31日(現地時間)、米国の対北朝鮮実務交渉を率いる米国務省のスティーブン・ビーガン北朝鮮政策特別代表が、スタンフォード大学の講演で示したメッセージは明確だった。「戦争を終わらせる準備ができている」や「北朝鮮政権の転覆を追求しない」という発言からも分かるように、北朝鮮体制の安全を保証するというドナルド・トランプ米国大統領の意志が確固たるもので、過去の米国指導者たちとは異なり、朝米が70年間にわたり続けてきた敵対を終わらせる準備ができているということだった。また、非核化-関係正常化の“同時的・並行的”履行方針を示した。2月末に予定された2回目の朝米首脳会談の動力を生かすための地ならし作業と見られる。
ビーガン特別代表は同日、カリフォルニア州スタンフォード大学のウォルター・ショレンスティン・アジア太平洋研究センターで、来週初めに開かれるとみられる朝米実務会談を控え、米国側の構想を比較的詳細に語った。彼は質疑応答で「(我々の過去の対北朝鮮政策は)相手がすべてを先に実行したら、我々もそれに応じて何をすべきかを考えるというふうに解釈されてきた」としたうえで、「それは我々の政策ではない」と述べた。彼はこれに先立って行われた講演でも、米国が朝米シンガポール共同声明の「同時的かつ並行的な履行を進める準備ができている」と強調した。彼が明らかにした「同時的かつ並行的」履行方針は(北朝鮮が主張してきた)「行動対行動」の米国式表現と言える。「相応の措置のためには、先に非核化すべき」と主張してきた態度から一歩後退したものとみられる。
実際、ビーガン代表はこの日、米国側が取る“行動”である相応の措置に関する言及に、かなりの時間を割いた。彼はキム・ヒョクチョル国務委員会対米特別代表に会い、北朝鮮の濃縮ウラン施設の廃棄に対する見返りに米国が提供する「相応の措置」を話し合う計画だとし、「我々は朝米双方に信頼をもたらす多くの行動を実行する準備ができている」と述べた。そして、非核化が完了する時期には、国際社会の投資を動員し、社会基盤施設(SOC)を改善すると共に、食糧安保を強化する最も良い案を模索する準備ができているとも明らかにした。トランプ大統領が繰り返し強調した「明るい未来」について言及したのだ。
北朝鮮が要求する核心的な相応の措置である「制裁解除や緩和」については、「米国は非核化が完了するまでは対北制裁を解除しない」ことを再確認した。ただし、その言葉の行間を注意深く読まなければならないと前提し、「我々は、北朝鮮がすべてを終えるまで何もしないとは言っていない」と付け加えた。場合によっては、部分的な制裁緩和の可能性を示唆したとも受け取れる発言だ。ビーガン特別代表は、北朝鮮に対する“圧迫”と“外交”を同時に推進している現在、両者のバランスを保つことが重要だとしたうえで、現時点で可能な相応の措置として、文化交流および人的交流構想を挙げた。
ビーガン代表は、キム・ヒョクチョル代表との初の実務交渉における目標や議題も提示した。彼は実務交渉で、具体的な成果を出せる一連の措置や交渉過程と今後の申告時点などを盛り込んだロードマップを作成したいと述べた。彼がキム代表に会い、金正恩(キム・ジョンウン)委員長が約束した東倉里(トンチャンリ)ミサイル・エンジン実験場と豊渓里(プンゲリ)核実験場の査察案について協議すると言ったことから、これが朝米協議の最も初歩的な段階で出せる結果になる可能性がある。
また、ビーガン代表は、金委員長が寧辺(ヨンビョン)の核施設を廃棄すると約束した点を強調し、最終的には寧辺以外の施設にあるプルトニウムと高濃縮ウランも廃棄されなければならないと述べた。また「非核化プロセスが完結する前に、北朝鮮の大量破壊兵器(WMD)ミサイル計画の全体規模について、我々が完全に把握できなければならず、ある時点では包括的な申告を通じて提出してもらう」と説明した。彼は「主な核・ミサイル施設に対する専門家の接近とモニタリングについて、北朝鮮と合意に達すべきであり、究極的には核分裂性物質や兵器、ミサイル、発射台および他の大量破壊兵器の在庫に対する除去および破壊を担保しなければならない」と主張した。東倉里ミサイル・エンジン実験場と豊渓里核実験場の査察→寧辺核施設の廃棄→寧辺以外の核施設の廃棄→核兵器の除去につながる大枠のロードマップを提示したわけだ。ビーガン特別代表は「段階的非核化」とは表現しなかったものの、「核申告」を非核化プロセスの最終段階に配置したことから、米国が事実上、“段階的”アプローチが不可欠であることを認めたと言える。
ビーガン代表はまた、北朝鮮との外交過程で失敗する場合に備えた非常対策(コンティンジェンシー・プラン)も持っていると短く言及した。在韓米軍の撤退問題が朝米交渉の対象なのかを問う質問には「全く協議されていない」と答えた。