ルレンド・ンクカ一家は、コンゴ出身のアンゴラ国籍者だ。度重なる戦争などによってアンゴラ支配層がコンゴ出身者を差別し抑圧する過程で、ルレンド一家もアンゴラ警察によって不法拘禁されるなど迫害を受けた。ルレンドさんはこの過程で警察に拷問を受け、妻は警察から性的暴行を受けた。国連統計によると、昨年10月の1カ月間でアンゴラから追い出されたコンゴ人は33万人にのぼる。ルレンド一家も難民の地位を認められるために韓国行きを決定し、アンゴラで観光ビザを受け、昨年12月28日、仁川空港に到着した。しかし、ルレンド夫婦と4人の子どもたちは空港で入国が拒否され、パスポートまで押収された。
ルレンド一家は1月9日、「難民申請する条件にある人か」を判断する難民認定付託審査を受けたが、不付託通知を受けた。仁川空港の出入国・外国人庁はルレンド一家を「ただ経済的な理由で難民認定を受けようとするなど、難民認定申請が明らかな理由のない場合」に該当すると判断した。この決定で、ルレンド一家は難民認定の申請すらもできなくなった。仁川空港で難民審査に付託されなければ、通常7日以内に本国に強制送還されるが、この間に行政訴訟をかければ訴訟期間は空港で寝泊まりすることもできる。ルレンド一家はアンゴラに強制送還されれば死ぬかもしれないと判断し、送還を拒否して「不付託決定取り消し」訴訟を起こした。しかし、4月25日、この訴訟でも敗訴した。彼らは控訴審の裁判を待ちながら、6月20日現在で6カ月間、仁川空港の免税区域内の乗り換えラウンジエリアに滞在している。
ルレンド一家は現在どのような状態だろうか。仁川空港の免税区域に入ってルレンド一家を数回取材したトゥリメディアのチェ・ユンド編集長は「3月から先月末まで5、6回この家族に会った。会うたびに彼らの状態が悪化している」と語った。チェ編集長は「彼らは出国者が渡す食べ物と生活必需品をもらってかろうじて生きている」と説明した。「ルレンド一家とともにする人々」の会はフェイスブックのアカウントなどを通じて出国予定者を募集し、彼らにルレンド一家にあげる品物を渡している。
チェ編集長が撮った写真と映像を見ると、彼らは廊下の片隅にソファーをつけて生活している。10歳にもならない4人の子どもたちは、明るい光や乾いた空気、ホコリや騒音の中で、夜中2時が過ぎても眠れずに寝がえりを打っているという。ルレンド夫婦の子どもたちから「アンクレ」(おじさん)と呼ばれているチェ編集長は「子どもたちをいじめ人もいる」と言い、「それで私が行くたびに子どもたちがトイレに一緒に行ってくれとせがむ。ちゃんとした解決策がないためもどかしい」と悔しがった。
チェ編集長は、家族の健康状態がもっとも緊急だと話した。チェ編集長は「5月末に家族に会いに行くと、2番目の子どもがお腹が痛くて何も食べられずにいた。ルレンド夫妻はどうすることもできず見ているしかなかった」とし、「あまりのことに、仁川空港の救急隊を呼んで緊急上陸許可を受け、病院にも行ってきた」と説明した。
「難民とともに共同行動」は20日、仁川国際空港の法務部出入国サービスセンター前で記者会見を開き、「世界一の規模と施設を誇るここ(仁川空港)が多くの難民にとって刑務所であり地獄となっている」とし、「空港に拘禁された難民たちが自由を得て、私たちの隣人として生きていけるようにしなければならない」と要求した。法務部がこの日発表した「2018年難民申請および処理現況」によると、昨年韓国に難民認定を申請した外国人は1万6173人で、1994年に難民認定申請の受付を開始して以来、最多の規模を記録した。特に2018年に難民認定審査が完了した人は3879人だが、このうち難民に認定された人は144人で、3.7%に過ぎない。世界の平均難民認定率は29.8%であり、経済協力開発機構(OECD)の平均は24.8%だ。人道的滞在許可を受けた人は514人だ。
彼らは記者会見文を発表し、「ルレンド夫婦の健康状態は非常に深刻な状況だ。10歳足らずの4人の子どもは十分な栄養と世話が必要な年齢であるに関わらず、ちゃんとした教育も半年間受けられていない。大韓民国は国連の児童の権利に関する条約を批准した当事国だが、児童の人権のための最小限の措置も取っていない」と批判した。ルレンド一家の控訴審の裁判は今年7月に開かれる予定だ。