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[寄稿]奴隷でない“積極的市民”が多くなるには

登録:2019-05-07 22:11 修正:2019-05-08 07:26
大韓航空の職員たちと市民が、ソウル光化門の世宗文化会館の屋外階段で、韓進グループの総帥であるチョ・ヤンホ会長一家の“横暴”を糾弾し、経営の一線からの退陣を要求するろうそく集会を開いている=カン・チャングァン記者//ハンギョレ新聞社

 韓国には“金のある奴隷”と“金のない奴隷”の二種類がいるという考えを時々聞く。前者は世論を主導する50代以上の“利益集団”だ。彼らは“権利意識”が非常に高く、教師、デパート職員、警察、あるいは他の下級公務員たちにとって恐ろしい“告発”勢力だ。彼らは甘く見る人々にだけ悪口、抗議電話、告訴、告発などの権利行使を行う。私が彼らを“奴隷”と言う理由は、彼らは概して物質を神と敬い、自分の権利は知っていても他人の権利は知らず、過去の政権の不法、暴力、人権侵害、隣人の苦痛に目を閉ざしてきたように、今も世襲の経済権力の前では頭を下げるためだ。

 ところが、大多数の20~30代の青年、下層自営業者、非正規職労働者は、事実上“金のない奴隷”だ。彼らを奴隷と見る理由は、権利について学んだことがなかったり、主張する方法をよく知らず、日々の暮らしだけで手に余り、一日一日が不安で常に苦しみながら生きているためだ。また、現実から与えられた小さな満足に安住したり、日常的に人間的な侮蔑にあっても我慢したりもする。彼らは、同僚の中で奴隷として生きることをやめようと叫ぶ人々を無視したり締め出したりもする。

 過去の軍事政権が服従的“臣民”を要求したとすれば、今日の新自由主義時代は消費者や従業員として生きることを要求する。しかし、過去には権力の暴圧を拒否する“積極的市民”たちがいて、彼らが立ち上がり権力を押し倒し、韓国社会を一段階質的に成熟させてきた。6月抗争に参加した市民と、2016~2017年のろうそくデモに参加した市民は、“積極的市民”として当面の自分の利益とは関係のない公的なことに介入した。

 逮捕、烙印、投獄を覚悟した過去のデモとは違い、今日デモに出ることは別に負担がない。それで、デモの行動だけ見れば奴隷と積極的市民は区別できない。今日では、自身の地位と生計が脅威を受けかねない状況で不当な処遇に抗議できる人が真の積極的市民だ。パク・チャンジン大韓航空事務長や、ソ・ジヒョン検事のような人がそれに該当する。パク・チャンジン氏は、財閥オーナーの横暴と同僚からの仲間はずれの中でも耐え忍んだが、彼は「自分の人生の主体を取り戻すこと」 「私が生き残ってこそ、次の人々が救済を受けられるため」と話す。これこそが、この時代の奴隷拒否宣言というに値する。

 韓国社会の既得権勢力は、彼らのように奴隷であることを拒否する人、すなわち積極的市民を“アカ”と攻撃する。彼らにとって従北左派とは、顔を上げて権利主張をする人々だ。彼らはいつも“被害者らしさ”を要求し、被害者が“人間”であることを宣言する瞬間、決まって“アカ”と攻撃する。セウォル号惨事の遺族たちも、補償金だけもらっていれば“善良な市民”だが、救助過程の真相究明を要求する瞬間、機関員がつきまとい隣人が締め出す。

 “積極的市民”を解雇・孤立・自殺まで追い込む韓国社会で、実際に“積極的市民”になろうとすれば、資格・能力・金銭が必要だ。“金のない奴隷”たちには、まず自ら組織できる機会を与えなければならず、参加できる力を持てるようにしなければならない。

 世の中が既成人を奴隷にしたとしても、学校はそうであってはならない。かつて兪吉濬(ユ・キルジュン)は、「教育は権利の根本を教えること」と述べた。日帝総督府は、韓国人に“考える人間”ではなく、当座の食べ物を得ることができる技術を持った人になれと教え、言われたことを確実にできる人間になれと教えた。開発独裁時期や今の新自由主義時代にも、市場で販売できる知識が最高だ。自由な人間、自ら考え判断する人間だけが責任を負う主体になれるのに、韓国の教育は生徒たちが“積極的市民”になる方法は教えなかった。このように見れば、日帝強制占領期間以後の100年間、韓国に真の“教育”はなかった。それゆえに韓国では“たくさん勉強した”人々が一層奴隷的だった。

キム・ドンチュン聖公会大学NGO大学院長//ハンギョレ新聞社

 今、欧州20カ国で学校の民主市民教育は公式教科課程に採択されている。すでに約20年前に学校の市民教育の礎石を置いた英国のクリック報告書は、「市民は道徳的であるだけでなく政治的でなければならない」と強調した。大きく遅れたが、韓国の多くの市・道教育庁と教育部が民主市民教育の関連部署を作ったことは非常に歓迎するに値する。しかし、政府はまだ“告発”を意識してか、とても消極的に進めている。民主市民教育は、すでに時代の大勢だ。それこそが、ろうそく青少年を積極的市民に育て、韓国社会を質的に転換させる主役を育てる道だ。

キム・ドンチュン聖公会大学NGO大学院長 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/892955.html韓国語原文入力:2019-05-07 18:55
訳J.S

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