2021年は少なくとも今後5年間の朝鮮半島情勢の方向性を決める分水嶺だ。朝鮮半島は平和と非核化の方向へと進むのか、それとも核武装の強化と軍拡競争が加速する方向へと進むのか。今年何をどのようにするのかが、その方向性を決めるだろう。そしていちど方向が決まれば政治、経済、制度的慣性が加わることになるだろう。北朝鮮が不可逆的核国家の仲間入りをする最初の年として記録される可能性もある。
今年1月に開催された北朝鮮の朝鮮労働党第8回大会は、様々な面で注目を集めた。特に核兵器に関する部分に関心が集中している。核兵器の小型軽量化および超大型水爆の開発だけでなく「より威力のある核弾頭」の開発も貫徹したと宣言したからだ。また大陸間弾道ミサイルおよび中距離ミサイル、地上発射ミサイルおよび水中発射ミサイルも「誕生」したと公言し、「弾頭操縦能力が向上した全地球圏打撃ロケット」の開発も貫徹したと宣言したためでもある。
このような兵器体系を確保したと宣言するだけでも、韓国と米国の軍事当局の対応は複雑にならざるを得ない。これらの兵器体系が実在するのか、十分に作動するのかは確認することもできないが、無視することもできないからだ。こうした兵器体系が「事業総和報告」で言及されるだけでも戦略的効果が発生するのだ。それだけでなく、公に試験されていない兵器体系についての言及は、今後それらを試験する必要があると公言したということであり、今後の政局の推移によっては試験するかどうかや時期を選択しうるとの警告でもある。
その政局の推移の最初にあるのが韓米合同軍事演習だ。金正恩(キム・ジョンウン)国務委員長が南北関係硬直の主な理由と指摘する韓米軍事演習が再開されれば、新型核兵器の試験は北朝鮮が使用しうるカードの一つだということは、誰にでも簡単に分かる。そしてそれに続く政局の硬直は火を見るよりも明らかだ。韓米当局は独自の制裁と国連制裁の強化で対応するだろうし、北はこれに反発してまた別の兵器の試験を行うはずで、2021年はこの悪循環の無限の繰り返しとなるだろう。
ゆえに、朝鮮半島の平和のためには、少なくとも朝鮮半島政局の安定的管理のためには、韓米軍事演習の延期が最小限の必要条件となる。
しかし問題は、それが十分条件とはなり得ないことにある。金正恩委員長は1月、朝鮮労働党第8回大会の事業総和報告で、5カ年計画期間の電力部門の中長期戦略の一環としての「核動力工業の創設に本格的に入るための計画」に言及した。現状ではこれらの計画を具体的に知ることはできないが、今後5年間「核動力工業」を創設するための活動が数多く展開されることは容易に類推できる。
北朝鮮は1979年、寧辺(ヨンビョン)に5メガワットの実験用原子炉の建設を開始し、1986年に竣工、稼働を開始した。1981年には寧辺から北西に約30キロ離れた泰川(テチョン)で200メガワットの原子炉の建設を開始し、1986年には再び寧辺で50メガワットの原子炉の建設に着手した。北朝鮮はこれらの原子炉を1996年までに完成させる予定だったが、結果的にこの2基の原子炉は完成しなかった。1994年の朝米ジュネーブ基本合意(朝米枠組み合意)によって原子炉建設が中断されたためだ。これに対する反対給付として提供されることになっていた新浦(シンポ)の軽水炉は、2000年代の第2次北朝鮮核危機で中断された。
すなわち、北朝鮮は慢性的な電力問題を解決するために、少なくとも1970年代後半から原子力発電を推進し、金正恩政権もこれを受け継いでいる。金正恩委員長は2016年、「原子力発電所建設を同時に推進」することを求め、2019年にも「原子力発電の能力を見込みのあるものに造成」せよとの計画を発表している。今年1月の発表は、特定の原子力発電所建設ではなく「核動力工業」建設を5カ年経済開発計画に盛り込んだという点で、以前とは量的かつ質的に異なる次元であることを予感させる。
問題は、北朝鮮がたとえ「純粋に」民需用の電力生産のために核動力工業を建設したとしても、核兵器用の物質が派生するということだ。また、北朝鮮の核活動を禁止する国連制裁に違反する行為となる可能性も高い。もちろん2005年の9・19共同声明は北朝鮮の平和的核利用権を認めているが、北朝鮮が本格的に「核動力工業」活動に入ることになれば、国際的な波紋も小さくないだろう。
よって、最近の「北朝鮮への原発支援」論争は退行的だ。朝鮮半島の平和を懸念するなら、過去に秘密裏に原発支援を計画したかどうかをめぐり政局で争っている場合ではない。北朝鮮の大規模原発建設を目前にしている今は、何をすべきか真剣に考えるべき時である。
ソ・ジェジョン|国際基督教大学政治学・国際関係学デパートメント教授 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )