディア(NVIDIA)などから必要とする注文を受け、生産するやり方だ。それが不安定になったら、米国にとっては大変だ。台湾工場がミサイルを一発食らったりして、工場が止まったらどうなるのか。米国にファウンドリ工場を建設させるほかない」

-サムスンが2030年までに非メモリー半導体分野に171兆ウォン(約16兆9千億円)を投資し、世界1位になる計画を示したが。

 「メモリーと非メモリー合わせて(売り上げ)1位になる可能性は十分ある。だが、非メモリー分野でもトップを狙うのは無理なことだ。サムスンは(非メモリー分野で)自社で使う分は自社生産している。アプリケーション・プロセッサー(AP)をサムスンが作っている。この点においては、クアルコム(Qualcomm)やエヌビディアと競争関係にある。自社のものと共に他社のものも生産する方式なので、非メモリー分野では移行衝突が起こりかねない。エヌビディアのような会社がサムスンに生産を依頼する場合、気になるのではなかろうか。(設計の)中身を見られる可能性があると思うかもしれない。

 サムスンが部門別に完全に分離した会社にならない限り、ファウンドリ分野で生産を拡大するには限界がある。TSMCの半分くらいまでは行けるかもしれないが、それを上回るのは無理だと思う。可能だとしても、望ましくない」

 チン会長は「半導体メモリーで、サムスンが全半導体市場で数年内にトップに立つ可能性もある」と述べた。「今のところ、総合1位はインテルだ。サムスンを10%ほどリードしている。サムスンが2016年か2017年に一時期1位になったことはある。メモリー市場1000億ドルのうち韓国が700億ドルを占めており、そのうち70%ほどがサムスン電子の売り上げだ」。

-韓国政府が今年5月に発表した「K-半導体戦略」に対する見解は。

 「これまで20~30年間、様々な半導体政策や戦略があったが、今回が最もうまく作られたと思う。材料・部品、パッケージング(製造された半導体の損傷を防ぐために包装し、半導体回路の電線を外部に連結する後工程)まで幅広くカバーされており、よく理解して作った案だと思う。ファブリーズ(設計専門)とファウンドリをバランスよく発展させる包括的な政策だ。構想はうまく練られている。次の政権でも引き継いでいかなければならない」

-2年前の日本政府の輸出規制措置も半導体と直結した事案だったが。

 「3点セット(フッ化水素、 フォトレジスト、フッ化ポリイミド)の輸出中止だと言って大騒ぎになったが、日本が大した理由もなく(韓国に)輸出規制を敷いて、気まずくなった。日本がパワーゲームを仕掛けたわけだが、そこまで行ってはいけなかった。(これまで大きな問題なく乗り越えてきたが)いたるところに(危険性が)潜んでいる。3点セットだけではない。日本に100%依存する素材・部品がもっとあるはずだ。外交摩擦で国際分業、協力関係が壊れることは防がなければならない」

 チン会長はソウル大学を卒業し、米スタンフォード大学で電子工学博士号を取得した。米国のIBM研究所で働いていた1985年、サムスン電子にスカウトされ、世界初の16メガDRAM開発の主役として活躍した。メモリー事業部長(専務)、情報家電総括(社長)、デジタルメディア総括(社長)を務め、「ミスター半導体」というニックネームを得た。盧武鉉(ノ・ムヒョン)政権時代、情報通信部長官を歴任した。2006年、投資専門企業スカイレイク・インベストメントを設立し、代表取締役会長を務めている。「スカイレイク」は白頭山(ペクトゥサン)の「天地」から取った名前だ。

キム・ヨンベ先任記者(お問い合わせ japan@hani.co.kr)
https://www.hani.co.kr/arti/economy/economy_general/998172.html韓国語原文入力:2021-06-06 23:22
訳H.J

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