成熟期に入ったスマートフォンには、これ以上変わる部分があるのだろうか。韓国のスマートフォン普及率は2019年現在95%で世界1位、利用時間も最高水準だ。2007年のアイフォン以来、スマートフォンは依然として「手に握って使う多用途通信機器」という形と用途を維持しながらも、デザインや機能は絶えず変化してきた。アプリ市場、音声による命令といった初期の革新にとどまらず、最近はホームボタンやベゼル(画面の枠)の除去、高性能カメラ搭載といった新たな競争が激しい。2020年、モバイル機器はどのように変わるのかを、米国の情報技術専門誌『シーネット』『ミディアム』の見通しに基づいて点検してみる。
1.「折りたたみ式スマートフォン」市場は開かれるか
激しい競争にもかかわらず、スマートフォンの物理的な形は発売後ほとんど変化のないままだが、その時期は終わった。ディスプレイ技術の発達のおかげで、2020年は折りたたみ式スマートフォンとマルチスクリーンの時代が開かれる。サムスンと華為(HUAWEI)は、今年初めにモバイル・ワールドコングレス(MWC)で発表した折りたたみ式スマートフォンを年末発売し、LG、マイクロソフト、モトローラなども2つのスクリーンを用いたスマートフォンを公開している。折りたたみ式のアイフォンの発売は期待されていないが、アップルの参入の有無は折りたたみ式スマートフォンが市場に定着した後の問題だ。より多くの情報を盛り込むためのスマートフォン競争は画面の大型化、ベゼル撤去を超えて折りたたみ式ディスプレイ、2画面スマートフォンの発売につながったが、成功するかどうかは未知数だ。折りたたみ式スマートフォンは価格、持ち歩きやすさ、重さ、利便性の壁を乗り超えなければ市場を広げることはできない。
2.タッチから音声へ
キーボード、ペンなど多様だったスマートフォンの操作法は、結局ホームボタンまで無くしてタッチに統一された。音声認識技術の発達、音声秘書機器競争、機器統合音声使用者環境は、人の指にかわって声をモバイル機器の新たな操作方法へと変えつつある。この1年間、アップル、サムスン、グーグル、アマゾン、マイクロソフトなどは音声秘書機能を様々な機器やサービスと統合する作業を行ってきており、これはまもなく多様な製品となって発表される予定だ。さまざまな家電製品や電子機器が、スマートフォンや人工知能スピーカーと統合使用環境を構築していることから、機器ごとのリモコンやタッチ操作の代わりに、スマートフォンを用いた音声命令の利便性が高まっている。しかし、音声がモバイル機器を操作する支配的な方法になったとしても、依然として画面入力は音声と並ぶ操作方法である。
3.「倫理的」モバイル技術の浮上
モバイル機器の設計において倫理的な配慮が重要となろう。スマートフォンが成熟期に入り、機器の使用がもたらしたさまざまな現象への省察的アプローチも増えている。新しい機器への関心や物珍しさが消え、誘惑的で必須の道具を賢く使う方法である「デジタル・ウェルビーイング」が求められている。代表的なのが、機器の接続時間と没入度の増大だけを追求してきた業界の一部で、利用者の省察的利用を助けるサービスを次々と提供していることだ。アップルが1年前から提供する「スクリーンタイム」は、アイフォン使用者たちに対し、総額接続時間とサービス別の利用度を週単位で点検できるようにし、賢明かつ主導的な利用をサポートする。フェイスブックやユーチューブなどのソーシャルメディアが、人間の心理的な弱みを狙って接続時間と収益の最大化を追求してきたとの批判が高まり、情報技術界の一方では「ドーパミン断食」のような傾向も生まれている。来年開催される東京五輪とパラリンピックは、苦労して機器を利用してきた人たちにも同じアクセス権と便利さを提供すべきという情報技術業界の試みを前進させるきっかけにもなりそうだ。