「危険の外注化」のもたらした惨事が、またも若い下請け労働者キム・ヨンギュンさん(24)の命を奪った。 11日忠南泰安(テアン)火力発電所で機械に挟まって死亡したキムさんが、9月に入社した下請け契約職労働者だったという事実が知らされて、悪循環の輪を絶たねばならないという声が出ている。
キムさんが担当していた韓国西部発電泰安火力発電所の運転・整備は、民営化された中小企業が担当している。 1~8号機は韓電産業開発が、キムさんが亡くなった9~10号機は韓国発電技術が、運転と整備の責任を負う。 設備は韓国西部発電の所有だが、発電所の運営は民間下請け企業等が総括する構造だ。 キムさんを雇用した韓国発電技術は当初公企業だったが、2014年からカリスタパワーシナジー私募投資専門会社が持ち分52.4%を保有している。運用会社であるカリスタキャピタルのイ・スンウォン代表は韓国発電技術の代表理事でもある。
このために、政府の発電所整備分野の市場開放が低価格受注競争と危険の外注化につながり、今回の事故を呼んだのではないかとの指摘が出てくる。特に事故が起きた韓国発電技術のように「利益の最大化」を追求する私募ファンドが運営を引き受けた場合、整備・安全など非収益部門の費用最小化は避けられない手順だというのが労働界の指摘だ。
発電所の整備・運営は1980年代には韓電および韓電子会社が責任を負う公共独占だったが、1994年韓電KPSのストライキを契機に、政府が民間開放を主導してきた。 発電所の整備責任を負う韓電子会社がストをすると、必要な場合の代替人員と技術を民間市場で作るという構想を出してきたのだった。 政府は一つ二つと生まれてきた小規模の民間整備企業の競争力向上を名分に、2013年からは国内の整備物量の一部に対して競争入札を義務化(発電整備産業の第1段階開放)した。 西部発電関係者は「韓国発電技術も韓電KPSと競争入札を経て石炭設備運用・整備契約の落札を受けた」として「政府施策により競争入札をしなければならなかった」と話した。 政府は競争入札物量をさらに増やす「第2段階開放」を推進しようとしたが、文在寅(ムン・ジェイン)政権になって「公共機関非正規職の正規職転換」政策の推進により一時停止された状態だ。
下請け労働者の劣悪な安全問題も再びあらわにならざるを得ない。 4月、公共運輸労組は韓国南東発電・西部発電・中部発電・南部発電・東西発電の5つの発電会社で2012年から2016年までの5年間に発生した事故346件のうち、337件(97%)が下請け業務で発生したと明らかにしている。2008年から2016年までの9年間にここで労災により死亡した40人のうち、下請け労働者は37人(92%)だった。
下請け労働者は産業安全の死角地帯に置かれるのが常だ。業者の規模も小さく、キムさんのような1年単位の契約職労働者を主に雇用しているため、労働者が熟練を積むことも難しい。労働界はキムさんが深夜に危険な作業を「一人で」したという点に注目している。 この日、民主労総は声明を出し「キムさんがやっていた仕事は本来発電所の正規職が2人1組でやっていた業務だったが、発電所の外注化構造調整を通して下請け業者に業務が移った」として「これまで労働界が持続的に要求してきた人員補充と2人1組勤務だけでも受け入れられていたなら、キムさんが亡くなることはなかっただろう」と明らかにした。 共に民主党のイ・ヨンドク議員室が雇用労働部に提出させた資料を見れば、2013年から2018年6月まで一つの事件で3人以上が死亡した労働災害は28件だった。それらの事件で死亡した労働者は全部で109人だが、そのうち93人(85%)が下請け所属だった。このうち元請け事業主が処罰を受けた事例はただの一件もなかった。
11日、ソウル中区(チュング)のプレスセンターで開かれた労働界の記者会見では「危険の外注化」に対する糾弾が噴き出した。 この日、非正規職共闘は「江陵(カンヌン)線KTX列車が脱線した8日午前7時35分、最も慌てたのは列車に乗っていた乗務員だったが、鉄道公社でないKORAIL観光開発所属という理由で、乗務員に現在どんな状況でどんな措置が取られているのか誰も言わなかった」として「KTXの脱線とKTの火災による通信事故をはじめとする相次ぐ事故の別の名は、危険の外注化だ」と指摘した。
労働界は今からでも元請けの責任を強化しなければなければならないと強調する。 民主労総のチェ・ミョンソン労働安全保健室長は「私たちも元請けの責任を強化する『重大災害企業処罰法』を導入するなど、パラダイムを変えなければならない」と強調した。