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ニワトリ殺さずに鶏肉を得る「培養肉レストラン」誕生、果たしてお味は?

登録:2020-11-19 02:26 修正:2020-11-19 08:18
培養鶏肉でチキンバーガーを作っているところ=スーパーミート提供//ハンギョレ新聞社

 培養肉料理が食べられるレストランが誕生した。培養肉とは、牛、豚、鶏などの家畜の筋肉から幹細胞を取り出し、生物反応器で細胞を培養して作った肉のことだ。

 イスラエルの培養肉開発企業スーパーミート(SuperMeat)は最近、首都テルアビブ近くの町ネスジオナに培養肉チキンのメニューを提供する試験的レストラン「ザ・チキン(The Chicken)」をオープンしたと発表した。有料販売ではなく、訪問客を対象とした無料試食だが、培養肉料理を常時提供する飲食店が登場したのは初めて。

 このレストランには現在、2種類のチキンバーガーと5種類のサイドメニューが用意されている。来場客は席から、シェフが培養肉を料理する様子や、ガラスの向こうにある培養肉製造施設を見ることができる。2015年に設立されたスーパーミートは、ここ3年でこの培養肉チキンの製造工程を開発した。この過程では製薬産業の工程技術を活用したという。現在この試験製造施設は、1週間に数百ポンド(1ポンドは453グラム)の培養鶏肉を生産できる。

 スーパーミート代表のイド・サビール(Ido Savir)さんによると、望む大きさの培養肉が一度作られれば、その後は毎日、その半分ほどを収穫できる。培養機器の中で細胞が絶えず分裂するためだ。培養肉は、家畜を育てたり屠殺したりする必要がないということから、畜産業からの温室効果ガス排出や環境汚染、動物倫理問題から自由だ。また、畜産業の悩みの種である抗生物質の誤用や乱用、ウイルスやバクテリアへの感染の危険からも抜け出せる。

スーパーミートが訪問客の試食用にオープンした培養肉チキンフードレストラン=スーパーミート提供//ハンギョレ新聞社

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「従来のチキンバーガーと変わらない」…2年以内に正式に市販

 味はどうだろうか。サビール代表はインターネットメディア「ファストカンパニー」のインタビューで、「培養肉バーガーは肉汁の多い鶏肉のうま味が楽しめ、外はサクッとしていて中は柔らかい」と語った。同氏は特に「試食した人はみな、従来のチキンバーガーと区別できなかったと言っている」と強調した。

 培養肉は、食肉製品として正式に承認を受けたわけではない。食品当局が新たなタイプの食肉製品の生産と販売の条件などに対する基準をまだ作っていないからだ。現在のところは開発段階での試食用サービスに過ぎない。スーパーミートは今後1~2年以内に製造工場の承認を得て販売を開始し、5年以内に生産単価を既存のチキンと同水準にする計画だ。

3年かけて開発した培養鶏肉の製造施設//ハンギョレ新聞社

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世界で30社あまりが競争中…韓国もタナグリーンなどが開発に着手

 培養肉が世に姿を現したのは、2013年にオランダ・マーストリヒト大学のマーク・ポスト教授が32万ドルをかけて作った培養牛肉バーガーの試食会においてだった。ポスト教授はその後、モサミートという培養肉開発会社を起業した。現在のところ培養肉の開発会社はポスト教授のモサミートをはじめ、世界で30社あまりにのぼる。米シリコンバレーを基盤とする会社が最も多いが、イスラエル企業も5社にのぼる。スーパーミートのほかにも、世界で初めて培養肉ステーキを開発したアレフ・ファームズ(Aleph Farms)、成体幹細胞ではなく胚性幹細胞を用いるバイオフード・システムズ(Biofood Systems)などがある。アレフ・ファームズは特に、細胞を3Dプリント方式で培養する技術を持っている。2019年秋には国際宇宙ステーションで培養肉を3Dプリントする概念実証実験に成功し、培養肉の潜在力を示した。イスラエルが米国のシリコンバレーに次ぐ世界の培養肉開発業界のもう一つの軸となっているのは、国家レベルで革新的な技術企業を積極的に育成する政策を展開していることが大きな役割を果たしているが、清浄な食べ物を強調するユダヤ教の食文化「コーシャ」も一役買っている。イスラエルは、牛を神聖視するインドとともに、世界最高のビーガンの国だ。

 韓国においても培養肉開発の動きが出始めている。2017年に設立されたタナグリーンが、3次元たんぱく質支持体技術をもとに2023年の市販を目指して培養肉の開発に着手するなど、最近になって複数のスタートアップがこの分野に飛び込んでいる。

クァク・ノピル先任記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/science/technology/970413.html?_fr=mt3韓国語原文入力:2020-11-18 10:11
訳D.K

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