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「アルツハイマーで裁判に行けない」とした全斗煥氏、ゴルフはしっかり打っていた

登録:2019-01-17 08:37 修正:2019-01-17 17:28
全斗煥氏=「ハンギョレ」資料写真//ハンギョレ新聞社

 5・18民主化運動当時ヘリ射撃の事実を証言した故チョ・ビオ神父の名誉を傷つけた疑いで裁判に付された全斗煥(チョン・ドゥファン)氏(88)が昨年8月、アルツハイマーを理由に最初の刑事裁判への出廷を拒否した頃、ゴルフをしていた事実が確認された。先月も全氏と夫人のイ・スンジャ氏を同じゴルフ場で見たという目撃者が現れた。病気を理由に裁判への出席を繰り返し拒否しながら、しっかりゴルフには行っていたことになり、批判は激しくなるものとみえる。

 全氏は2017年4月に出版した『全斗煥回顧録』で、5・18当時戒厳軍のヘリコプター射撃を証言した故チョ・ビオ神父を「仮面をかぶったサタン」と表現し、昨年5月3日に在宅起訴された。光州地裁は昨年8月27日に初公判を開いたが、全元大統領はアルツハイマー症状の悪化を理由に法廷に出なかった。7日に開かれた2回目の裁判でも、全氏はアルツハイマーの症状悪化などを理由に出席しなかった。

 しかし16日、ハンギョレの取材の結果、江原道のゴルフクラブのある職員は「(全氏が最初の裁判に出席しなかった)昨年の夏ごろ、当ゴルフ場を訪れてゴルフをした」と話した。このゴルフ場の別の職員も「具体的な日付を発表することはできないが、(全氏が)昨年まで当ゴルフ場に通っていたのは間違いない」と確認した。

 アルツハイマーなどを理由に2回目の裁判を欠席する1カ月前の先月6日にも、全氏はイ・スンジャ氏とともにゴルフ場で目撃された。この日、Aゴルフ場で全氏を目撃したKさん(51)はハンギョレに「その日、最初に(ゴルフ場へ)行く時からおかしかった」と言い、「待機場所から耳にイヤホンをした人々が歩き回るなど、普段と違う雰囲気があった」と説明した。Kさんは「食堂へ行ったら全斗煥、イ・スンジャ、女性一人、男性一人の4人が座って食事をしていた」と付け加えた。

 ゴルフ場で会った全氏が元気そうに見えたという証言も出ている。この日、全氏を目撃したLさん(50)は「トイレに行くときは(全氏が)すぐ前にいたから、5メートルより近い距離で見た。そしてゴルフをしながら後ろでラウンディングする場面を目撃した」と語った。Lさんは「杖も誰かの支えも得ずに歩き回ってゴルフをし、特に健康上の問題はないように見えた。むしろ若く見えた。時にはカートに乗らずよく歩いていたし、コースの進行もとても早かった。深刻なアルツハイマーなら対話ができないはずだが、(一行と)目を合わせて対話もしていた。全氏が休憩所でカートに乗って笑いながらしっかりとしゃべり、とても達者に見えた。それで注目するようになった。(自分の)父は1935年生まれだが、父より年上の方なのにずっとしっかりしていた」と付け加えた。Kさんもまた「『80代後半であれくらいゴルフをするくらいなら本当に健康管理をしているんだろう』と友だちと話していた」と話した。この日、ゴルフ場で全氏を目撃したPさん(51)は、全氏がアルツハイマーで裁判所の出席を遅らせたことについて「話にならない。頭に来る」と言い切った。Pさんは「もちろん運動のためにゴルフをすることもあるだろうが、アルツハイマーと言って裁判に出廷もしない人がボールを打つのは別の問題」と付け加えた。

 目撃者らはこの日、全氏と一緒にゴルフをした一行がゴルフ場の会長だという話をキャディーに聞いたと口を揃えた。Pさんは「キャディーが『VIPが来た』と話した。よく来ると言った」と伝えた。L氏もまた、「キャディーが『(全氏が)ここの会長と長い知り合いで、(2018年)春まで本当によく来た』と言った」と話した。このゴルフ場の会長であるL氏は2年前、あるマスコミとのインタビューで「全斗煥元大統領とは、あるゴルフ同好会を通じてひと月に1回ほど一緒にラウンドする」とし、「(全氏が)私より平均20~30ヤードは飛ばす」と明らかにしたことがある。

全氏が昨年夏と先月ゴルフをしたという江原道のAゴルフ場の様子=ホームページキャプチャー//ハンギョレ新聞社

 L会長の話のように、全氏はこのゴルフ場の常連だったものと見られる。Aゴルフ場のある元キャディーは「退社して1年半ほど経ったが、当時(全氏が)ゴルフ場に2、3カ月に1度は来ていた」とし、「(全氏が来ると)上手で経歴の長い組長たちが相手をした」と話した。他のゴルフ場で全氏を目撃したという証言もある。京畿道のBゴルフ場で働いていた元キャディーは「2017年11月まで勤務していたゴルフ場に全氏が何度か来た」とし、「エクースリムジン車2、3台にボディーガードたちと一緒に乗って来るのを見た」と話した。元キャディーは「全氏が来るたびにコースがつまり、コースディレイが生じるため、キャディー同士は全氏が来たことをみんな知っていた」とし、「VIPラウンジが別にあって直接見ることはほぼなかったが、ボディーガードはうんざりするほど見た」と伝えた。また「専用のキャディーも別にいた。口止めのためだ。専用キャディーらはBゴルフ場で長く勤務した人々で、ゴルフ場のために骨を埋めるほどゴルフ場の公示を堅く守る人々」と説明した。Bゴルフ場の現キャディーは「2018年にも全氏がイ・スンジャ夫人と一緒にゴルフをしにきた」と話した。

 Aゴルフ場で全氏が目撃された翌日の昨年12月7日は、ソウル市38税金徴収と機動チームが滞納地方税徴収のために前月26日に全氏の家を訪ね、「全氏がアルツハイマーで人を認識できない」という秘書官の話で家宅捜索をせずに引き返したという報道が出た日だ。目撃者たちはこの報道を見て「あきれた」と口をそろえた。Kさんは「友達同士でしゃべりながら『笑わせるじゃないか、昨日ゴルフするのを見たのに。これは情報提供すべきなんじゃないか』と話した」と語った。

 全氏側はこれまで全氏の状態が出廷できないほど深刻だと述べてきた。全氏の秘書を務めるミン・ジョンギ元大統領府秘書官は、2回目の裁判が予定されていた7日、ハンギョレとの電話で「アルツハイマーの状態が好転するケースはなく、進行を遅らせることはできるが状態は悪くなりつづける」とし、「全元大統領はたった今したことも思い出せない状態で、1日に10回以上歯磨きをしたりする」と述べた。彼は裁判に出席しない意思を重ねて明らかにし、「そこ(法廷)になぜ出るのかを説明しても状況把握ができず、正常な供述ができない」とし、「聞いて理解しても2~3分過ぎれば忘れ、覚えていられない状態だ」と強調した。光州地裁で開かれる最初の裁判を翌日に控えた昨年8月26日にも、ミン元秘書官は「2013年にアルツハイマーと診断された全元大統領は、これまで医療陣が処方した薬を服用している」とし「彼の現在の認知能力は、回顧録出版と関連して訴訟が提起されている状況について説明を聞いても、しばらく後には説明を聞いた事実すら覚えていないという様子だ。こうした精神健康状態で正常な法廷陳述が可能かどうか疑わしい」と主張したことがある。

 しかし、専門家は全氏側が主張した健康状態でゴルフをするのは不可能だと話した。ある神経科専門医は「病症状態についての説明かゴルフのどちらかが嘘か偽装だ。本当にうまくゴルフをしていたなら(アルツハイマー病症についての説明は)嘘だ」と断言した。この専門医は「ゴルフは認知が非常に必要な運動」だとし、「アルツハイマー初期なら可能かもしれないが、『理解しても2~3分経つと忘れて覚えていられない状態』はアルツハイマー中期」だと説明した。

 ミン元秘書官はこの日ハンギョレとの電話で、「わたしが日常的に延禧洞(ヨンヒドン)に勤務しているのではなく、そのような具体的な日程は確認できない。しかしゴルフ場にいらしたからといって何か問題があるのか」とし、「アルツハイマーというのは病院に入院したり、家に横になっている病気ではないから、日常生活と身体活動はいくらでも正常になさる。いま自宅でも簡単な室内運動などは常にやっていらっしゃる」と話した。さらに「全元大統領よりイ・スンジャ夫人が定例的に集まるゴルフ会と食事会が2、3カ所あるが、そのような場に行く時に一緒に行かれるという話は聞いた」と付け加えた。

イ・ジュビン、チョン・ファンボン記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/society/society_general/878613.html韓国語原文入力:2019-01-16 20:41
訳M.C

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