中国がついにレアアース(希土類)のカードを取り出した。世界のレアアースを事実上独占する中国が、対米輸出統制の可能性に言及したことで、米中貿易戦争が新たな局面に入る見込みだ。
中国国務院傘下の国家発展改革委員会は28日午後、ホームページに資料を掲載し、レアアースの輸出を対米制裁カードに活用する考えを示唆した。米政府が世界最大の通信装備メーカー「華為(ファーウェイ)」を直接狙ったことを受け、官営メディアから「レアアースの輸出を中断すべき」という主張が相次いだが、中国当局がこれを公式に取り上げたのは今回が初めてだ。
報道官が記者の質問に答える形式の同資料で、国家発展委は「世界最大のレアアース供給国として、中国はこれまで開放の原則を固守してきた」とし、「レアアースに対する内需の満足を最優先にしてきたが、世界各国の適切な要求を満たすためにも努力してきた」と主張した。さらに「もし中国が輸出したレアアースとその加工品で作った製品を利用し、米国が中国の発展を牽制して抑圧しようとするなら、中国人民は喜ばないだろう」と述べた。中国が輸出したレアアースを利用して半導体チップなどを生産したにもかかわらず、米国がこれを華為など中国企業に供給しないならば、中国もレアアースの輸出制限で報復できることを警告したわけだ。国家発展委は「中国と米国の産業網は高度に融合しており、相互補完的だ。和合すれば両方にとって利益になり、争えば互いを傷つけることになる。貿易戦争において勝者はいない」と強調した。
習近平国家主席は今月20日、貿易交渉責任者である劉鶴副首相とともに、「レアアース王国」と呼ばれる江西省韓州で、レアアースの生産・加工メーカーを訪問し、「重要な戦略的資源」だと強調した。習主席の視察と官営メディアの主張に続き、当局がレアアースの輸出を制限する可能性に触れたのは、事前に調整された行動とみられる。
中国は2010年に東シナ海尖閣諸島(中国名・釣魚島)をめぐり日本と領有権紛争が高まった際も、レアアースの輸出中断カードで日本を圧迫した。「先端産業のビタミン」と呼ばれるレアアースは、スマートフォンの液晶表示装置や半導体・電気自動車のバッテリーなど産業用だけでなく、レーダーとミサイル誘導体系などの兵器生産にも使われる。米国地質調査所の「2019世界の鉱物資源報告書」によると、昨年の世界レアアース生産量は約17万トンであり、このうち14万トンが中国産だ。埋蔵量は全体1億2000万トンのうち4400万トンが中国に集中している。昨年、中国の対米レアアースの輸出規模は約9200万ドルで、米国が輸入するレアアースの約80%を占めているという。
このような中で、貿易戦争の核心に浮上した華為は29日、米国政府を相手取って起こした違憲訴訟を急いで進めてほしいという略式裁判申請を行ったと明らかにした。華為は、米国政府が国防権限法(NDAA)で政府機関の華為の機器購入を禁止したのは不当だとし、3月に米国裁判所に訴訟を起こした。