次期米国大統領に当選したジョー・バイデン氏は、これまで同盟重視や国際協力などを強調してきた。したがって新政権の基調は「アメリカ・ファースト」を強調したトランプ政権とは異なり、一方通行よりは同盟国との協議による問題解決に重点を置くものとみられる。しかし、防衛費分担金交渉や在韓米軍駐留問題、戦時作戦統制権(戦作権)の移管などの具体的な懸案をめぐっては、韓米間の隔たりを埋めるのに難航も予想される。
■防衛費分担金交渉で突破口開く可能性も
韓米は昨年9月から防衛費分担金交渉を行ってきたが、依然として意見の隔たりを埋められずにいる。当初、ドナルド・トランプ大統領は、現在1年に1兆389億ウォン(約960億円)である韓国の分担金を5倍も増やすことを要求し、ハードルを上げた。4月には韓米交渉チームが難航の末、13%増額案に合意したが、トランプ大統領が再び50%増額を要求し、再交渉を指示したため合意は見送られた。
バイデン政権はこのように前例のない増額に向けて圧力をかけることはないと見られる。バイデン氏は数日前、「聯合ニュース」への寄稿文で、トランプ大統領の無理な増額要求について「米国の軍隊を撤退させるという無謀な脅迫で韓国を揺すっている」と激しく批判した。
バイデン政権が分担金の増額にこだわるよりは速やかな妥結で韓米関係を安定させる方に転じれば、韓米間の交渉にも突破口が開くものと見られる。国家安保戦略研究院のチョ・ソンリョル諮問研究委員は「バイデン政権が発足すれば、韓米間ですでに合意した13%増額案を尊重する可能性が高い」と述べた。
しかし、防衛費分担金13%の増額も、過去と比べて韓国が大きく譲歩した金額という指摘もある。防衛費分担金の増額は、1991年以来、過去10回の交渉の間、おおむね一桁に止まっており、二桁の増額は2002年の第5次交渉の25.7%増額以来18年ぶりのことだ。
■在韓米軍の規模など再調整の余地あり
バイデン氏が同盟を重視するだけに、韓国の安全保障への懸念を無視し、一方的に在韓米軍の撤退を強行する可能性は高くない。彼はトランプ大統領の在韓米軍撤退の試みに対し「無謀な脅迫」として強く批判した。にもかかわらず、在韓米軍が今のような規模や形態を維持するかは速断できないというのが大方の見解だ。
米国はこれまで、海外駐留米軍の軍事的効率性を高めるために、海外駐留軍の任務と能力などを分析し、それによって兵力と装備などを再調整して再配置する作業を進めてきた。マーク・エスパー国防長官は7月、「数カ月以内に(朝鮮半島を管轄する)インド太平洋司令部などの米軍再配置問題を検討する」と述べた。
米国防総省の検討結果によっては、在韓米軍も削減されるか、循環配置が強化される方式に駐留形態が再調整される可能性がある。先月、韓米安保協議会議(SCM)の共同声明で「在韓米軍を現在の水準で維持する」という表現が12年ぶりに盛り込まれなかったのも、このような流れから解釈できる。チョ・ソンリョル諮問研究委員は「海外駐留米軍再調整は、中国の浮上など世界の安保環境の変化に対応するための措置であり、バイデン政権が発足しても引き続き推進されるだろう」と見通した。
■作戦権の早期移管は依然として不透明
文在寅(ムン・ジェイン)政権が進めてきた戦作権の早期移管は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染拡大と米国の消極的な態度などでブレーキがかかった状態だ。当初韓米は、韓国軍が率いる未来連合司令部の能力を3段階に分けて検証して戦作権を移管することで合意し、昨年、第1段階の能力検証を完了した。しかし、今年計画されていた第2段階の検証は、COVID-19の感染拡大で見送られた。これを受けて韓国は先月、韓米安保協議会議で「延期された第2段階の検証を来年に行うこと」を提案したが、米国は「まだ準備が足りない」と拒否した。
バイデン政府が発足しても、直ちにこのような不確実性が解消されるかは疑問だ。通常、新政権が発足すれば、政策検討に時間がかかるため、しばらく戦作権移管の日程をめぐる不透明な状態が続く可能性が高い。
戦作権の早期返還に対する最近の米国の消極的な態度は、現在戦作権を握っている当事者である在韓米軍司令官らが主導したという。今後、バイデン政権が発足した後、政策レビューの過程で現地の軍指揮官の見解をどのように受け入れるか、また、韓国とどのように協議していくかは、もう少し見守らなければならない。