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[寄稿]「新冷戦」を作る三匹の悪魔

登録:2020-08-10 07:05 修正:2020-08-10 12:44

20世紀以降、米国の対外政策の強みは国益と価値の絶妙な調和にあった。しかし、この3匹の悪魔がその調和を乱し、新冷戦というパンドラの箱を開けている。いくら大統領選挙を控えた政局だとしても、剥製された反共主義を歴史の棺から蘇らせ、危険千万な外交行為に終始集団的沈黙と便乗に徹すると同時に、理解し難い傲慢な態度を示すのは、我々の知る米国ではない

 外交政策に関するホワイトハウスのレトリックによく登場するテーマがあるとすれば、それは敵対国の“悪魔化”であろう。1980年代、レーガン元大統領はソ連を「悪の帝国」と規定し、ジョージ・ブッシュ第43代大統領も2003年の一般教書で北朝鮮、イラク、イランを「悪の枢軸」と称した。そして今年7月23日、マイク・ポンペオ米国務長官はニクソン図書館での演説で中国を「フランケンシュタイン」と呼び、事実上中国との決別を宣言した。新冷戦を宣言したわけだ。

 “悪魔”と“怪物”は外交用語にはなり得ない。にもかかわらず、米国の指導者たちがこれを繰り返し使用した理由は何か。レスリー・ゲルブ元米外交問題評議会議長は、2009年に発刊した『権力の規則(Power Rules: How Common Sense Can Rescue American Foreign Policy)』という著書で、外部の悪魔は米国が作り出したものだとして、次のように説明する。「外交政策はロケット科学のようなものではなく、常識だ。しかし、行き過ぎた原則と理念、腹黒い政治、そして権力の傲慢がそのような常識を圧倒している。これら3匹の悪魔(demon)が常識に基づく外交政策の選択を奪っているのだ」

 彼によると、行き過ぎた原則と理念という第一の悪魔は自由と民主主義、反共と反テロ主義に対する行き過ぎた価値指向性の産物だ。これらの価値を神聖視するワシントンの精神的土壌が善悪と白黒の二分法的な外交政策を作り出す。現実世界に背を向けた過度な理念は政策の失敗に帰結する。第二の悪魔は、政府の外交政策に問題があることを知りながらも、これに沈黙するか便乗するワシントンの政治風土だ。「崇高な米国的価値を目指す」外交政策に対する批判的な見方は臆病な穏健派と見なされ、ひたすら強硬派の声だけが激しさを増す間、政府と議会はいずれもそれに便乗する。第三の悪魔は、欲しいものは何でも手に入れられるという傲慢な態度だ。外部の挑戦に自信を持つことは必要だが、克服する能力や資産が足りない状況で見栄を張るのはうぬぼれ(hubris)にすぎないと、ゲルブ氏は厳しく忠告する。

 ポンペイ長官の演説にも、彼が警告した3匹の悪魔が姿を現している。第一は反共主義の復活だ。以前の包容政策が中国を変化させることに失敗し、むしろ中国共産党の力はさらに大きくなり、中国人民だけでなく米国を含む自由世界を脅かす怪物になったという結論がまさにそうだ。習近平国家主席を「破産した全体主義イデオロギーの真の信奉者」だとし、中国を「覇権を握るために乗り出した新しい全体主義独裁国家」だと規定して全面戦争を強調する部分は、国益優先を強調してきたトランプ政権の取引主義とはかけ離れている。反共主義の復活というこの極端な価値命題に、どれほど多くの人々が共感できるだろうか。

 トランプ政権の「中国叩き」に対し、米政界は終始便乗するか沈黙を守っている。リチャード・ハース米外交問題評議会議長が公開的な批判に乗り出しただけだ。トランプ反対を叫ぶ民主党陣営ですら、沈黙することで同意を示すか、些細な批判を繰り返すだけだ。自由と民主主義、人権を外交政策の基本としてきた民主党関係者としては、ポンペオ長官の価値志向的な演説を真っ向から批判することはできない。これまで同盟政策に無関心だったトランプ政権が同盟と友好国を結集して反中統一戦線を繰り広げるという構想に冷ややかな態度を示す程度だ。最近の反中ドライブが1950年代のマッカーシズムを連想させるのもそのためだ。

 ポンペオ長官は演説で「中国という新しい独裁との戦いで勝たなければならず」、「我々が中国を変えなければ中国は私たちを変えるだろう」と力説した。身の毛がよだつ発言だ。中国共産党を人民と分離し、中国内の反体制人物、香港と台湾の民主化勢力、さらには「民主主義国家の新しい同盟」を結成し、中国共産党政権の交代に積極的に乗り出すという宣言につながる。ゲルブ氏のいう第三の悪魔、傲慢さがうかがえる。中国の政治体制の変革を決められるのは、中国人民だけだ。自ら世界警察の役割を放棄すると言ってきたトランプ政権に、このような主張をする根拠と名分はあるのか。そして(それを実現する)能力はあるのだろうか。

 20世紀以降、米国の対外政策の強みは国益と価値の絶妙な調和にあった。しかし、この3つの悪魔がその調和を乱し、新冷戦というパンドラの箱を開けている。いくら大統領選挙を控えた政局だとしても、剥製された反共主義を歴史の棺から蘇らせ、危険千万な外交行為に終始集団的沈黙と便乗に徹すると同時に、理解し難い傲慢な態度を示すのは、我々の知る米国ではない。

//ハンギョレ新聞社
ムン・ジョンイン延世大学名誉特任教授 (お問い合わせ japan@hani.co.kr)
https://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/957041.html韓国語原文入力:2020-08-10 02:40
訳H.J

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