「犯罪事実の相当部分について疎明があり、被疑者の地位および役割、現在まで収集された証拠資料、捜査の経過などに照らしたところ証拠隠滅の恐れがあり、拘束の必要性と相当性が認められる」
27日未明、イム・ジョンホン元裁判所事務総局次長に対する拘束令状の交付に際し、ソルウ中央地裁のイム・ミンソン令状専担部長判事が明らかにしたこの短い文章が、今後の司法壟断捜査の“終着点”を占う方向舵になりうるだろうか。
検察側は「司法壟断が罪になるのか」という法理論争は一段落したと評価し、ヤン・スンテ前最高裁長官など上層部の究明捜査が流れに乗るものと期待している。2012~17年に裁判所事務総局企画調整室長と次長を務め、「次期最高裁判事の最有力候補」に名前が挙がっていたイム元次長は、検察が把握した裁判取引や裁判官査察など約40件にのぼるほとんどすべての容疑に関与する核心人物だ。
28日、検察の主要な関係者は「これまで(司法壟断を)法的に処罰できるのかという懐疑的な見方が多かったが、裁判所がそれに対して(罪になるという)答えを出した。今後、捜査は真実究明と責任者究明に集中するだろう」と述べた。
司法壟断に関連する捜査がソウル中央地検特捜部に配当(6月18日)されて以来、検察の捜査に反対する裁判所の内部関係者などを中心に「裁判所事務総局の職務範囲に照らしてみれば不適切だったことは明らかだが、処罰はまた別の問題」という防御論理が形成された。今年8月、日帝時代の強制徴用事件と関連して大統領府と裁判の取引を行ったとみられる文書を作成した元・現判事らの押収捜索令状を棄却しながら裁判所が示した論理が代表的だ。当時、イ・オンハク令状専担部長判事は「文書内容は不適切だが、一介の審議官が作成した文書によって最高裁判事が裁判したとは考えにくい」と明らかにした。事務総局が裁判に影響を与える立場にはないという判断だった。
裁判所「司法壟断による職権乱用につき処罰」…捜査が急進展し
「不適切だが罪にはならない」という論理に
検察「明らかな職権乱用」として真っ向から勝負
「犯罪成立」判決で論争は一段落
検察「真実究明・責任者処罰に集中」
ヤン・スンテ、パク・ビョンデ、コ・ヨンハンなどに照準
イム・ジョンホン側「不当な拘束」として容疑を否定
「上層部の究明は容易でない」という見方も
実際、裁判所組織法は事務総局の職務範囲を裁判所の人事・予算・会計など「司法行政事務」と規定している。26日、拘束前に被疑者尋問(令状実質審査)で検察と6時間にわたる法理攻防を行ったイム元次長側は、こうした法律条文などを根拠に「事務総局次長は判決に影響を及ぼす職務上の権限(職権)がない」という論理で職権乱用の容疑は成立しないと主張した。イム元次長の行為は法令に規定された職務上の権限ではないため、乱用する職権もなかったということだ。また、事務総局審議官(裁判官)に裁判官査察などの文書を作成させた疑いについては、「業務の一環」という趣旨で防御したという。事務総局次長の職務上の権限であるかどうかがあいまいなときは「職権」の有無を、職務上の権限がはっきりしている時は「乱用」の有無を争ったということだ。
しかし、裁判所が職権乱用などの疑いが適用されたイム元次長の拘束令状を交付し、「犯罪事実の相当部分が疎明された」と明らかにして状況は「大逆転」を迎えた。令状の棄却が繰り返され、レッテルが貼られていた「司法壟断は罪にならない」という論理がもはや通じないということだ。ソウル地域のある判事は「『事実関係は認めるが罪にはならない』とするイム元次長側の主張に対する裁判所の第一次的な判断は『罪になるということ』だ。『犯罪事実の疎明』という表現自体が、刑事処罰の構成要件に該当するという意味だ。つまり、令状担当部長判事は『犯罪が成立する』と見なしたということだ」と説明した。
法理論争からしばし自由になった検察の捜査は、さらに弾みがつきそうだ。イム元次長の拘束令状には、ヤン・スンテ前最高裁長官が、統合進歩党裁判への介入▽第一線の裁判部の限定違憲提請決定を反覆▽裁判官査察▽憲法裁判所の機密流出▽公報官室予算の秘密資金造成など、さまざまな事案でイム元次長と共謀したものと記されている。また、裁判所事務総長を務めさまざまな指示をし、関連報告を受けたパク・ビョンデ元最高裁判事は日帝時代の強制徴用事件の裁判取引や統合進歩党裁判への介入容疑などで、コ・ヨンハン元最高裁判事は釜山法曹不正に関する裁判の介入などの事案でイム元次長と共謀した疑いを受けている。
ただし、“連結の輪”であるイム元次長が自分の容疑すらも否定しており、上層部の介入の究明は容易ではないという否定的な見通しもある。イム元次長を代理するファン・ジョングン弁護士は、裁判所が拘束令状を交付すると、フェイスブックを通じて「法理よりも政治的な考慮が優先された不当な拘束」「職権乱用罪の乱用」「政権交代に伴う司法部の典型的な政治的報復」だと主張し、検察捜査に協力しないと明らかにした。また、イム元次長の拘束が適切かどうかを判断してほしいという拘束適否審を裁判所に請求することも検討している。
一方、検察は拘束翌日のこの日、京畿道儀旺市(ウィワンシ)のソウル拘置所に収監中のイム元次長を呼び、初取り調べを行った。