裁判官は憲法によって弾劾または禁固以上の刑が宣告されない限り、罷免できない。裁判官の身分保障を通じて、裁判の独立を守るためだ。裁判官は懲戒を受けても「停職1年」が最大だ。裁判所はこれまで辞表を受ける方式で「問題のある裁判官」を処理してきた。司法壟断に関与した現職裁判官が停職1年を受けた後、再び法廷に復帰したり静かに辞表を提出すれば、国民は容認できるだろうか。最近、政界と市民社会で提起される裁判官弾劾の争点と過程を検証する。これまで国内では裁判官が弾劾された事例は一度もなかった。
■弾劾訴追案の内容
「ヤン・スンテ司法壟断対応のための時局会議」は先月30日、最高裁(大法院)の自主調査と検察の捜査を通じて、司法行政権乱用または裁判取引疑惑が浮き彫りになった現職裁判官6人の弾劾訴追を推進すると発表した。クォン・スニル(59、司法研修院14期)最高裁判事、ソウル高裁のイ・ミンゴル(57、研修院17期)、イ・ギュジン(56、研修院18期)部長判事、蔚山地裁のチョン・ダジュ(42、研修院31期)、昌原地裁のパク・サンオン(41、研修院32期)、馬山支院のキム・ミンス(42、研修院32期)部長判事が対象だ。検察の起訴や懲戒が予想される人々だ。一部は起訴と懲戒共に免れる可能性もある。
時局会議が公開した弾劾訴追案は「重大な憲法違反事由」を中心に作成された。6人の裁判官が、公務員は国民に対する奉仕者であり国民に対して責任を負う(7条)▽国民は憲法と法律が定めた裁判官によって法律による裁判を受ける権利を有する(27条)▽裁判官は憲法と法律によりその良心に従って独立して審判する(103条)という憲法を違反したというものだ。職権乱用や証拠隠滅の容疑などは、検察の捜査結果が出れば追加で反映する予定だ。
■裁判官弾劾の手続き
憲法は、裁判官が職務執行の過程で憲法や法律に違反した場合、国会が弾劾訴追を議決することができるとなっている。退職したヤン・スンテ元最高裁長官、パク・ビョンデ元最高裁判事、イム・ジョンホン元裁判所事務総局次長などは、弾劾の対象ではない。
国会在籍議員の3分の1以上が発議し、在籍議員の過半数の賛成で可決される。大統領弾劾訴追基準(在籍議員過半数の発議、3分の2以上の賛成)よりも厳しい。弾劾訴追案が国会本会議を通過すれば、当事者は憲法裁判所が弾劾の可否を決定するまで権限が停止する。クォン最高裁判事を除いた5人はすでに裁判業務から排除されている。
憲法裁の弾劾審判では、国会法制司法委員長が検事の役割をする弾劾訴追委員になる。判事出身のヨ・サンギュ法司委員長(自由韓国党)は、司法壟断の捜査と関連して裁判所をかばうような発言で議論を起こしている。
「憲法裁判は刑事裁判とは違う」というのが憲法裁の立場だが、実際に裁判官の弾劾審判が進行すれば、朴槿恵(パク・クネ)前大統領の時のように検察の捜査記録が最も重要な証拠として活用されるほかない。憲法裁判官9人のうち6人以上が賛成すれば、当該裁判官は弾劾される。イ・ソクテ裁判官を除く憲法裁判官8人は、全員裁判官出身だ。
■弾劾の基準は?
弾劾が決まれば、当事者は決定と同時に罷免される。弁護士法により弾劾された後は5年間は弁護士になれない。建国大学法学専門大学院のハン・サンヒ教授は6日、「選挙で選ばれ民主的正当性を持つ大統領と違い、裁判官は弾劾されたからといって裁判所の業務が大きく支障を来たさない。憲法と法律違反の重大性の判断基準は、大統領弾劾より低くなければならない」と述べた。ある判事は「懲戒や辞表は司法壟断事態に対する相応の処罰と見ることができず、弾劾が必要だという要求もある」と裁判所内部の雰囲気を伝えた。また、別の判事は「実際の裁判にかけられる判事は限られるものとみられる。二度とこのようなことが繰り返されないためにも、弾劾を検討しなければならない」と話した。