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日本側に傾いた“米国の天秤”が顕在化…韓国は北東アジア戦略構図を十分考慮したか

登録:2019-11-25 10:01 修正:2019-11-25 16:00

GSOMIA事態が残したものとは 
 
GSOMIAカード、米国を説得するには不十分 
韓国、日本の輸出規制への対応策として 
米国を動かすためにGSOMIAカードを切ったが 
米国は安保協力の枠組みを揺るがす脅威と判断 
予想超える執拗な圧力かけられる 
 
米国の圧力、日本より韓国に集中 
非対称的な関与、「不公正同盟」の印象も

GSOMIAをめぐる韓米日の動き//ハンギョレ新聞社

 韓日軍事情報包括保護協定(GSOMIA)が「条件付きの終了猶予」で起死回生したことをめぐり、政府のこれまでの原則とは距離があるとして議論が巻き起こっている。大統領府は、韓国側の「GSOMIAの終了」という最後通告で圧迫感を感じた日本が、「輸出規制とホワイト国(グループA)の再検討」を提案してきたことで、合意が成立したと強調している。しかし、日本は「輸出規制措置を解消する案」の協議を再開すると明らかにしただけなのに、韓国は直ちにGSOMIAの「条件付き終了猶予」と「世界貿易機関(WTO)提訴の撤回」という見返りを提供したという、“等価性”をめぐる議論だ。韓国政府は「日本が時間を引き延ばした場合、韓国がいつでもGSOMIAを終了できる」ボタンを確保したことで、相応の措置のバランスを取ったと主張している。

 政府の今回の決定は、南北関係が悪化し、朝米交渉に進展が見られない状況で、予想を上回る米国の強い圧力に影響されたものと見られる。GSOMIA問題である程度歩み寄ることで、米国の防衛費分担金の大幅増額要求など、差し迫った韓米同盟の懸案を管理しようとした可能性もある。それにも関わらず、文大統領が「国民との対話(タウンミーティング)」でも明らかにした原則を貫くことができず、政府の信頼性と政策の一貫性が損なわれた。チョ・ソンニョル国家安保戦略研究院諮問研究委員は「形式上では50対50の“休戦”だが、結果的に外交安保政策の安定性と信頼性が損なわれたのが残念だ」とし、「GSOMIAの終了を強行した場合、米国の反発と韓国経済の不確実性などを考慮した決定と見られる」と分析した。

 「中国の浮上」を牽制するために新たな枠組みに入った米国の北東アジア秩序の中で、韓国の外交的選択が持つ限界も明確になった。韓国はGSOMIAの終了を日本の輸出規制およびホワイト国(グループA)からの排除に対する対応カードとして取り出したが、米国はこれを中国牽制を念頭に置いた韓日米安保協力の枠組みを揺るがす脅威と見なした。8月22日、韓国政府のGSOMIA終了決定直後、「文在寅(ムン・ジェイン)政府の決定は北東アジアで、われわれが直面した安保的挑戦に対する深刻な誤解を示す」という米国務省の論評がこれを端的に示している。韓国の選択と米国の利益が衝突する構図が明らかになった。

 政府がGSOMIAの終了を決定する際にこのような安保構図を十分に判断したのかは疑問として残る。政府が日本の報復措置を牽制するために「GSOMIA」カードを取り出す過程で、米国を十分説得できなかったことが結果的に大きな負担になったものと見られる。政府がGSOMIAと韓米同盟の分離に失敗したことで、米国の強い圧力に直面することになったのだ。国家安保戦略研究院のキム・スクヒョン対外戦略研究室長は、「GSOMIAは米国の東アジア戦略と緊密に結びついている」とし、「日本が “安保上”の問題を取り上げ、報復性の輸出規制を行ったにもかかわらず、米国は仲裁の意志を示さなかったため、政府が米日を動かす目的で“GSOMIA終了”カードを切り出したのは理解できるが、その過程で米国との協議と外交的準備が不十分だったようだ」と述べた。

 米国の圧力は予想をはるかに超えるほど執拗だった。韓国外務省がハリー・ハリス駐韓米国大使を呼んで、懸念の表明を自制するよう求めたが、米国のメッセージは変わらなかった。米国は国務省や国防総省などさまざまなルートを通じ、インド太平洋戦略の中核軸として韓米日安保協力の必要性を強調して圧力をかけてきた。「GSOMIAの終了は北朝鮮や中国、ロシアを利するだけ」だとし、GSOMIAが中国を牽制するためのものという点を明らかにした。韓国の安保利益が中国を牽制しようとする米国の安保利益と分離できないことを明確にしたのだ。

 米国のこのような態度は、韓国外交にさらなる負担としてのしかかっている。韓国が中国を牽制するための韓米日安保協力の枠組みの中で自由ではないことが改めて確認されたためだ。北東アジアで韓米日協力の枠組みが強化されることに対する中国の不満が高まるだろうし、北朝鮮も独自の南北関係が容易ではないと判断する可能性がある。キム・スクヒョン研究室長は、「政府の今回の決定は、韓国が米国の影響力の下で独自に動くことは難しいというシグナルを送った」とし、「これまで韓国は自主的役割、特に朝鮮半島問題で南北の自主的解決原則を強調してきたが、現実ではこれを実現することが容易ではないという限界を露呈した」と指摘した。

 韓米同盟にも見えない傷を残した。米国は当初、韓国最高裁(大法院)の強制徴用賠償判決後、韓日間の対立が浮き彫りになり、日本が安保上の理由で韓国への輸出まで規制する状況でも、手をこまねいていた。GSOMIAの終了予定日を控えてせわしくなった米国の圧力は、日本より韓国に集中した。米国の関与は非対称的で、不公正な同盟という印象を残した。チョ・ソンニョル諮問研究委員は、「米国は韓日を対等に尊重しなかった」とし、「今回のGSOMIA事態で、米国の天秤が日本側にかなり傾いていることが明らかになった」と指摘した。

 もはや主要な課題は、来月末に中国で開かれるものと予想される韓日首脳会談の前に、被害者の同意を得た強制動員の解決策と輸出規制の撤回を進展させることだ。キム・スクヒョン研究室長は「日本と始めることにした局長級協議を通じて、速やかに日本の輸出規制を撤回させる方法を講じ、被害者の立場が反映された強制動員の解決策を見出さない限り、今回の危機をチャンスにすることはできない」と強調した。

ユ・ガンムン先任記者、パク・ミンヒ記者(お問い合わせ japan@hani.co.kr)
https://www.hani.co.kr/arti/politics/diplomacy/918311.html韓国語原文入力:2019-11-25 02:40
訳H.J

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