2010年にEUがFTA条項に
「ILOの核心協約の批准」を明記したが
「結社の自由」など8つのうち4つが見送られ
EU、数回にわたって履行を要求し
19日の首脳会談でも強調したが
韓国政府はメディアに言及せず
政府「労使の合意から」と消極的な態度
専門家、貿易紛争の可能性を憂慮
「EUがFTA再交渉に圧力をかける可能性も」
19日にベルギーのブリュッセルで韓国-欧州連合(EU)首脳会談が開かれました。今回の会談で、メディアの関心は主に朝鮮半島の和平体制に関する協力、鉄鋼セーフガードの措置でした。一方、欧州連合が首脳会談で韓国に「労働基本権に関する約束を守れ」と要求したという事実は伝えられませんでした。韓国は2010年に欧州連合と自由貿易協定(FTA)を締結し、労働基本権の保障を約束しましたが、履行していないとのことです。なぜ首脳会談の席でこのような指摘を受けることになったのでしょうか。
首脳会談後に欧州連合が発表した報道資料に登場するくだりです。「欧州連合は(韓国-欧州連合の自由貿易協定に関する)様々な重要問題を強調した。例えば長年の(long-standing)、そして拘束力のある(binding)、労働基本権の約束を完全に履行すること…」。ここで「労働基本権の約束」とは、『労働組合をする権利』(あるいは結社の自由)などと関連した国際労働機関(ILO)の核心協約の批准を意味します。韓国と欧州連合との自由貿易協定は、「貿易と持続可能な発展に関する章」(以下、持続可能な発展の章)において、「国際労働機関の核心協約の批准に向け努力し、この協約を履行する」となっています。
核心協約の批准がなぜ首脳会談のテーブルに上がったのでしょうか。国連傘下の国際労働機関は、1948年から全世界の労使政の代表者が集まる総会で、国際社会が守るべき労働基本権の大原則を議論してきました。その結果が8つの核心協約です。韓国は「結社の自由」「強制労働の禁止」と関連する4つの協約をまだ批准していません。国際労働機関の187の加盟国のうち、76%が8つの核心協約を全て批准しましたが、韓国はやっと4つを批准しただけです。
自由貿易協定には労働基本権の条項が必ず入ります。労働基本権の保障にかかる社会的費用を「最低限」にし、基本権を犠牲にして無理に競争することを防ぐためです。韓国労働研究院のチョ・ソンジェ労使関係研究本部長は「核心協約を批准しなければ、韓国は労働基本権問題で防御する位置に置かれ続ける」とし、「国内の誤った労務管理の慣行を外国でも同じように繰り返しているのも同じ脈絡」だと指摘しました。
欧州連合の問題提起は初めてではありません。昨年5月、欧州連合議会は「韓国が労働基本権の約束を依然として守っていない」と批判し、対応策を求める決議案を採択しました。今年4月、欧州連合議会のベルント・ランゲ国際通商委員会委員長は、韓国の核心協約批准を圧迫するため「貿易紛争の解決手続きを要請しなければならない」と主張しました。
韓国政府は「努力している」という態度です。しかし、梨花女子大学のイ・スンウク教授(ロースクール)は「韓国が約束を履行しなければ、欧州連合は専門家パネルを召集するか、または協定再交渉をしようと言い出しかねない。欧州連合の政治的圧迫は次第に強まり、韓国が欧州連合との協定を履行しなかったという点が公式化されれば、米国やカナダもこれを問題視し始める可能性もある」と強調しました。この問題が貿易紛争にも突き進む可能性もあるということです。
これまで韓国政府は批准を先送りしてきました。以前の政府より文在寅(ムン・ジェイン)政府はまだ積極的ではありますが、やはり労使の合意が前提にならなければならないという態度です。労働界は「憲法で保障された権利をなぜ使用者と合意しなければならないのか」と主張しています。当の経営界は非協力的です。労使政代表者会議傘下の小委員会で、韓国経営者総協会と大韓商工会議所は、協約批准に関する議論を遅延させています。
首脳会談で欧州連合が労働基本権の約束を守るよう要求したという事実は、欧州連合側の報道資料にだけ含まれました。韓国政府はこれについて一切触れていません。さらに深刻な状況に飛び火しないよう、政府が取り組んで積極的に経営界を説得する必要があるでしょう。