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[書評]日本当局と企業の資料で「反日種族主義」に反駁する

登録:2020-01-20 07:18 修正:2020-08-01 18:22
ソ・ギョンドク誠信女子大学教授が米NYのタイムズスクエアの広告看板に載せ、朝鮮人炭鉱労働者ではないという主張が出ると謝罪した写真。産経新聞はこの写真が「端島(軍艦島)ではなく筑豊炭鉱で日本人鉱員を撮った写真」と報じた=勤労挺身隊と共にする市民の会提供//ハンギョレ新聞社

『反対を論ずる:「反日種族主義」の歴史否定を超えて』
チョン・ヘギョン、ホ・グァンム、チョ・ゴン、イ・サンホ著/ソニン・1万5000ウォン

『反対を論ずる:「反日種族主義」の歴史否定を超えて』(チョン・ヘギョン、ホ・グァンム、チョ・ゴン、イ・サンホ著/ソニン・1万5000ウォン)

 「岩城在祥(1922年生まれ、慶尚南道梁山郡(ヤンサングン)出身)。1943年9月20日、北海道炭鉱株式会社平和炭鉱所属の真谷地炭鉱に動員。1944年5月17日午前2時頃、逃走中に摘発されて木材で額を殴られ、夕張炭鉱の鉱山病院に送られたが午後9時30分に死亡。一緒に逃走した金本仙徳(キム・ソンドク)は捕まり、岩城恵鎬(イ・ヘホ)は格闘の間に逃亡。会社側は岩城在祥の死について『絶対に秘密にして公表しないこと』にして、捕えたキム・ソンドクが真相を暴露する憂慮があるため、警察署に誘致した後に機会を見て北方に連行することにする」

 北海道炭鉱株式会社の内部資料である『争議関係』に載せられた「移入半島人二対シ傷害致死事件発生二関スル件」(1944年5月24日作成)の一部だ。岩城在祥の韓国名はイ・ジェサン。イ・ジェサンなど3人が脱出したが、1人は叩かれて死に、1人は捕まり、1人はついに逃げたという内容だ。会社はこれを隠蔽するために同僚を北方に送ろうとする。自由な契約関係であれば退社すればいいことだが、彼らは逃走を選んだ。強制動員だったからだ。

 チョン・ヘギョン日帝強制動員&平和研究会研究委員などが発行した『反対を論ずる:「反日種族主義」の歴史否定を越えて』が強制動員を否定する歴史歪曲図書『反日種族主義』に反駁して証拠として提示した数多くの事例の中の一つだ。『反日種族主義』は5~7章で「徴用は1944年9月から1945年4月までの約8カ月間の短期間に実施され、1939年9月から実施された募集と管斡旋には法的強制性はなかった。朝鮮人労務動員は基本的に自発的だった」と主張した。強制動員を動員経路により細分化して、あたかも徴用を強制動員だと認定しているようだがそうではない。彼らは強制徴用と強制連行も否定する。当時は強制徴用という言葉自体がなかったと主張する。

 『反対を論ずる』は、反駁の根拠を主に日本当局や企業資料から探す。日本内務省管理局が朝鮮に出張させて送った職員は1944年7月に出張復命書を通じて、「内容は別としても、その他のいかなる方式によるも出動は全く拉致同様な状況だ。その理由は、もし事前に動員の事実を知らせれば皆逃げてしまうからで、それで夜襲、誘引、その他各種の方策を講じて人質のように略奪、拉致する事例が多くなる」と報告した。朝鮮総督府で財務局長を務めた水田直昌は「トラックを走らせて巡査を伴って田舎で捕まえてきたこと」があったと、1954年3月6日、大蔵省官房調査課に設置された金融財政事情研究所で証言もした。

『反日種族主義』はこの写真を「ソ教授がタイムズスクエアで映画の広告に利用した(…)石炭を掘る朝鮮人と彼が宣伝した」と批判した。しかしソ教授が広告看板に使ったのは別の写真だ。『反日種族主義』にはこのような間違い多い=勤労挺身隊と共にする市民の会提供//ハンギョレ新聞社

 岩城在祥の場合のように退社ではなく逃走を選ぶしかなかった理由を示す資料もある。日本三菱鉱業(株)が運営した新潟県佐渡鉱業所の『朝鮮人鉱員現況(1943年6月基準)』を見れば、「死亡」や「逃走」というのはあるが「退社」という項目はない。強制性がなく自発的であれば辞めたい時に辞めることができなければならないが、当時の日本の炭鉱ではそれはできなかった。朝鮮総督府は強制動員された朝鮮人に手紙を送り、本来の契約期間である2年が過ぎても現地に残り再契約せよと指示したりした。強制性はなく基本的に自発的だったという『反日種族主義』の主張はこのように崩れる。

 『反日種族主義」が及ぼした最も大きな害悪は、明白な歴史的事実を否認して偽りを並べ立てるというところにあるが、詳細な歪曲を通じて人々を混乱に陥れ、徐々に真実をかじり取る試みだという点にさらに注目しなければならない。例えばこの本は議論対象を「1939年9月から1945年8月15日まで約6年間、戦争中に日本に渡って労働をした約73万人の朝鮮人労働者」に特定するが、これは日本の戦争犯罪の範囲を狭めようとする意図だとチョン・ヘギョン委員は喝破する。「日本の戦時体制期に動員した対象は、日本と朝鮮半島を含むアジア太平洋地域の人・物資・資金」だが、「日本に渡った朝鮮人労働者」だけを見るということは、日帝の最も大きな被害者である中国やその他の被害地域を議論から除く効果があるということだ。

 強制連行を否認することで強制連行だけが強制動員であるかのように議論を追い立てようとする意図にも騙されてはいけない。徴用と募集、管斡旋、全て明白な強制動員だった。「朝鮮人を雇おうとする雇用主(日本企業)が申請した人数を日本政府が調整して割り振り、朝鮮総督府と調整して確定」した日本帝国主義の国家総動員体制の一環だったからだ。最近、日本政府でさえ1940年代全般にわたる広範囲な強制動員の事実を認めた。「1940年代に一部地域で本人の意志に反して苛酷な条件下で仕事をするよう強制された多くの韓国人とその他の人々がおり、第二次世界大戦中、日本政府もまた要求政策を施行した」(佐藤地・駐ユネスコ日本大使が2015年7月5日ドイツのボンで開かれた第39回世界遺産委員会で行った公式発言)

 このように明白な事実を無視して無知と憶測、詭弁で一貫する本を読んで批判するのはつらいことだ。『反日種族主義」は一時的にベストセラーになるなど話題になったが、学界の真剣な反論が多くなかったのはそのためだ。『反対を論ずる』は『反日種族主義」を批判する本としては初めて出たものだ。チョン・ヘギョン委員は『反日種族主義』について「歴史学の研究者、そして戦争被害と人権問題を研究する研究者にとっては、この本は不快さを超えて苦役のような本」としながら「それでも、チョ・グク前法務部長官のように『読んではいないがおぞましい』という言葉で無視してはいられない。研究者なら、そんな無責任な言葉の代わりに『反日種族主義』の歴史否定を超えるための努力を積極的に注がなければならない」と、本を出した理由を明らかにした。

イ・ジェソン記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/culture/book/924773.html韓国語原文入力:2020-01-17 09:24
訳M.S

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