本文に移動

90分ごとに地球を一周…9月に真の宇宙観光が始まる

登録:2021-04-03 04:14 修正:2021-04-03 08:31
ドッキングの連結部分をガラスドームに変更した宇宙観光用のクルードラゴン(完成予想図)=スペースX提供//ハンギョレ新聞社

 来たる9月、純粋な民間人からなるチームが、宇宙観光専用の宇宙船に乗って宇宙観光へと旅立つ。

 米国の民間宇宙開発企業スペースXは30日(現地時間)、低軌道宇宙観光用宇宙船の完成予想図を公開した。同日、初の民間宇宙観光チームは乗客リストを確定し、発表した。

 スペースXの最高経営責任者イーロン・マスクがツイッターで公開したこの宇宙船は、既存の有人宇宙船「クルードラゴン」を改造したもので、天井部位に透明ドームを設置してあるのが特徴だ。宇宙観光客に見通しのよい360度の宇宙の展望を提供するためだ。

 この透明ドームは、国際宇宙ステーションとドッキングするクルードラゴンの連結部分を変更したものだ。宇宙船の先端のノーズコーンの内側にあるこの透明ドームは、離陸および地球大気への再突入の際には蓋で覆われており、宇宙船が地球の大気圏から外れている時にのみ開かれる。ただしスペースが狭いため、一度に一人しか利用できない。

国際宇宙ステーションの展望台の役割を果たすキューポラ。2010年に欧州宇宙機関が設置した=NASA提供//ハンギョレ新聞社

_______
国際宇宙ステーション滞留中の「レジリエンス」を改造して使用

 透明ドームのデザインは、国際宇宙ステーションで宇宙飛行士たちが地球や宇宙の観測場所として用いる「キューポラ」と似ている。

 既存のクルードラゴンにも窓はあるが、四方が透明な窓に囲まれたドームは、はるかに大きな没入感を与えられる。イーロン・マスクはツイッターで「ガラスドームに立った瞬間、宇宙にいることを恐らく最も実感するだろう」と述べた。

 スペースXは現在、国際宇宙ステーションに滞留中の宇宙船「レジリエンス(Resilience、回復力)」が4月28日に地球に帰還し次第、直ちに改造作業に着手する計画だ。

初の純粋な民間宇宙旅行客からなるインスピレーション4のメンバーたち。女性と男性が2人ずつで、右端が司令官役のジャレッド・アイザックマン氏=インスピレーション4提供//ハンギョレ新聞社

_______
宇宙飛行士のいない初の民間宇宙観光チーム

 この宇宙船に初めて搭乗することになる宇宙観光客は、今年9月15日に出発する予定の「インスピレーション4(Inspiration 4)」と名付けられた4人。インスピレーション4は訓練を受けた宇宙飛行士はおらず、純粋な民間人だけからなる初の宇宙観光チームだ。

 この宇宙観光チームは、米国のIT企業人ジャレッド・アイザックマン氏(38)が小児ガン専門病院のセント・ジュード小児研究病院の募金キャンペーンの一環として組織した。アイザックマン氏は、自身が司令官役を務める宇宙観光チームの乗客リストを30日に確定し、発表した。

ガラスドーム部分の拡大図//ハンギョレ新聞社

_______
男女それぞれ2名…補綴物を挿入した初の宇宙旅行客も

 アイザックマン氏と共に宇宙へと向かうのは、セント・ジュード小児研究病院の職員代表として選出されたヘイリー・アシノックス氏(29)、病院への寄付者代表として選出された元宇宙キャンプ・カウンセラーでロッキード・マーティン社員のクリス・センブロスキ氏(41)、アイザックマンが経営するオンライン決済プラットフォーム「シフト・フォー・ペイメンツ」の顧客代表として選出された科学コミュニケーターのシアン・プロクター氏(51)の3人。チームは男性と女性2人ずつで構成されている。

 このうちアシノックス氏は、幼い頃に骨肉種の治療のために同病院で治療を受けた経歴がある。左脚の骨に金属の棒が挿入されているアシノックス氏は、補綴(ほてつ)物を入れて宇宙へと向かう初の宇宙旅行客だ。史上最年少で宇宙へと旅立つ米国人でもある。

 今回の旅行を率いるアイザックマン氏は冒険を楽しむ事業家で、2004年に初めて飛行訓練を受け、2009年には自家用ジェット機で世界一周飛行の最短記録を打ち立てている。当時の彼の飛行時間は、従来の記録を20時間も短縮する62時間。高校中退後に事業を始め、すでに億万長者に仲間入りしている彼は、今回の宇宙観光費用をすべて負担する。

宇宙船クルードラゴンの内部=スペースX提供//ハンギョレ新聞社

_______
今後の民間宇宙観光の基準となる見込み

 フロリダ州のケネディ宇宙センターから旅立つインスピレーション4の目的地は、国際宇宙ステーションよりはるかに上の高度540キロの宇宙空間だ。ここで3日間にわたり地球を90分で1周しながら宇宙を体験する。

 宇宙飛行士が同乗し、宇宙飛行士の活動空間である国際宇宙ステーションを訪問して帰ってきていた以前の宇宙観光とは異なり、今回の旅は宇宙観光専用の宇宙船に民間人だけが搭乗し、国際宇宙ステーションとのドッキングなしに地球低軌道を周回して帰ってくることから、名実共に宇宙観光の始まりと言える。

 事前に米航空宇宙局(NASA)の許可を受けなければならない国際宇宙ステーションへの訪問がないため、観光需要やスペースXの打ち上げ日程に従って、今後は回数をいくらでも増やすことができる。

 宇宙旅行のすべての過程は、非常時を除いては自動プログラムによって進められ、地上のスペースX管制チームが綿密にモニタリングする。宇宙旅行が終われば、宇宙船は地球の大気圏に再突入し、フロリダ沖に着水する。

 インスピレーション4のメンバーは今後、スペースXで軌道力学、微小重力、無重力、ストレステストなどの、宇宙飛行に必要な教育を受けるとともに、シミュレーション訓練、非常時対応訓練、宇宙服の着脱および宇宙船への進入と脱出の訓練も経ねばならない。アイザックマンは「我々4人は直ちに宇宙旅行に向けた訓練に入る」と述べている。

 スペースXの新しい透明ドーム宇宙船と乗客訓練課程は、今後相次ぐであろう民間宇宙観光の基準となる見通しだ。

クルードラゴンのドッキング部分(赤丸)。ここに透明ドームを設置する//ハンギョレ新聞社

_______
2023年の月軌道観光も推進中

 スペースXは今回の旅のほかにも、2022年の10日間の国際宇宙ステーション観光の契約をアクシオム・スペースと、5日間の低軌道宇宙観光の契約を、過去に宇宙ステーション観光事業の経験があるスペース・アドベンチャーズと結んでいる。

 さらに日本の億万長者企業人、前澤友作を乗客とする「月軌道旅行」の2023年の実現を目指している。「ディア・ムーン(dearMoon)」と名付けられたこの宇宙旅行は、月に行くのに3日、月の裏側を通って帰って来るのに3日かかる。前澤はこの旅に同行する芸術家たちを公募している。しかしこの旅は、現在開発中の宇宙船「スターシップ」とロケット「スーパーヘビー」が完成してはじめて可能となる。

クァク・ノピル先任記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/science/technology/989143.html韓国語原文入力:2021-04-01 10:05
訳D.K

関連記事