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災害支援金「普遍か選別か」…悩み深い大統領府

登録:2020-03-26 02:39 修正:2020-03-26 07:37
文在寅大統領が25日、ソウル松坡区の新型コロナウイルス診断試薬の開発・生産会社「Seegene」の研究室を訪れ、研究陣を激励後、会社関係者から説明を聞いている=大統領府写真記者団//ハンギョレ新聞社

 大統領府が新型コロナウイルス(COVID-19)事態克服のための現金支援の範囲と規模をめぐって苦心している。「選別的支援か、普遍的支援か」をめぐり大統領府内部でも意見が二分される中、結論を出すべき日が近づいてきている。

 文在寅(ムン・ジェイン)大統領は24日、第2回非常経済会議で「(来週初めに開かれる)第3回会議で、実効性ある生計支援策について速やかに結論を下せるように準備してほしい」と注文した。大統領府の関係者は「家計支援の方向性を決めるということ」と説明した。現金支援の方針は決まったものの、所得水準と関係なく国民全員に一定金額を支給する「災害基本所得」か、経済的脆弱階層にのみ支給する「緊急災害手当」かをめぐり論争が起きていることから、政府の基準を設けるというのだ。自治体がそれぞれ異なる規模と範囲の支援策を発表しており、「整理」の必要性も増している。複数の大統領府関係者は「すべての可能性が開かれている。限られた財政をどのように投入するのが効果的か悩んでいる」と述べている。

 選別的災害手当の支給を主張する人々は、政策の効果に重点を置いている。ある大統領府関係者は「中央政府の支援は効果を問わざるを得ない。例えば、全国民に10万ウォン(約9040円)を支給するよりも、いま家賃を払えない経済的弱者や、失職した航空・旅行業界の人などに、50万ウォン(約4万5200円)であれ、100万ウォン(約9万400円)であれ、集中的に支給したほうがよいということ」と述べた。

 別の大統領府高官も「選別支援をすれば、経済的に厳しい国民が直ちに金を使うことになる。普遍的支援は支給額が減り効果も大きくない可能性がある。災害基本所得の内需刺激、景気回復効果がどれほどなのか、客観的な資料がないという指摘もある」と述べた。危機が過ぎ去りつつある現時点で考慮すれば、選別支給のほうが妥当だという主張もある。普遍的な支援は、大量失業や景気回復の局面で行うのが理にかなっているというのだ。企画財政部などでは、政府が前日発表した100兆ウォン(約9兆400億円)規模の金融支援策が市場に浸透し、効果が出るまでは待つべきという意見も少なくないという。

 大統領府は、世論がどう反応するかにも神経を尖らせている。ある大統領府関係者は、「さまざまな世論調査でも、所得水準を問わず、すべての国民に同じ金額を支給するやり方は支持が高くない」と語った。

 その一方で、前例のない経済危機状況だけに、前例のない対策を先制的に実施すべきだという意見がある。COVID-19による経済的被害がすでに全方位的なことから、普遍的な災害基本所得を支給すべきだという主張だ。文大統領も複数回にわたり前例のない対策と想像力を注文している。ある大統領府関係者は「どこまで支給するかを区分して支給体系を用意するより、すべての国民に配った方が公平性に合致し支給もしやすい」と強調した。

 世界の主要国がすでに災害基本所得導入の方針を明らかにしていることも影響を与える要因として浮上している。米政府は17日(現地時間)、全国民に現金1000ドルほどを直接支給する対策を推進することを明らかにし、日本も全国民に現金1万2000円以上の支給を検討している。大統領府の関係者は「米国、日本が災害基本所得を支給するとしているだけに、政府もこの制度を検討せざるを得ない」と述べた。

 大統領府が折衷案を選ぶという見通しも出ている。一定規模の高所得層を除いた事実上の災害基本所得案が出るのではないかというのだ。複数の大統領府関係者は「高所得者を含むすべての国民に支援するのは国民の理解を得にくい。最大限支援範囲を広げる方向で検討するのではないか」と述べた。

ソン・ヨンチョル記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/politics/bluehouse/934228.html韓国語原文入力:2020-03-25 21:23
訳D.K

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