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ビニールハウスに閉じ込められた現代版「農村奴隷」

登録:2019-07-27 00:31 修正:2019-07-27 07:35
京畿道抱川のある移住労働者の宿所。掘っ立て小屋はすぐにでも崩れそうで、前に設置された簡易トイレは壊れている//ハンギョレ新聞社

 ソウル地域の最高気温が32.9度まで上がるなどの猛暑が続いた今月23日、京畿道抱川(ポチョン)のあるビニールハウス農場団地。似たような規格のビニールハウスが途切れなく続く。ビニールハウス内の温度は40度を超える。ビニールハウス内では、ベトナム、カンボジアなど東南アジアから来た移住労働者が休まず働いている。農場の周辺では、韓国人よりも外国人を多く目にした。

移住労働者がビニールハウスで働いている//ハンギョレ新聞社

 午後6時ごろ、働いていた移住労働者たちはトラクター、オートバイなどに乗って退勤した。彼らが向かう場所はビニールハウスのすぐ隣りの掘っ立て小屋だ。各農場の隅には移住労働者が寮として使う小屋がある。程度の差はあるが、ほとんどがコンテナやバラックでつくられ、暑さを防ぐために施設の上には黒い遮蔽幕が設置されている。

バラックでつくられた移住労働者の宿舎。バラックの上には黒い遮蔽幕が設置されている//ハンギョレ新聞社

 細くて長く造られたバラックの中には光がほとんど入ってこなかった。少しの間立っているだけでも、背中から汗が流れ落ちた。バラックは3.3~6.6平方メートルほどの広さに分かれ、各自の宿舎として使用していた。ネパールから来た移住労働者のAさん(38)の宿舎はさらに劣悪だった。掘っ立て小屋はすぐにでも崩れそうで、前に設置された簡易トイレは壊れていた。小屋の中はごみ捨て場と変わらなかった。農薬箱が転がり、あらゆるごみや厚く溜まったほこりの間にAさんの洗濯物がぶら下がっていた。居間と部屋の中にはカビが広がり、床と壁紙はしわが寄っていた。

あらゆるゴミがため込まれた宿舎//ハンギョレ新聞社

移住労働者の宿舎に農薬の箱が積まれている//ハンギョレ新聞社

 Aさんは2012年にE9就職ビザを受けて韓国に来た。ビザ更新のためにしばしネパールに行ってきた期間を除いては、7年間同じ農場で働いた。朝6時に仕事に出て夕方6時に退勤するが、休憩時間はお昼の30分が唯一だ。休日はひと月に2日。農村は労働基準法の適用にならない。「農畜産業労働者らは勤労時間・休日・休憩に関する条項の適用例外とされる」という労働基準法63条のためだ。ネパールに帰って酪農業をしたいというAさんは、1年あまり前から農場主に事業場変更同意書を書いてほしいと要求しているが、農場主は代替人員、農繁期など様々な理由を並べ立てて先送りしている。

京畿道抱川のビニールハウス団地。ほとんどが温室野菜を栽培している//ハンギョレ新聞社

 農村移住労働者が劣悪な宿舎と不当な待遇を受けても、事業場を自由に変えられない理由は「雇用許可制」のためだ。農場主の許可がなければ、ビザの延長や事業場の変更ができない。抱川移住労働者相談センターのキム・ダルソン牧師は「移住労働者たちは雇用許可制と労働基準法の例外条項のために、現代版奴隷のように働いている。セクハラ、暴言などにさらされてもちゃんと訴えられない」とし、「農場主に絶対的な力を与える雇用許可制は改めるべきだ」と主張した。厳しい農村の現実と硬直した制度が人権の死角地帯を作っていた。

抱川/写真・文、キム・ミョンジン記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/society/rights/903451.html韓国語原文入力:2019-07-26 08:31
訳M.C

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