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機械に挟まって死亡した24才の非正規職労働者、4時間放置

登録:2018-12-13 07:33 修正:2018-12-13 08:35
文在寅大統領との面談を要求する非正規労働者の記者会見参加申込みのため「文在寅大統領、非正規労働者と会いましょう」と書かれたボードを手に認証写真を撮った韓国西部発電泰安発電本部下請け業者の非正規労働者、故キム・ヨンギュンさん(24)=発電非正規職連帯会議提供//ハンギョレ新聞社

 24才の青年は防弾少年団の歌を好んで歌った。 ストレスがたまれば歌を歌うと言った。 何でもよく食べたが、特にチキンが好きだった。 人々は青年のことを「明るいけれども静かで、つきあいも良かったし、情熱的なところがあった」と話した。 彼は専門大学を卒業して軍服務を終えた後、9月17日に韓国西部発電泰安(テアン)火力の現場設備下請け業者である韓国発電技術に契約職として入社した。 生涯初めての職場だったが、1年勤めれば正規職に転換されるという条件だった。 彼はしばらく前に家族に「大変だけれど学んでいく段階だから耐え抜くことができる」と話したと伝えられた。

 この青年キム・ヨンギュンさん(24)はしかし、徹夜勤務中に機械に挟まって亡くなった。11日午前3時20分頃、忠南泰安郡遠北面の泰安火力9・10号機のトランスフォーマータワー04C区域の石炭移送コンベアーベルトで、現場点検のための見回り業務の遂行中だった。 キムさんを発見した同僚のIさん(62)は警察で「前の晩に勤務に投入されたキムさんが電話に出ないので探して見たら機械に挟まって死亡していた」と述べた。 キムさんは10日午後6時に現場に投入され、11日朝7時30分まで発電所内部の4~5キロメートルほどを一人で歩いて見回る業務を担当していた。だが、キムさんは夜10時21分にIさんと一回通話し、14分後事故現場のCCTV(防犯カメラ)に歩いていく姿が写った。 それが最後の姿だった。 そして、機械に挟まって死亡して4時間余り経ってから発見された。

 365日24時間休まず稼動する火力発電所で、キムさんは同僚11人と共に1日4組2交代で働いた。 昼間-夜間-休務日-休務日と反復されるシステムだ。 昼間勤務の時は朝7時30分に出勤して夕方6時30分まで11時間、夜間勤務の時は夕方6時30分に出勤して13時間後の翌日朝7時30分に退勤する。 勤務時間には休みがない。

 キムさんの悲劇的な死はこの日午前11時、ソウル中区(チュング)のプレスセンター19階で開かれた記者会見で知らされた。 非正規職が文在寅(ムン・ジェイン)大統領との面談を要求する記者会見だった。 記者会見を開いた「非正規職、これ以上使うな! 1100万非正規職共闘」は先月12日から4日間、文大統領との対話を要求して大統領府と最高検察庁、国会前などで非正規職問題解決を要求する活動をした。

 自身を「電気を作って20年になる労働者」と紹介した発電所非正規職労働者イ・テソンさんは、この日の記者会見でキムさんの死亡を伝えて「今日同僚を失った。 24才、花盛りの青年が石炭を移送する機械に挟まって頭部が切断された」と涙声で話した。 イさんはまた「10月18日、国会の国政監査場でこのように話した。『正規職にならなくてもいいから、これ以上死なないようにだけしてほしい』と。 ところが今日また同僚を失った。 もうこれ以上私の隣りで死ぬ同僚を見たくない」として「下請け労働者も国民だ。 どうか、これ以上死なないようにしてほしい。 その道は“危険の外注化”“死の外注化”を中断することだ」と言った。

 キムさんの凄惨な死と、死後もコンベアーベルトに挟まったまま長時間放置されたという話が伝えられて、たちまち記者会見場はむせび泣く声でいっぱいになった。 しかもキムさんは、この日の記者会見への参加申し込みのために2カ月前「文在寅大統領、非正規職労働者と会いましょう。 労働悪法をなくし、不法派遣責任者をこらしめ、正規職転換は直接雇用で」 「私、キム・ヨンギュンは火力発電所で石炭設備を運転する非正規職労働者です」と書かれたボードを手に認証写真を撮りもした。

 イさんに続き発言者として立ったKT外注業者の労働者キム・チョルスさんは「いま話を聞いて、私も全く同じ状況で車にはねられてマンホールに落ちて死んだ同僚が思い出された。 私の手で綱を引き上げて、救急車で大学病院に行った。 救急治療室では現場即死という判定を受けた」として「(会社側は同僚を)労災処理にしなかった。 交通事故として処理して隠そうとしたが、弁護士を通して労災処理をした経験がある」と話し、しばらく言葉を継ぐことができなかった。 最近発生したKT阿ヒョン局舎の火災以後、通信線路を復旧する作業は全部キムさんのような外注業者の職員が担当している。しかし報酬は数年間上がらないままだという。 キムさんは「通信線路を敷く仕事ばかり数十年やった。日当が14万ウォン(約1万4千円)だ。 私たちの人件費はなぜ上がらないのか理解できない」として「家に150万ウォン(約15万円)持っていくのでは生活ができない。 これ以上借金もできない」と苦痛を訴えた。

 文大統領が就任後初めて訪問した労働現場である仁川空港の非正規職労働者も舞台に上がった。 彼は「5月12日に文大統領が仁川空港に来て、困難な部分があれば政府が積極的に支援すると話した。 この言葉を再度想起させたい」として「非正規職労働者は切迫した心情だ。 単なる夢や希望でない切迫した心情、そんな私たちの心が伝えられてちゃんとした正規職転換がなされるよう願う」と話した。 この他にも期間制教師、貨物車運転など非正規職を代表して記者会見に出た労働者は、各自の現場で体験している差別と不平等問題を訴えた。

 彼らは記者会見文で「文在寅大統領の最初の業務指示は『公共部門非正規職ゼロ時代』だった。 2017年5月12日に大統領が仁川空港を訪問した日、非正規職労働者は喜びの涙を流し、希望を夢見た。 1年6カ月が過ぎた今日、仁川空港ではどの非正規職も正規職になっていない」と明らかにした。 また「江陵(カンヌン)線KTX列車が脱線した8日午前7時35分、一番あわてたのは列車に乗っていた乗務員だった。 誰も乗務員に現在どんな状況で、どういう措置が取られているのか言ってくれなかった。 乗務員は鉄道公社でないKORAIL観光開発所属だったからだ」として「KTXの脱線とKTの通信事件をはじめとする相次ぐ事故の別の名は、危険の外注化だ」と指摘した。 非正規職代表100人は不法派遣正規職転換と使用者処罰、公共部門正規職転換、派遣法・期間制法廃棄などを要求し、文大統領に「大統領府でも光化門広場でもTV討論でもどこでもいいから、一度会ってほしい」と要求した。

 キムさんの死も韓国の他の労働現場と同様に、韓国西部発電が単価を低く提示する下請け業者に仕事を任せる中で、2人1組業務を実施できなかったのが原因だと、同僚労働者は口をそろえた。 民主労総公共運輸労組韓国発電技術支部がこの日公開した「泰安火力発電所下請け労働者の主な安全事故/死亡事故現況」によれば、2010年からの8年間にこの発電所では全部で12人の下請け労働者が墜落事故や埋没事故、ハンマーに打たれる事故や大型クレーンの転覆事故、キムさんのように機械に挟まれる事故で死亡した。 負傷者も19人だった。 キムさんと一緒に仕事をしたHさん(26)は「コンベアーベルトの力が強いので機械にからだがつられていくことがしばしばあるが、2人1組で仕事をすれば安全スイッチがあって同僚が紐を引っ張れば機械が止まる」として「見回りの時一人だけで入ったのが問題」と話した。

 警察と労働当局も会社に作業中止命令を下し、キムさんが1人勤務をすることになった経緯を調査している。しかし会社側は警察で「勤務マニュアルに2人1組勤務の原則はない」と明らかにしたと伝えられた。 韓国西部発電関係者はハンギョレとの通話で「オーバーホール(発電所の稼動を中断して行なう計画整備)中には2人1組を必ず構成することになっている。 しかし、正常運営中の見回りは一人ですることになっている」として「私たちがその制度を作ったのではなく、この業務の責任を負っている韓国発電技術がそのように運用している」と話した。 警察関係者は「一日の勤務者が12人だが、運転員などを除けば実際の現場勤務人員は6人に過ぎず、慣例的に1人勤務をしたと見られる。 現場勤務者などを相手に正確な事故経緯を調査する一方、法違反の有無なども判断する方針だ」と話した。

チョン・ファンボン、ソン・ダムン、チェ・ハヤン記者、泰安/ソン・インゴル記者(お問い合わせ japan@hani.co.kr)
https://www.hani.co.kr/arti/society/society_general/873971.html 韓国語原文入力:2018-12-11 16:57
訳A.K

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